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13計画の下準備

髪も切った、メガネも初のコンタクトに変えて服も買って、話し方や姿勢も付け焼き刃だが、一新した。


この土日の間にほんの少しでも自分がレベルアップしたのだという証拠が目に見えて来て気持ちが少しだけ晴れる。



さてと。


そして迎えた月曜日。

昼休みを過ぎても『連中』が動く気配はない。


クラス違うから知らないところで動いてる可能性もあるけど。




そして迎えた放課後。


「ねぇ、香耶くん」


俺が黒板を消していると日誌を書いていたもう一人の日直であるクラスメイトが話しかけてきた。



「ん?」


手を止めて振り返る。



「日誌私は書いたから香耶くんも感想書いてね」


「あー、うん」


手渡された日誌を受け取る。


下の方に設けられた枠が一つ空いていた。

隣には既に書き終えたもう一人の一日の感想がある。


そういえばこういうのあったなー。

うわ、どうしよ。計画を練るのと勉強について行くのに必死で特に書くこと考えてないな。


黒板掃除を終え後は俺が日誌を埋めるだけで仕事は終わる。


「ごめん、すぐ書く」


そう断って机に戻り書く内容を考えていると後は待つだけのもう一人が前の席に座った。


じっと見られると緊張するから書くまでどこか行ってて欲しいんだけどなぁ。二人で終わったあと担任に報告する決まりらしいから仕方ないのかもしれないけど。


「香耶くんさ、いきなり変わったよね」


おもむろにそう切り出された。


「髪とか雰囲気とかガラッと変わっちゃって。あ、もしかして彼女?」


「違うよ」


否定すると「だよねー」とのんびりした返事が返ってきた。分かってて聞いたんかい。



「みんなも驚いてたじゃん。普段目立つほうじゃなかったのに...あ、悪口とかじゃなくて。...それなのにさ、いきなり積極的?になったというか」


やけに朝から注目されていたことには気づいていた。そりゃクラスメイトかいきなりイメチェンすればそれが誰であれ人目は惹く。



これまでの俺なら「そうか?」「そんなことないって」と流していただろうが今の俺は菜彩にしごかれたNew俺。見ててくれよ、菜彩!


「いやー、このままじゃちょっといけないかなってさー。この際全部取っ替えてキャラ一新してみっかー、みたいな?」


おちゃらけてそう言うと女子生徒は目をぱちくりさせていた。



「なに?」


あまりの俺の豹変に驚いているんだと気づきながらも俺はわざとそう返した。


「いやー...、ほんと一瞬で変わったよなーって。人ってこんな見事に変わるもんなんだね。別人みたい」


心の中でほくそ笑む。


「マジで?そう言って貰えると頑張ったかいがあるってもんだよ」



取り留めない話をしながら手応えを感じた。



大丈夫。

イメージチェンジは成功だ。



イメージというのは大きなアドバンテージだ。

陽キャと陰キャが二人並べられてどちらが周りからのウケがいいか考えるまでもないように、どちらが人から信頼を勝ち取りやすいかが明白なように、少なからず周囲への影響力が変わってくる。




これは下準備だ。


まずは『こいつはいじめを受けても仕方ないの存在なんだ』という認識を変える。


それにこの前クラスで曽屋に絡まれているところはこのクラスの人間が大勢見ている。


それは気持ちが昂るまま動いた曽屋の判断の誤りだ。


証人がいてくれなきゃ困る。あの時は偶然だったとはいえ俺にとっては好都合だ。




あとはとにかく、『耐える』。





そして思った通り、日直の報告も終え教室に戻って来たとき、曽屋がまた訪ねてくる。


連行されながらチラリと不安と恐怖に染めた顔で視線をこちらに向ける女子生徒が目に入った。






大丈夫。


計画通りだから。



辛いのは一瞬だから。

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