第7話 おかしなかさじぞう
「偉文くん、人形劇で『かさじぞう』をやるんだけど、少しお話を長くできる?」
僕の部屋に従妹の胡桃ちゃんが遊びに来ている。
放課後クラブでは『かさじぞう』のシナリオはすでに完成していて、何度か人形劇の練習もすんでいるらしい。
上演する時間が余りそうで、本編を変えずにラストにだけ何か追加したいそうだ。
「そうだね。最後に村の庄屋さんが『食べ物がなくなってるー』って騒ぐのはどう? 庄屋さんの前の雪にソリの跡が残ってて、お地蔵さんの前まで続いているとか」
「ねえ。それだとおじいさんがドロボーになっちゃうからだめ」
「そうだよねえ。だったら……こうするか」
* * *
雪の降りしきる大みそかの夜、おじいさんは村はずれのお地蔵さんにカサを被せました。
翌朝、おじいさんが目を覚ますと家の前にたくさんの食べ物がおかれていました。
カサを被った地蔵達がソリを引いて去っていくのが見えました。
地蔵達がくれた食べ物で、とても楽しい幸せな元日を迎えることができました。
その話をきいた隣の意地悪じいさんは、うらやましく思いました。
なんとかして、自分もたくさんの食べ物を手に入れたいと考えました。
意地悪じいさんは、大急ぎで町に降りました。
お正月でお休みのお店に無理に頼んで、木のカサを買いました。
そして村はずれまで戻りました。
お地蔵さんが被っているスゲのカサをとって、自分が買ったカサと取り替えました。
意地悪じいさんは地蔵達に言いました。
「これは安物のスゲのカサとは違うんです。丈夫で頑丈な木のカサです。わかりますよね。高級な木のカサですよ。これでワシらにもお恵みをよろしくお願いします」
次の日の朝、意地悪じいさんの家の前には野菜や米俵などがたくさん置かれていました。
意地悪じいさんが大喜びで贈り物を手に取ると、あれっ?と首をかしげました。
置かれた物はすべて木でできていて、食べられませんでした。
* * *
「ははは……。これいいね。意地悪じいさんのお人形は『花さかじいさん』用のがあるし、贈り物も元のやつがそのまま使えるから大丈夫。ありがとー」
胡桃ちゃんは楽しそうに帰っていった。
後日、胡桃ちゃんの妹の暦ちゃんが話しかけてきた。
「まだ時間が余ったから、アドリブで続けたんだよ。木彫りのオモチャが村の名産品になったんだよ」
どうすればそんな展開になるの?





