第二部10 十手
更新再開です。
今後、更新ペースが乱れるかもですが、
のんびりとご覧ください。
※ ウィークリイ王国・王立学園
アレックス・ホリデイ
今日の授業も終わり、俺はシャルロッテたちの待つサロンの方に歩いていた。
最近、ジルベスター王子があまり俺に接触してこなくなった。
仲が悪くなったとかではない。
隣国であるルクスタイン王国の王女が留学してきたので、王子はそちらの
お相手でお忙しいのだ。
是非、両国の友好のために、がんばっていただきたい。
うぷぷぷ・・・。
おかげでこうやって落ち着いてアフタヌーンティーを・・・、と思って
いたところ、
「アル様~っ!」
後ろからマッティオが俺に呼びかけるとともに、抱きついてきた。
「あっ!ダメっ・・・!」
止めようとしたが、
ガキッ
「ぎゃふっ!」
遅かった。
俺の背中にぶつかったマッティオは痛さのあまり廊下に倒れ込んだ。
俺が背中に隠し持っている十手に頭をぶつけたのだ。
学園内では、防犯上の理由で剣はもちろんある大きさ以上の刃物の携帯は
許されていない。
特例として、王子を護衛するため、マークスは剣を佩いているが、
その剣にしても刃がついていない“刃引き”の防御用のものだ。
俺としても王子の近くにいるし、何かのときのために武器を持って
いたいが刃物は許されない。
素手でもそれなりには戦えるが、相手が剣を持っていた場合、分が悪すぎる。
ということで、時代劇やなんかで同心や岡っ引きがよく持っている
十手を思いついたのだ。
目立たないように専用ホルスターを作って背中に装備しており、上着を
着れば、ほぼわからない。
場合によっては防御になると思っていたが、ぶつかってくる奴がいるとは・・・。
マッティオはと見れば、頭を両手で押さえて転げまわっている。
うん、痛いよね。
何しろ鋼鉄の棒に頭をぶつけたんだから・・・。
俺もそれなりに痛かったよ。
マッティオを介抱したいが、動き回ってるので下手に手が出せない。
ということで、彼の廊下ローリングがおさまったところで、声をかける。
「大丈夫かい?!治療室に行く??!」
「い、いえ・・・」
「ちょっと見せて」
彼の前髪を手で上げて、ぶつかった部分を確認する。
「赤くなってるけど、コブにはなってないね。一応、冷やした方が
いいか・・・。サロンで氷を貰おう。ほいっ・・・」
俺はマッティオに手を差し出す。
もちろん、立ち上がるのに手を貸すためだが、マッティオは、その手を
取らないで両腕をだして、
「痛くて立てないので抱っこしてください」
と言ってきた。
いつもなら、『甘えるな!』と言って拒否するが、今回は痛い思いを
させてしまった負い目がある。
少し考えて俺は、
「よっ・・・と」
「えっ?!わわわっ!!」
マッティオを持ち上げ、右肩に乗せ、彼の頭を前にした『俵担ぎ』にした。
この体勢から彼の頭を下にして体重をかけながら落とせば、禁じ手の
スタ〇ナー・ス〇リュー・ドラ〇バーである。
もちろん、そんなことは絶対にしないが。
「えっ?!ちょっ?!ア、アルフレッド様!やっぱりいいです!下して!
歩けます!歩けますったら!・・・」
そして、騒ぐマッティオを無視してそのままサロンまで歩いて行くのであった。
「うっはぁ~っ!さすが“ジャーニー”の新製品のフルーツクッキー。
噂どおりおいしいですね~っ!」
俺の彼への扱いに対して不機嫌だったマッティオだが、今はご機嫌で
クッキーを頬張っている。
ちなみに“ジャーニー”とは俺が経営する菓子店の名前だ。
このフルーツクッキーはホリデイ領でのドライフルーツの生産が
順調なので作らせてみた限定品である。
ドライフルーツはマッティオの好物なので、ちょうどいいと思って出したのだ。
「それで、なんで担がれてきたんだ??」
おちついたところでシャルロッテが聞いてきたので説明すると、
「ああ、あれか!それに頭からぶつかったと・・・うぷぷぷ・・・」
と納得しながら笑いをこらえている。
十手もシャルロッテが作った特別製である。
「ぶ~~~~っ・・・」
頬を膨らませながら口を尖らすマッティオ。
自分が美少年だとわかっていての仕草だ。
前世では、あざといけどそこがいいと、一部で大人気のショットだ。
今もこちらの様子を見ている女生徒たちがキラキラ目である。
もちろん、俺たちには通用しないけどね。
ということで結局、今回も落ち着いたお茶会にはならなかったのであった。
※ ウィークリイ王国・王立学園、男子寮
マッティオ・マンデイ
今日は抱きつくのは失敗したけど、アレックスお兄様に抱きかかえて
もらった(ということに脳内変換しました)し、お茶することも出来た。
痛かったけど、結果オーライということにしよう。
クッキーもおいしかったし。
次は、どういうアプローチをしようかな?!




