第二部11 王女
※ ウィークリイ王国・王立学園
アレックス・ホリデイ
俺はジルベスター王子に呼ばれ、職員寮に来ていた。
防犯上の理由から、在学中の王族は職員寮の特別室が与えられるのだ。
「アレックス・ホリデイだ」
「はっ、王子がお待ちです」
廊下にいた護衛に名乗って部屋に入ると、いつも王子の側にいる
マークスの姿がなかった。
(うん、やはり情報のとおりかな?!)
そう思いながら、王子に頭を下げる。
「やあ、呼び出してすまなかったね。まあ、座ってくれ」
王子がテーブルをはさんだソファーを手で示す。
「いえ、問題ありません」
本当は、こっちにとって問題が大有りなのだが、そんなことは
言えるはずがないので素直に座る。
だいたい呼び出されただけでも面倒なのに、王子の横にはルクスタイン
王国のマルグリッド王女が座っているのだ。
彼女が編入してきたときに、初対面の挨拶は済ませているので今回は
軽く会釈だけしておく。
「それで、御用というのは何でしょうか??」
話の内容は察しているので、すぐに本題に入る。
「うん・・・、実はね・・・」
言いづらそうな王子。
「僕はしばらくの間、城に帰らないといけなくなってね・・・、その間、
彼女の世話と護衛を頼みたいんだ」
「わかりました」
「え?!いいのかい?!」
俺があっさりと了承したので驚く王子。
「ジルベスター様との間で駆け引きをするつもりはありませんので」
どうせ引き受けることになるんだから、下手な駆け引きは時間の無駄だ。
何か条件をつけたりするより、気持ちよく引き受けた方がいい。
「そうか、ありがとう、アレックス」
ほっとした様子で右手を差しだす王子。
俺も右手を差し出し握手をする。
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね、アレックス様」
王女も礼を言ってきた。
「はい、必ずお護りします。マルグリッド様」
そう、今回は世話より護ることが本命だ。
彼女が留学してきたというのは建前で、実は避難してきたのだ。
ルクスタイン王国は女性の王位就任が認められており、彼女は王位継承権
第3位である。
そして最近、お約束の王位継承のゴタゴタが始まり、彼女にも魔の手が
伸びてきた。
彼女としては、女王になるつもりはない。
なので、母親がこの国の公爵家出身ということで、その伝手で、
留学という名の保護を求めてきたのだ。
だが、それでも彼女を邪魔だと思う王位継承権を持つ誰かが暗殺者を
送り込んできた。
そして、その暗殺者は撃退したものの護衛の何人かが負傷した。
そう、マークスが今いないのは、彼も負傷して治療中だからである。
その結果、王子は巻き込まれないように、王城へ戻ることになり、
代わりの王女の世話役に俺が選ばれたということである。
俺が選ばれたのは、戦闘力の高さもあるが、婚約者のシャルロッテと
ラブラブなので王女に手を出したりしないだろうというのが大きかった
らしい。
逆に王女を王城で保護したほうがいいんじゃないだろうか?とも思うが、
いろいろと問題があるようだ。
一番の理由は、留学という形で来ているのに、王城にずっといたら
人質と同じだと判断されかねないということらしい。
う~~ん、これって俺だけ貧乏くじを引いてないか・・・?!
・・・まあ、仕方がないか・・・。
「では、明日の朝、お迎えに参ります」
王女にそう言って退室しようとした俺だが、
「あ!アレックス、生徒会の方も頼むね」
と王子が後ろから声をかけてきた。
思わず膝から崩れ落ちそうになるのを、何とかこらえた俺、エライ!
まあ、退室時の笑顔が微妙にひきつっていたのは、仕方がないよね?!




