第二部14 偽伯爵
※ ウィークリイ王国・王立学園、正門内
ホリデイ領軍所属、ダストン・ウィッケルト
俺たちは現在、武器を学園に持ち込もうとしたジョン・スミスとか
いう奴を学園の校庭に仮設した営巣にぶち込んだところだ。
後は、こいつが言った住所や身元引受人になれる者を調べて対処がきまる。
たぶんジョン・スミスは偽名だろうし、身元引受人も存在しないだろう。
つまり今日、学園に来たジョン・スミスという男も存在しないということだ。
存在しない者に裁判なんて必要ない。
鉱山でたっぷり強制労働に励んでもらおう。
まあ、マルグリッド王女の暗殺に加担したんだから、ほぼ間違いなく
ルクスタイン王国から派遣された裏家業の者だろうけどな。
それにしてもアレックス様は、考えることが違うな。
普通は門で不審人物のチェックをして学園内に入れないようにするところを、
逆に調べずに学園内に引き入れて、監視をつけて逃げられないように
してから、学園に来た目的が本当かどうかを確認して拘束するとは・・・。
人材と費用はかかるが、人材は軍の訓練のついでだと思えばいいし
費用はこいつらの強制労働で回収すればいい。
おっと、次の訪問者が来た。
今度はお貴族様か。
馬車1台か・・・10人ぐらいで囲んでやろう。
どういう反応を示すかな?!
※ ウィークリイ王国・王立学園、校舎・教室
アレックス・ホリデイ
俺は教室の後方で授業を受けるマルグリッド王女の護衛をしていた。
そこに、学園を警備させているホリデイ領軍の兵士が授業の邪魔に
ならないようにドアを静かに開けて入って来た。
(アレックス様~・・・)
彼は俺に近づき囁く。
(フォード伯爵という方が生徒であるご息女を訪ねてきました)
(わかった、ここを頼む)
(はっ)
俺が廊下に出ると彼が乗って来たマウンテンバイクが置いてあった。
馬では小回りが利かないし、生徒に接触したりすると大怪我に繋がる。
道や校庭も蹄鉄を付けた蹄で踏みつけられて痛むしね。
というわけで俺への連絡用にマウンテンバイクの使用許可をもらった。
そして今回のように俺が現場まで移動する必要がある時は、そのマウンテン
バイクに俺が乗って現場に向かい、呼びに来た者は俺の代わりに王女の
護衛をすることになっている。
ということで、俺はまずマウンテンバイクを担いで校舎の外に出る。
そしてマウンテンバイクに乗って、馬車の停車場に向かうのであった。
停車場に近づくと中年の身なりのいいおっさんが兵士たちに向かって
わめいていた。
たぶん、足止めされて文句を言ってるんだろう。
その横には中年のメイド、そしてスキンヘッドのごついおっさん(たぶん
護衛)、そして馬車の馭者がいた。
「お待たせ~、こちらがフォード伯爵様かな?」
「何だ?!お前は??」
見たこともない物に乗ってやって来たおれに驚く自称フォード伯爵。
「はいっ!ダウト~!!」
ジャキッ!ジャキジャキキッ!
「わっ!」
「何をする?!」
「きゃっ!」
「ぎょへっ!」
俺がトランプゲームのような感じで右手を上げて宣言すると兵士たちは
一斉に自称フォード伯爵たちに剣を突き付けた。
「きっ、貴様たち!何のつもりだ?!!」
「剣を引け!」
「やめてください!」
「勘弁してくだせえ・・・」
文句を言う自称フォード伯爵たちだが、
「黙れ!偽伯爵!」
「おとなしくしろ!」
「貴族を騙った罪は重いぞ!」
兵士たちが首元に剣をあてるとおとなしくなった。
「なぜわしが偽者だと言うんだ?!」
「俺が本物のフォード伯爵を知ってるからに決まってるじゃないか!」
俺は偽伯爵に説明する。
「何?!」
「伯爵以上の当主と奥方の顔は全部知ってるんだよ!何のために貴族の
社交パーティーがあると思ってるんだ?!」
正直、社交パーティーは面倒くさいが、こういうことのためにも
出ておかないといけないんだよね。
まして、俺はコリンズ商会の会長でもあるから、商売上で会うことも多い。
上級貴族は一番のお得意様だからね。
「さすがに子爵や男爵のような下位貴族は一部しか知らないがな。
下位貴族じゃ、権力による脅しが弱いと思って伯爵を騙ったんだろうが、
裏目に出たな!」
「ううっ・・・」
偽伯爵は、やっと観念したようだ。
そして、他の3人ともども拘束され、連行されていった。
「じゃ、引き続き、警備を頼むね」
「「「「「 はっ! 」」」」」
俺は兵士たちにそう言うと、再びマウンテンバイクに乗り、
教室に戻るのであった。




