第3話 おかしな桃太郎とおさる
「偉文くん、アイデア貸して?」
安アパートの僕の部屋に従妹の胡桃ちゃんがきて言った。
彼女はとても元気な小学生だ。
先日、放課後クラブで人形劇をやったところ、短いながら好評でアンコールの要請がでそうだ。
もともと『桃太郎』『かぐや姫』の2案があったが、人形が壊れてボツになっていた。
今回は『桃太郎』が好きな子が、根性で人形を復元させることができたらしい。
「で、問題は正義の味方の役をやりたい人が多くなったの」
「桃太郎、犬、猿、キジ。主人公の側はこの4人だよね。これでも結構多いと思うよ」
「なんとかしてあと2人、桃太郎の仲間をふやせないかな」
「そうだなぁ。仲間が増えていく後半の話を少し変えよう」
* * *
桃太郎はキビ団子を使って、犬とキジを仲間にしました。
その後、見つけたサルに声をかけると、サルはこう言いました。
「僕は仲間と旅をしている途中なんだ。でも少しの間でいいなら、僕の仲間といっしょに手伝ってあげる」
そしてサルは友達のブタとカッパを連れてきました。
桃太郎は犬、キジ、サル、ブタ、カッパとともに鬼ヶ島に向かいました。
たくさんの鬼がおそってきましたが、桃太郎は仲間達と勇敢にたたかいます。
桃太郎は刀を抜いて鬼に立ち向かいました。
イヌは鬼に噛みつきました。キジは鬼をつつきました。
ブタは鼻息を吹いて鬼を吹き飛ばしました。
カッパは頭のお皿をブーメランのように投げて鬼にぶつけました。
そしてサルは棒をつかって鬼と戦いました。
鬼の親分はとても強くて、大きな金棒を振り回しています。
金棒の勢いが強くて、桃太郎は近づけません。
その時、サルは持っていた棒を長く伸ばして、鬼の親分の頭をたたきました。
ひるんだところで、桃太郎は刀を親分につきつけて降参させました。
鬼たちが盗んだという宝物をとりかえし、桃太郎たちは帰りの船に乗りました。
そこで、サルとカッパとブタは桃太郎に別れをつげました。
彼らの主人が待っているそうです。
サルは魔法で小さな雲を出すと、カッパとブタを乗せて飛んでいきました。
* * *
「ねえねえ。このおサルさんって、どーみても『そんごくう』だよね」
「人形劇でそれをいう必要はないよ。人形は『そんごくう』の絵本をみてマネしてね」
「偉文くん、ありがとー。さすがは将来の絵本作家だね」
いや、それは冗談なんだけど。
こうして、アレンジした桃太郎の人形劇はなかなか好評だったらしい。
サルの人形役の子がアドリブで「かめはめは~」って言って、笑わせたそうだ。
終わった後で胡桃ちゃんの妹からツッコミがあった。
「西遊記は中国からインドにいく話だよ。逆方向の日本にきているのは変だよ?」
細かいことは気にしないでね。