第二部27 姉と弟 その3
※ ウィークリイ王国・繁華街、レストラン「ジェネシス」個室内
ラザール・サタデイ
とりあえずお茶を淹れてもらって、2人で話をするため給仕の者たちは
少しの間、下がってもらった。
「それで、姉さん、いくつか聞きたいことができたんだけど・・・」
「まあ、何かしら??!」
ニコニコと楽しそうに言う姉さん。
うん、これは何かたくらんでるときの顔だ。
「その化粧や服装も含めてだけど、わざと目立つように行動してるよね?!」
「うん、ちゃんと気が付いてたのね。その通りよ」
嬉しそうに答える姉だが、
「なぜ、そんなことを・・・??!」
と僕が言ったとたんに微妙な表情になった。
「ねっ、姉さん、どうしたの?!」
「『どうしたの?!』じゃないわ。わかってなかったのね?!
がっかりだわ・・・」
「え~~~~~っ???!!!」
が、がっかりって・・・、姉さんが・・・、僕に・・・、がっかりって・・・。
あまりのショックでちょっと泣きそうになった。
「いい?!もうサタデイ家はホリデイ家、というよりアル様の援助がないと
成り立たないのよ」
「そ、それは・・・」
それぐらいは僕もわかっている。
サタデイ家の家計に多少なりとも余裕ができてきたのも、領民たちの
生活が改善してきたのも、すべてアレックス様のおかげだ。
「サタデイ家に援助なんかしても、ホリデイ家やアル様に利益は薄いわ。
なのに、なぜ援助してくれてるの?!」
「そ、それは姉さんが・・・」
「そう、私がアル様の役にたってるからよ。そしてこれからも、いえ、
今現在も役にたってるわ」
「あっ・・・?!!」
そういうことか!!
アル様が優待カードをくれたのは、もちろん一番は僕たちへのねぎらいの
意味だが、その他に『役にたつことを示してこい』という意味もあったんだ!
そして、姉さんはそれに応えて、おしゃれをして気品のある言動をして、
わざと目立つようにしてたんだ!
姉さんを見た者は、使っているコスメ類や着ていた服に興味を持ったはずだからな。
マウンテンバイクのことを含め、話題となり、それらの宣伝になるに違いない。
それをただ、『今日は、えらく気合が入ってるな~・・・』ぐらいにしか
思わなかった僕が鈍すぎたのだ。
「わかったようね」
うなだれる僕に、姉さんが言う。
「もちろん、あなたの人生だから強要する気はないわ。でも、今現在、
ホリデイ家の次期当主であるアル様がサタデイ家の次期当主のあなたに
目をかけてくださっているのよ。このチャンスを、あなたはどうするの??」
そんなこと、決まってるじゃないか!
僕は姉さんの顔を正面から見て、
「僕が、そしてサタデイ男爵領が、アレックス様に役に立つと
認められるようにするよ」
と言う。
「うん、それでいいわ。後は行動で示しなさい」
姉さんは、満足そうである。
「あ、でも、もう1つ聞かせて」
「何?!」
「『代行様』はわかるんだけど、『若奥様』って何??」
「ああ、それは・・・、孤児院でアル様が『若様』と言われてるのに
対して、子供たちがいつの間にか私をそう言うようになっただけよ」
ちょっと嬉し恥ずかしそうな姉さん。
「否定すればいいじゃん」
「そんな、もったいないことしないわよ」
あ、姉さん、このことを楽しんでるな。
「でも、アレックス様に知られたら」
「知ってるわよ、アル様と一緒の時にも言われてるから」
「え~~~っ?!いいの?!それ」
「さあ?!それはアル様が判断することだし・・・」
う~~ん・・・、まあ、いいか。
そんなことより僕がアレックス様の役に立つことを示すことが、ずっと
大事だ。
まあ、とりあえず、食事にしよう。
僕は席を立ち、部屋の外の店員さんに料理を頼むのであった。




