第二部19 初手柄
※ ウィークリイ王国・王立学園、校庭
マルグリッド・ルクスタイン
戦闘が始まり、打ち合わせどおりに私たちはテーブルの下に退避した。
「お兄様とホリデイ領軍の兵たちに任せれば大丈夫ですよ」
私の不安を打ち消すようにメリンダ様が言う。
今の状況を本当に心配していないようだ。
普段の会話からも兄のアレックス様をとても信頼しているのがよくわかる。
うちの兄たちも昔は優しかったのに・・・。
ぎくしゃくしはじめたのは、いつからだろう・・・。
「そうだぞ、アレックスは頼りになるからな」
振り向きながらシャルロッテ様も言う。
人族のグラマー美人にしか見えないが、実は頑強な肉体を持つことで
有名なドワーフ族だそうだ。
正直、冗談かとも思ったが、今もメリンダ様の持っている盾の倍ぐらいある
大盾を、軽々と扱っているのを見ると、信じざるをえない。
3年ほど前までは、普通にドワーフっぽい体形だったそうだが、成長するに
つれて、こうなってしまったそうだ。
なぜ、そういうふうに成長したのかを聞いたら、顔を赤くして、
『なったから仕方がない』と言われた。
一人の女としては、すごく興味があるのだが、それ以上は頑として
答えてくれなかった。
「そう、お兄様の側が一番安全です」
シャルロッテ様の言葉を受けて、自信たっぷりに言うメリンダ様。
ちょっと信頼しすぎのような気が・・・?!
※ ウィークリイ王国・王立学園、校舎裏
ライアン・チューズデイ
「伏兵?!」
俺は声の主を探すが見当たらない。
「僕だよ、マッティオだよ、魔法で姿を隠してるんだ」
「お、おう・・・マッティオか・・・、それで、伏兵って?!」
相手が見えないので、どうも話しにくい。
それにしても、マッティオ、そんな魔法が使えたのか・・・。
「あっちの校舎の花壇の近くに、僕と同じ魔法で隠れてる奴が
いるんだよ。草が動いてるのが見えない?!」
言われた場所を注意深く見ていると、草が急に倒れたり、曲がったりしている。
まるで何かが、そこを通っているような感じだ。
じわじわと東屋に近づいてるな。
近くにホリデイの兵士が1人いるが、そのことに気が付いている様子はない。
「ああ!・・・確かに不自然な動きだな・・・?!」
「うん、敵だから、やっちゃって!」
「わかった!」
俺はマッティオに返事をすると、小さく詠唱を始め、そのまま花壇の方に
近づく。
「おいっ!君?!」
兵士に止められたが、怪しい動きの草を指で示し、
「ファイアーボール!」
魔法を打ち込んだ。
我がチューズデイ家が得意な火系統魔法である。
「なっ!!」
兵士は驚いて、俺を止めようとしたが、
「ぐはああっ!!」
ファイアーボールが当たった伏兵が姿を現した。
「伏兵だ!」
そう言いながら、そいつを指さすと兵士はあわてて奴に駆け寄り
攻撃して拘束した。
うん、マッティオに教えてもらったが、一応、俺の手柄だよな。
初手柄を上げた俺は、少し驚いたような表情でこちらを見るアレックスに
向けて満面の笑みで、親指を立てた右手を突き出すのであった。




