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18やけにその言葉が引っかかる

変な女にあった。


金曜日。色々あったせいかどうやって帰宅したか記憶はなかったが、家に帰りついてよくよくそこ日あったこと...特に放課後のあれこれを思い返して俺はとんでもないやっと関わり合いを持ってしまったのではないかと頭を抱えた。


これが吉と出るか凶と出るか。


蓋を開けてみないとそれは分からない。

今のところは嫌な予感をひしひしと感じているが。


時間的には一緒にいたのは僅か2時間ではあったが『与茂衣(よもい)姫月(ひめき)』という人間について何も見えてこない。


与茂衣の目的とはなにか。何を考えているのか。


いくら唸って考えたところで全く分からない。



そうこうしているうちに次の対策すら考えつかずに迎えた月曜日。


与茂衣が俺の計画について口外しているのではないかとビクビクしながら登校した。


しかし教室の後方のドアから中を覗いてみて肩の力が抜けた。


もう予鈴が鳴るギリギリの時間だと言うのに与茂衣の姿はない。


いや、でももしかしたら...


自席に着き、与茂衣がいつひょっこり現れてもいいように身構えていると教室前方のドアが開けられた。


反射的に俯いていた顔をあげるとそこにいたのは出席簿を持った担任。


いやいや、でももしかしたら...なんて気を張って、ホームルームが過ぎ、一限が過ぎ、二限がーー。


そして気がつけば放課後になっていた。



俺の心労を返せ。


結局無駄に身構えてただけだった。


月曜に試験しろって言ったのは与茂衣の方だろ。

何かするどころか登校すらしてないじゃん。


「はぁ...」とため息が溢れた。


俺はただ自分の身を守りたかっただけ。

望むのは平穏不変の毎日。スリルも変化も求めちゃいない。

なのに最近はなんだ。


どいつもこいつも、俺を利用するだけ利用して。

全くもって世界は平等じゃない。


俺に与えられた役割はただその状況を受け入れて流されることだけ。


少しでもその役割に背くと制裁が下される。

つい笑っちゃうほどブラックだ。


なんでだよ。


心の中でごちながら窓の外に顔を向ける。


最上階にある一年の教室からなら良い景色も拝めそうなものだが生憎顔を向けた先には隣にそびえ立つ同じ高さの校舎があって太陽光すら遮っていた。


薄暗い景色を見ていると心まで薄暗くなっていくような気がするのは気のせいか。


何気なくそのまま視線をあげると校舎の上にフェンスが刺さっていた。...いや、実際には刺さっているわけではないんだろうけどこの位置からはそんな風に見える。


大して高さのない錆びたフェンス。


当時の記憶を思い出す。

確か屋上は施錠されていたはず。そういえば地学教師が太陽光パネルが設置されていると雑談で話していたっけ。

ならば安全性を考慮する必要がないのも頷ける。



......『屋上』?



ふと自分の思考に違和感を覚えた。


もう一度違和感のあった単語を思い出す。


屋上...屋上。


どうしてその単語が引っかかったのか自分でも分からなかった。


ピシッと痛みを感じこめかみを抑える。


瞬間鈍色に染まった景色を思い出した。

背の高い建物たち。びっしり並ぶ車。米粒みたいに小さい人の影。遠くから聞こえる電車の通過音。


なんだ...これ。


東京?


だとするとタイムリープする前か。


いや、でも思い出せない。


あんなに間近で東京の街並みを見下ろしたことってあったっけ?



必死に記憶を辿っていると『バンッ』と机を叩かれ我に返った。


反射的に顔を上げる。



思考が一気に停止したのが分かった。


同時に『やっぱり』と思う。


やっぱ、今日だったか。



俺の腕を無理矢理掴んで立ち上がらせて来たのは最近お馴染みのアイツの胸糞悪い顔。そしてその両隣にはニヤケ顔の2人が侍っていた。



俺は怯えることも出来ずただただ絶望した。


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