表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/21

第14話 おかしなカチカチ山

「ねえねえ、偉文(たけふみ)くん。いつも観にきてくれる子から人形劇で『カチカチ山』をやってほしいって、リクエストがあったの」


 胡桃(くるみ)ちゃんが安アパートの僕の部屋に来た。

この元気な子は小学生で、僕の従妹だ。

放課後クラブで不定期に人形劇を開催していて、ちょくちょく内容の相談にくるんだ。


「『カチカチ山』で出てくるタヌキとウサギ、それにおじいさんとおばあさんの人形もあるんでしょ。できるんじゃないかな」


「ねえ、お話を少し変えたいの。最後にタヌキを殺しちゃうのはかわいそうだよ。助けて仲直りできない?」


 昔話は残酷な話が多いんだよな。でも、絵本によって表現がソフトになっているパターンもある。


「タヌキが助かる絵本もあるよ。その場合は、おばあさんも無事なんだ。でもそれだと、タヌキに火をつけるのはやりすぎと思う」


「カチカチ山のカチカチって、タヌキの背負っている木に火をつけるときの音だったよね。つけないならカチカチ鳴らないよね。カチカチを火打ち石と違う感じでできないかな」


「そうだねえ。タヌキがイタズラして捕まって、お詫びにお手伝いをしてもらうかな。カチカチと音がする道具で」


「ハタ織り機?」


「ギー、バタン……。それだと『つるの恩返し』だね」


「じゃあ、糸車は?」


「カラカラカラ……。それは『タヌキの糸車』。別の話になっちゃう」


「あ、いいこと思いついた。茶釜に化けてもらうとか」


「『ぶんぶく茶釜』だね。囲炉裏でカチカチと音がするまで沸騰。そこまでやったらタヌキは死ぬよ」


「ねえ、その前に逃げちゃうよ。カチカチと音がする時計に化けてもらうのも……だめかな」


「カチカチと音がするタヌキ…… あれがあったな。昔漫画で見たんだけど、たぶん胡桃ちゃんは聞かない方がいいかも。すごく痛そうな話だからね」


「じゃあ、聞かない」


 『狸地蔵』は言わない方がいいだろう。

キツネとタヌキが化け比べで、お地蔵さんに化けることにした。

タヌキは岩にしか化けられなくて、地蔵彫りの彫刻師がカチカチと……


「……うん、あれはやめておこう」


「ねえねえ。カチカチしないなら、ウサギさんはどこで出すの?」


「そうだねえ。タヌキがどんなイタズラをしたかだね。畑を荒らす。人を化かす。ポンポコと騒音を立てる。夜中にノックして逃げる例もあるか」


「ねえ。それ全部やったってことにして、化かされたおばあさんがケガをしたことにしようか」


 いいかもね。元の話だとおばあさんが殺されている。

ケガだけですんだなら、タヌキが殺される必要はない。


「それでいこう。おばあさんの話をきいたウサギさんは、山でタヌキをだまして捕まえる。カチカチに縛り上げて、罰として頭の毛を刈ってつるっぱげにするんだ」


 落語の『権兵衛タヌキ』に近いかな?


「ねえ。しばるのはガチガチに、だと思うけど。それでなんとかごまかせるかな?」


「大丈夫だと思う。で、タヌキにはお手伝いをさせて、許してあげるんだ。ラストはおじいさん、おばあさん、ウサギ、タヌキでいっしょにご飯をたべて、おしまい」


「うん、わかった。その案でクラブのみんなと話してみる。偉文くん、ありがとー」


 胡桃ちゃんは元気に帰っていった。

後日、胡桃ちゃんの妹の暦ちゃんから人形劇の結果を聞いた。

ラストは暦ちゃんの案で少し変えたそうだ。


「最後はタヌキとウサギが床屋になって、山でお客をとることにしたんだよ。カチカチとハサミを鳴らす散髪の腕が評判で『カチカチ山』と呼ばれるようになったんだよ」


 その手があったー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イメージソング:マリオネットショウ・ウィズ・パペット〔人形劇〕 [YouTube動画][歌詞]
i72fbzxv2ft51pjijavddiayelft_l7z_u0_mn_axbs.jpg

今回と同じ舞台のお話はこちら。
[K&K:胡桃ちゃんと暦ちゃん]

作者アホリアSSの別作品はこちら
新着投稿順
人気順
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ