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2カースト最底辺な俺の人生詰み

俺、香耶(かぐや)(れん)の人生は価値がない。


他ならぬ自分の自身が言っているのだ。




生きていて良かったと思うことがなかった。


むしろ死にたいとすら思っていた。



どうして俺は『俺』なんだ。


もっと才能があれば、コミュ力があれば、力があれば。きっとそうすれば俺はこんな不運から抜け出せるのに。



もうどうやったって、なにをしたって今の人生、先は望めない。


だから俺はーーー





30歳を過ぎると魔法使いになれるらしい。


魔法使いというと大概、RPGでは花形だし物語の主人公にもなりやすい。


でも、俺がなりかけているのはそんな名誉あるものでは決してない。




「はぁ!?お前彼女出来たことないの!?」


馴れ馴れしく肩を組んできた同僚はジョッキのビールを煽りながらプハーっと酒臭い息を吐き出す。


「はぁ、まあ...」


視線を斜め下に逸らしながら出した声は自分でも驚くほど弱々しい。


「ハッ!ドーテーだ!ドーテー!」


「ちょっ!友宏(ともひろ)声デカいって!」


ちょうど正面にいたケバいメイクの同期の女子社員が大声で笑って手を叩く。

男を窘めるような言い方ではあるがそのニヤニヤ顔で本気で言っている訳では無いのだろう。



「あれか?彼女いない歴=年齢的な?...うっはっ、やべー実在したんだっ」


俺は無言で既に三杯目の烏龍茶を飲み干した。



友宏の言葉に女が吹き出す。


「友宏ー、香耶(かぐや)怯えてんじゃん、事実でも言っていいことと悪いことあるってー」



事実て...

本心は知らないが一応擁護している振りをするなら最後まで突き通してくれませんかね。



「ま、これから良いことあるって、頑張りたまえ」


誰目線?マジで。


「ははっ、どうも...」


乾いた笑い声が出た。


声を出した自分自身でも驚く。


文句も喉の奥に引っ込んで出てこなく、泣きたくなるほど心がジュクジュクと痛んだ。



なにが『どうも』だ。


ふざけんじゃねぇ。てめぇになんで指摘されなきゃいけないんだよ?他人に口出しすんな。



そう、言えたら楽なのに。



『カースト』というのは学生時代こそ顕著に現れるものだと思っていたが社会人になったところでそれは変わらないのだと知った。


こいつはカーストが自分より上だから下手に歯向かわない方がいい。


こいつは俺と同じくらいだから仲良くなれそうだ。


こいつは下だな。



そんな風に。



さすがにいい大人だし、口に出して直接言うようなことは稀だけどそれでも態度の節々に嫌な空気を感じるときがある。



初めは些細な変化だった。


言葉や態度に棘があったり笑顔の前に一瞬何かを我慢するような間があったり同じ空間にいても無言の時間が増えたり文句を言う時に超笑顔だったり。



いつしかそれは『ちょっと』ではなくなっていた。


小さな不満が積み重なって、相手にするのも億劫になって、終ぞ嫌いに変わる。



俺はそれが大嫌いだった。


信じていた人の心が知らず知らずのうちに離れて行くことが。

他人と触れ合うことが怖くなるほどに。



バシバシとどデカい笑い声を上げながら背中を叩かれ我に返った。



「よし、ここはオレが恋愛テクを伝授してやろう」


「えー?友宏こないだカノジョに振られたばっかじゃありませんでしたー?」


他の席にいた別の女子社員がニヤケ顔で口を挟む。


友宏は「ぐはっ...!それは言わない約束...」と胸を抑えて仰け反った。


そのオーバーなリアクションに各所で笑い声が上がる。



俺はその光景を他人事のように眺めながら心の中で毒づき、早く時間が経つのを待った。


なんで俺はこんな所にいるのだろう、そう思いながらグラスに口をつける。


こんなことになるのは初めから分かってたはずだろう?実際に来なくたって。


気づかれないようそっとため息をついた。



十人以上の男女がいるこの空間で話していないのは俺だけだった。


完全にアウェー。


一言も発しなくても逆に目立ってしまう。

だから隣の席にいた友宏は見かねて絡んできたんだろう。完全にお節介迷惑甚だしいが。



こんな空間にいると自分がここにいない場合のことを考えてしまう。


俺がここにいなければ場がもっと上手く回るはずなのに。


そう思うと自分という存在が許されていないような、周りから否定されているような気持ちになってさらに凹む。




これが俺の日常。


会社でも、家でも一人。


こんなことなら意地張って都会に出てくる必要なんてなかったかもな。


地元なら、少しはこの寂しさを紛らわすことが出来たかもしれないのに。




俺はまた、自虐気味に笑った。


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