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影武者の勇者  作者: 夢幻遊夢
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タカトは逃げ出した!…だがしかし、回り込まれてしまった(合掌)


タカトは逃げた。

アースベルから逃げる、その為に。

タカトは逃げた。



(なんで追って来れるの⁈)



だがしかし、アースベルからは逃げられない!



(一体、どうして⁈)



音も、気配も、存在感や匂いですら何もかも全てを消して逃走しているのに付かず離れずで迷いなく自分の後を追い掛けてくるアースベルにタカトは戦慄する。


(こんな事なら挨拶なんてせずに消えれば良かった…ッ!)


後悔しても後の祭りである。


けれども挨拶などしていなくとも追い掛けられる事には変わりないのだが。

ただその場合、アースベルの形相が酷く恐ろしいモノになっていたのを追記しておく。

それを思えば良くも悪くも良かった。と、いえなくもない。


まぁ尤もそんな事はタカトが知る由も無いし、なんの慰めにもならない事ではあるのだが。


(どうしよう…、このままだと下に降りようにも降りられないし…絶対に、マズい…)


本来ならば飛び移る。という過程が増える分、どうしても一旦はその場に止まる事を余儀無くされるし、労力も増えるのでどうしても最終的に遅くなりがちな木々間の移動よりも地を走った方が間違い無く早いのだが、地に降りたが最後、何故だかアースベルに捕まる未来を否が応でも感じてタカトは地へと降りられず、木々から木々へと飛び移る事でどうにか距離を保つ。

がしかし、木々を飛び移らなければならないタカトと、鬱蒼と生い茂る草木を物ともせず、まるで平坦な道でも走るが如く暴走人…もとい、魔物をもある意味轢いて行くのであながち間違えでは無いのだがーーー爆速するアースベルとの距離はジリジリと縮まる一方で。


(そうだ、コレなら…!)


木々間を移動しながらも亜空間へ無造作に片手を突っ込み、タカトは掴んだモノへと魔力を送る。


此処での魔力、とは生命力である。

生命力、とはいうものの、寿命。では無い。

生きる者が食した物を己の血肉などへと変える事が出来る様に、食した物が血肉だけでは無く魔力となる。

また水などの飲料を飲む事でも魔力に変換は可能であり、様々な物語で回復薬、ポーション、エリクサー、エリクシール等と呼ばれるモノがこの世界はあり、その呼び名が総じて生命力水(せいめいりょくすい)と呼ばれたりしている。

そして空気を吸う事に依っても魔力に変換可能ではある。

以上を踏まえて生きる上でも必要な物事という意味合いでの生命力、なのだ。

まぁ空気の場合、吐く分は変換出来ないので変換率は恐ろしく低いのだが。


そして勿論、生命力が枯渇…例えばお腹が空き過ぎた状態。

その状態で魔力を使用してしまえば代用としての生命力、つまり自分を形成するモノーーー若さや筋力、果てはそのものズバリの寿命を削る羽目になるし、その状態で魔力を使い続ければその結末は言わずもがなであるのは容易に想像出来るであろう。

だから魔力の変換が出来る者は教養として自らの魔力の限界を知ることを義務付けられていたりする。

そして変換が出来る者は全体総数の半数以下だ。

ただ半数以下とはいえ、全体総数であるからして大多数の人々が可能ある事を考えれば別に珍しい事でもなんでも無い。


そして魔力には個人差があり、魔力を使用した結果、起こる現象の事を魔法。

起きた現象の成果でそれに見合う魔法名…例えばササラが使用した小石くらいの大きさの氷の魔法は氷結魔法。

スカイトが使用していた二丁銃は魔力で弾丸を作り、それを打ち出しているので弾丸魔法などと分類されて呼ぶのだが、その魔法の強弱や得意不得意は勿論の事、だだ唯一の者にしか使えないモノや血族でしか使えないモノもある。

アースベルが勇者に選出されたのもただ唯一の者にしか使えないモノが使用出来るからであるが、それは後に話すとしよう。


さて、話は戻るが、そんな魔力を込めたモノを3つ亜空間から引っ張り出したタカトは木々間を飛び移る時に一つ。

また一つを途中で。

最後の一つを飛び移った先で落とし、自分は別の場所へと移動する。


落とされたモノーーーーー 魔光石(まこうせき)と呼ばれる、魔力を込められる石。

その石を研磨し、魔力が更に馴染みやすいように加工された 宝石石(ほうせきいし)…宝石の様な石はタカトが愛用している魔力を蓄積出来る石であり、触媒。

それが光り輝く。


魔光石は方向性の無い、純粋な魔力だけで満たされていると何も起こらない。

しかしながらそこに明確な意思ーーー例えば火を出したい等の明確な目的を持って魔力を更に注ぐとその魔光石は火を出して燃え上がる。

燃えている時間は蓄積していた魔力と更に注がれた魔力に相当し、理論上では半永久的に火を出し続けられるらしいのだが、机上の空論とされている。


そんな魔光石をタカト自らが研磨し、机上の空論とされているそれに限り無く近づけたのが、宝石石で。


タカトの魔力と混じり合う事によりタカト唯一が使用出来る魔法となりて落とされる。


落とされたソレはタカトを模したヒトを形取ると四方八方、バラバラに駆け出した。


全く瓜二つのタカト達が各人三者三様に走り去る様を急ブレーキで立ち止まったアースベルは右、左と確認し。

 

「ッ‼︎」


高い木の上で成り行きを見守っていたタカトと目が合うと嬉しそうに笑い。


タカトはゾッと戦慄する。


(う、嘘でしょ⁈)


もう、なりふり構わず逃げるしない!とタカトは瞬時に判断し、木々への飛び移りを再開しながら更に宝石石を亜空間から引っ張り出すとアースベルに向けて投げ捨てるように放つ。



「あっ、ちょっ、タカト‼︎」



タカトを模したソレは、アースベルを取り囲むとまるで通せんぼをするかのようにじりじりと囲い込み、取り押さえようと飛び掛かる。

アースベルはそれを上手く躱しつつ、去り行くタカトを追いかけようとはするものの、避けても避けても負けじとタカトを模した宝石石達は何度も何度も果敢に挑んで来て。


(今の内に‼︎)


再びタカトは逃げた。

それはもう、支援魔法で自身の身体能力を引き上げた上での全力疾走に程近いくらいの勢いで木々から木々へと飛び移り。

最早アースベルの姿が影も形も見えなくなるくらい離れに離れて。

それでも何故だか安心出来なくて、必要以上に距離を取れたと漸く思えた頃、タカトは地面に降り立った。


(酷い動悸…)


荒い息を吐きながら、それでも何と無くその場に立ち止まっているのは不味いと直感的に感じて無意識に少しでも前に進もうと足は動こうとして。



「やっと捕まえた」



タカトは笑顔のアースベルに捕まったのであった…。(合掌)


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