第6話 おかしな浦島太郎
「偉文くん、今度の人形劇で浦島太郎をやるの。でもクラブのみんなが言うには、そのままだとつまらないって。もっと面白い話にできる?」
相談してきたのは従妹の胡桃ちゃん、小学生の元気な女の子だ。
今日も安アパートの僕の部屋に来ている。
「人形はもうできてるんだよね。だいぶ設定が変わるけど大丈夫かな。主人公の名前も変えちゃうよ」
* * *
むかしむかし、表島という漁村があり、次郎という男がおりました。
次郎が浜辺を歩いていると、子供たちが集まっているのが見えました。
大きな亀を棒でつついているようです。
「これこれ。カメは海の神様の使いと言われてるんだ。変なタタリがおきると怖いから、逃がしてあげなさい」
子供たちは怖くなって逃げていきました。
カメは次郎にお礼をいいました。
「ありがとうございます。あのー…… 私はタタリなんかやりませんよ。助けてくれたお礼に、海の底の竜宮城にお連れしましょう」
「海の底? 僕は息ができないと思う。おぼれちゃうよ」
「大丈夫です。このワカメの首飾りをつけると、人間も海の中で息ができますよ。かけてください」
「これ、なんかヌルヌルしてコンブみたいな匂いがするけど、ほんとにワカメ?」
「はい。北海道の高級ワカメです」
首飾りをつけて次郎はカメに連れられて竜宮城につきました。
美しい乙姫様と、その後ろには魚の帽子を被った女官達がいます。
乙姫様が次郎にいいました。
「カメを助けてくれてありがとう。お礼にご馳走したいのですが、食べたいものはありますか」
「僕はタイが好きです」
すると、タイの帽子の女官が「ええっ、私食べられちゃう」と言いました。
「じゃあ、まぐろで……」
「きゃあ、食べられちゃう」
他の魚の名をあげて、他の女官が悲鳴を上げます。
仕方がないので海藻のサラダをいただきました。
次郎はしばらく遊んだ後、村に帰ることにしました。
乙姫様は綺麗な箱を次郎に差し出しました。
「この玉手箱があれば、また竜宮城に遊びに来れます。でも、ぜったいフタを開けないでください」
「いきなり、ぱかっ」
次郎が箱を持ち上げると悲鳴があがりました。
フタはあけてません。
「おどかさないでください。中の煙をあびると、私おばあちゃんになっちゃいます」
次郎はまたカメの背中に乗って、陸に上がりました。
砂浜で、次郎はあたりを見回して、カメに話しかけます。
「あれれ? 村のようすが変わってない?」
「そうですね。どこか今朝と違うような」
近くを通りかかった人にきいても、相手は次郎のことを知らないようです。
「へんだな。たった1日で表島の村がこんなに変わるなんて」
「表島の村はもっとあっちの方だよ。ここは浦島の村」
村人は歩き去りました。
「カメ! おまえが間違えたんじゃないか。このっこのっ」
「うわーん、ごめんなさーい」
次郎がカメを蹴飛ばしていると、誰かが近づいてきました。
「これこれ。カメをいじめてはいけないよ」
「ん? あんただれ?」
「私は浦島太郎といいます。カメを逃がしてあげなさい」
こうして、本当の浦島太郎の話に続きます。
* * *
「ねぇ。前やった桃太郎とかぐや姫のお話とおなじパターンね」
「今回のは元の人形もあるから、時間が余ったら本物の話につなげるとか?」
「今の話の続きでやるとおもしろくないかも」
「途中まででもいいんじゃない? 浦島太郎とカメが海に入っていくところを、手を振って見送るとか。あ、そうだ。ワカメの首飾りは真っ黒の平たい紙で作るといいよ」
「やっぱりコンブだったんだね。わかったよ。クラブのみんなと話してみる。ありがとねー」
胡桃ちゃんが帰っていった。
その後、胡桃ちゃんの妹から一言ツッコミがあった。
「この時代の北海道って蝦夷って言われてると思うんだよ?」
細かいことは気にしないの。