第2話 おかしな桃太郎とかぐや姫
「偉文くん助けてっ」
安アパートの僕の部屋に従妹の胡桃ちゃんが飛び込んできた。
彼女はとても元気な小学生だ。
話を聞くと、放課後クラブでまた人形劇のイベントをするそうだ。
ただ、同じクラブの小学生の間で、桃太郎にするか、かぐや姫にするかでもめてるらしい。
小学生でできる尺では、桃太郎の方がいいと思うけどね。
問題は、小学生同士でつかみあいのケンカになって、桃太郎とかぐや姫の紙人形が壊れたってこと。
そろそろ、どっちのお話にするかを決めて、練習も始めないといけないのに、かんじんの人形がない。
頑張れば作り直しもできなくはないが、もともとの人形の出来がよすぎたそうだ。
みんな、主人公の人形を手抜きで作るのも嫌がったそうだ。
他の出し物の合間に人形劇があるので、短めの話でもOKということだけど。
「こーゆー場合、偉文くんなら何とかできるかなって」
「僕にきかれても困るんだけどな。そうだなぁ。桃太郎の赤ちゃんの人形と、小さいかぐや姫の人形はあるんだよね。こうやればごまかせない?」
* * *
むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。
おばあさんが川に洗濯に行くと、二つに割れた大きなモモがあり、中がくりぬかれたようになっています。
小さな男の子がよじ登って入ろうとしていますが、うまくいきません。
おばあさんは、男の子が入るのを手伝ってあげました。中に入ると桃はパタンと閉まり、「おばあさん、ありがとう」と声がしました。
桃はどんぶらこと流れていきました。おばあさんは、良いことをしたと楽しい気分で洗濯をつづけました。
そのころ、おじいさんは山の竹やぶに入っていました。
大きな竹があり、その後ろが扉のようになっていました。
小さな女の子がよじ登ろうとしていますが、うまくいきません。
おじいさんは、女の子が入るのを手伝ってあげました。中に入ると竹はパタンと閉まり、「おじいさん、ありがとう」と声がしました。
竹がキラキラと輝き始めました。おじいさんは、良いことをしたと楽しい気分で柴刈りをはじめました。
こうして、桃と竹に子供が入ることができました。このお話は『桃太郎』と『かぐや姫』につづきます。
おしまい。
* * *
「うん。今回はそれでごまかすしかないねっ! 偉文くん、ありがとー」
胡桃ちゃんは、大急ぎで走っていきました。相変わらず元気な子だなー。