第9話 おかしなタコの足
「ねぇ、偉文くん、タコがでてくる童話や絵本って知ってる?」
従妹の小学生、胡桃ちゃんが安アパートの僕の部屋に来ていた。
放課後クラブの人形劇のメンバーが、タコの人形を作ったんだって。
よくできたタコ人形だけど、人形劇での出番が思いつかないらしい。
僕が将来絵本作家になると信じているようで、こうしてよく相談にくるんだ。
「サルの人形と、竜宮城の乙姫の人形があるんだよね。日本昔話の『クラゲの骨がない理由』をタコでやるといいよ。他には……そのタコの人形って足が着脱できるんだね。童話じゃないけど『タコの足』というお話があるよ」
* * *
男の人が浜辺を歩いていると、大きなタコが寝ているのを見つけました。
もっていた小刀でタコの足を一本切って帰りました。
家で食べると、とてもおいしかったです。
次の日、浜辺にいくとあのタコが寝ています。男はまた1本切りました。
また次の日も、その次の日も、タコの足を切って食べました。
そして、最後の一本になった足に近づくと……
「タコの足がそんなにうまいかぁ!」
とタコが大きい声でいいました。
男の人がびっくりして逃げました。
その夜、寝るときも「タコがしゃべった……タコがしゃべった」とうなされました。
* * *
「ねえ、怖いよ。タコが食べられなくなるじゃない」
「うーん。観客に小さい子もいるからこれはダメかな。じゃあ、落語の『タコの足』の小話を引き延ばしてみるか」
* * *
一匹のネコが浜辺を歩いていると、寝ているタコを見つけました。
ネコはこっそりと近づいて、タコの足を一本かじりました。
タコが起きそうになったので、ネコは少し離れたところでゴロンとなりました。
タコは足が食べられたことに気づきました。
が、気づいてないふりして、残った足でネコに『おいでおいで』のゼスチャーをしました。
すると、ネコが一言。
「おいらはその手はくわない」
タコはネコをにらみつけて叫びました。
「むきー。ボクの足を食べたのはお前だろー」
「知らないよ。おいらはここでネコろがってただけだよー」
「嘘つけー。犯人はおまえだろう」
「イカにもっ。かってに足を食べちゃって、アシからずぅー」
「僕の足をどうしてくれるんだ。かえせっ」
「そんなに怒るとハゲちゃうよ。まったく、こまっタコだねぇ」
といいながら、ネコはタコの足が届きそうなギリギリまで近づきました。
タコが足を延ばすとひょいとよけました。
その時、タコはスミをブーと吹きかけました。
そして、びっくりして動かないネコに近づいて、足でペチペチたたきます。
「きゃあ、おいら何も見えない。いてて、どーもスミません」
* * *
「ねぇ、スミを吹きかけるのってどうやるの? 霧吹き?」
「それだと人形も舞台セットも汚れるでしょ。紙か何かで作るといいよ」
「うん。わかった。偉文くん、ありがとー」
胡桃ちゃんは楽しそうな顔で帰っていった。
後日、人形劇のことをきいた。怖い方の話はボツらしい。
二本立てにして、骨のない理由の話とネコの話をやったそうだ。
スミは黒いスポンジで表現したんだって。
スポンジを小さな筒に押し込んで、タコの口に詰めたらしい。
糸を使って筒から引っ張り出すとうまく広がったそうだ。
その話を聞いた後、暦ちゃんからツッコミがあった。
「見に来た子達にちゃんと注意しといたんだよ。ネコにタコとかイカを食べさせると病気になるんだよ。家でネコ飼っている人は絶対に食べさせないでって」
あっ!