35 朝焼け
「あれ、もうこんな時間か」
「眠くない?」
「全然、アンナと一緒だから」
「何よ、それ」
「ははっ!ねえ、アンナ見てみたくない」
「何を?」
「この世界に隠れている本当のロマンだよ」
「ふ~~ん、ロマンかぁ」
「うん、そう。ロマン」
「たとえば、ライオンとシマウマがハグする世界ってこと?」
「おぉ!それはもしかしたら、アンナのなかだけに宿るロマンかも知れないね」
「そうかな……、あ、ロマンってそうやって、見ようとする者にしか見えないのかも知れない」
「そうだよ、アンナ!その通りだよ!ぼくは本物のロマンを見て、ロマンと出会い、ロマンを生きて、ロマンを実現させるんだ」
「そうなると、夢とも近い感覚なのかな?」
「確かに……、ニュアンスはわりと、近いよ。う~ん、そうだなぁ~~、ぼくのなかでは、夢は手に触れられないもので、ロマンは手に触れられるものかなぁ」
「う~~ん、確かに、なんとなく分かるかも」
「ある作家の人は、ロマンとは有限と無限を繋ぐ架け橋でもあるし、それは全く違うエレメントの融合やマリアージュでもあり、当たりまえな日常を神性化することこそ、本来のロマンの役割があるってなことを言ってたかな」
「それって、凄いことだわ!だって、それって、ライオンとシマウマの存在がかけがえのない存在で、その奇跡の存在達が、さらにもっと奇跡を起こすんだから奇跡の累乗よ」
「その通りだよ……!素直に凄いって感じられる、アンナが凄いなぁ!」
「あら、そう。それで、サトルくん、サトルくんのロマンは、何?」
「へ!?う~~ん、ぼくの固有のロマンは、大まかには見えてきたんだけど……。それは、アンナの言っていたロマンにも通じるロマンだと思う。なんだろう?今言えることは、世界は総合だということ。その失った総合を取り戻しにいくんだ……あとは、ナイショ」
「ああ、もう、、その後が一番大事そうじゃないの」
「ははっ!!まあまあ」
「私はこんなにも独自なロマンを具体的に述べたのに」
「怒らないで、アンナちゃん」
「ちゃん、って、何よ!」
「ほら、聞いてみて!鳥達のさえずりに耳を澄ましてみて」
「やっぱ、サトルくん、ズルい」
「だんだんと、明るくなってきたね」
「もう、しょうがないなぁ」
「もしかしたら、この世界は、神様からロマンを託されているのかも知れないよ。とっておきのロマンを」
「わぁ~~、何あの空の色!?」
「凄い!!綺麗だね」
「なんか、金箔が舞っているみたい」
「金箔、金箔」
「あ……!サトルくん、泣いちゃダメ」
「なんかなぁ、どうしてかな……あまりにも美し過ぎて」
「これぞ金箔の涙……。もう、サトルくん、本当にズルいんだから」
「へぇ」
「二人で見る朝焼けはじめてだね」
「うん」




