第二部13 諜報員
※ ウィークリイ王国・王立学園、正門
ジョン・スミス
「どうも~~っ、毎度お世話になります」
「ああ、ご苦労さん」
荷馬車に乗ったまま門番と挨拶して、学園内に入る。
俺は、ジョン・スミス、ルクスタイン王国の第1王子派の諜報員だ。
まあ偽名だがな。
諜報員が本名を名乗れるはずがないだろう?!
それにしても厄介ごとが回って来たもんだ。
マルグリッド王女様の暗殺の手助けをしろ、とはな・・・。
前回の失敗で本部も本気になったようだ。
おかげで俺まで駆り出されることになった。
まあ俺は諜報員だから暗殺は実働部隊に任せ、下準備をするだけなんだが。
今回の俺の役目は、学園で飼っている馬の飼料と飼葉の納入にかこつけて、
武器を持ち込むことだ。
そうすれば、実働部隊が門でのチェックをくぐり抜けやすくなる。
学園を囲む塀を乗り越えるのは目立ちすぎるし、見つかった場合、
言い訳がきかないからな。
出来れば学園内の調査もしたいが、下手にうろつくと怪しまれるしな。
さて・・・と・・・、
「わっ!!なっ、何だこれは?!」
思わず声がでてしまった。
何しろ、門を入ると軍人としか見えない者たちが集団でいたのだ。
少なくとも30人はいる。
あの紋章はホリデイ領軍か?!!
いったい、これは・・・?!
「やあ、驚かせてすまんな」
その中の1人が話しかけてきた。
歳の頃は30代前半というところか。
叩き上げの猛者という感じだ。
間違いなく強い。
「いっ、いえ、いったい何があったんですかい??」
「ああ、不審人物が入り込んだそうでな。外部からの入場者には
全て護衛がつくようになってるんだ。というわけで、同行させて
もらうぞ」
「へっ、へえ・・・、まあ、構いませんが・・・」
下手に断ると不審に思われるので承諾したが、2人が左右から荷馬車を
はさんで歩いてくる。
まるで、俺が逃げられないようにしてるみたいだ。
これじゃあ護衛じゃなくて、護送だ。
何か怪しまれるようなことがあったか??
と思っていたら、
「いや~、本当に参るよな~。不審者っていったい誰なんだろうな~?!」
護衛の1人、若く見える方が、気さくに話しかけてきた。
「まったく、迷惑ですよね~」
適当に相槌を打つ。
「おや、あんた、微妙になまりがあるが、どこの出身かな?」
「ああ、ファーガス領です。田舎の村で食い詰めてこっちに来まして」
「ああ、よくある話だな」
いくつか覚えていたウィークリイ王国の領の名前の中から1つを
適当に答えた。
「ファーガスといえば、バリー湖でとれる鱒が名物だな」
もう1人の護衛が話に乗ってきた。
「そうなんですか。うちの村は湖から遠いので食べたことないんですよ」
下手に同意すると藪蛇になる恐れがあるので、知らないことにしておく。
実際に知らないしw
「そうか、まあファーガス領も広いからな」
「ええ、田舎ですし・・・」
とか話していたら、厩舎に着いた。
「じゃ、あっしは納品がありますので」
そう言って別れようとしたが、
「何、言ってるんだ?!帰りも門まで送るぞ」
と言われてしまった。
そのとき、厩舎から馬丁が出てきた。
頼むっ!作業の邪魔だから、とか言って、この2人を追い返してくれ!
と願っていたのだが、
「おや?!いつものフランクさんじゃないんだね」
いきなり余計なことを言いやがった!
その瞬間、護衛の2人の雰囲気が変わった。
「ほほう、いつもの人と違うのか・・・」
「何があったんだろうねぇ・・・?!」
「い、いや、実は・・・」
続く言葉が見つからない。
「一応、言っておくが・・・」
年配の方の護衛が言う。
「ファーガス領にバリー湖なんて湖はないぜ」
「 !!!!! 」
やられた!
もう、これは・・・
ズザザッ・・・
「申し訳ありません!!」
俺は土下座をした。
「頼まれただけなんです!」
俺は言われる前に、荷馬車に隠していた武器を提出し、金を貰って雇われた
だけだということを強調する。
ルクスタイン王国の諜報員だとばれれば、何をされるかわからないからな。
その後、がっちり縛り上げられた俺は、2人に連行されていくのであった。




