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11 挨拶
おはよう、サトルくん。
このアンナからの
さりげない
一言があれば
今日も生きていける。
大切なコップを割ってしまっても「仏の顔も三度まで」と言われている昨今、四度目の失敗をしてしまっても。今日もなんとか生きていける。ほら、死にまごつき、怖がっていても、気が付いたら、死を飲みこんで、息をしている。自力というより、他力や天然の力で生かされているんだ。ああ、そっか、今日も地球のオゾン層に守られて生きているんだ。
自分のクラスに向かう廊下をタンタンタと歩きながら、サトルは思った。
「よお、サトル!今日もぼぉーっとしているな」
クラスメイトのアツシに肩を叩かれながら、言われた。サトルは、いつものことかと思い、挨拶した。
「おはよう、アツシ!今日は、数学の宿題はやったの?」
「うん、やった。人生で使うかどうかも分からないけどな」
「まあね。アツシとは理由が違うけれど、ぼくは、宿題忘れると、先生が怖いからやっといたよ」
「はははっ!!今日もサトルらしいな」
廊下の窓から校庭をいつものように、なんとなく一望する。右耳から自由闊達な明るいクラスメイトの声が今日も聞こえきた。なんだか、サトルは、クラスメイト1人欠けることもなく、しあわせになって欲しいと、そう願った。




