第二部03 入学式 その1
※ ウィークリイ王国・王立学園、停車場
アレックス・ホリデイ
「お嬢様、お手をどうぞ」
「光栄ですわ」
なんてアホなことを言い合いながら、俺はメリンダの手を取り馬車から
降りるのを手伝う。
そして、そのまま彼女をエスコートして入学式の会場に向かう。
俺たちの後ろからは、俺の従者のリリーとメリンダの従者のマーガレットが
ついてきていた。
マーガレットは2年前に俺が拾ってきた孤児だ。
そのときすでに14歳であった彼女は孤児院に入れるには、歳を
とりすぎていた。
しかし、技能を持たない者は雇われたとしても扱いが悪い。
というわけで、ホリデイ辺境伯家の王都屋敷でメイド見習いとして
雇うことにしたのだ。
結果、覚えもよく、それなりに優秀なメイドとして育ってくれた。
そして、今回、メリンダの従者として選ばれたのである。
そこに、
「アル、おはようですわ。メリンダ、入学おめでとう」
フランチェスカが挨拶をしてきた。
「おはよう、フラン」
「ありがとうございます。フラン様、今後ともよろしくお願いします」
俺たちも挨拶を返す。
「もちろんよ、何かあったら私に言いなさい」
「はい」
フランチェスカの家は、貴族で最高位である公爵家である。
王家であるジルベスター第二王子を除けば、生徒で彼女に逆らえる者は
いない。
もちろん、彼女は家柄をたてにして理不尽なことを言ったりしたりは
しないが。
「じゃあ、フラン、またねっ」
「失礼します」
「はい、また後で」
俺たちは、フランチェスカと別れ、停車場の出口に向かう。
そして、
「お兄様、フラン様とご一緒しなくていいんですの?」
ある程度、離れたところでメリンダが俺の耳元でこそっと言ってきた。
「うん、たぶん彼女はライアンを待ってたんだよ」
「ライアン様・・・? ああ!そういうことでしたの!」
「そそっ、邪魔しちゃ悪いだろ?!なので、こっそり戻るよ!」
「えっ??!」
3年前の社交界デビューのときに知り合ったチューズデイ伯爵家のライアン。
当時は巻き込まれキャラでフランチェスカに振り回されていた彼だが
3年経った今では、俺の知っている『たそこい』のとおりの男らしい
筋肉キャラになっていた。
最初は彼のことを下僕っぽく扱っていたフランチェスカだが、その
成長ぶりで見直したらしい。
そして、この1年、フランチェスカはときどき外出許可を貰って
ライアンとデートをしていたのだ。
え?!なぜ、俺が知ってるかって?!
うちが経営する店や研修で外で働いている孤児院の子たち等から
報告がくるんだよ。
ホリデイ辺境伯家の領の特産物の宣伝と販売のためにコリンズ商会を作り、
服飾店やレストラン、化粧品店などを経営した。
そして、その利益を還元するために孤児院や病院、学校などを作った。
結果、それらから王都の街中の情報が入って来ることになったのだ。
まさかこんなことで王都内の情報網ができるとは・・・。
思わぬ収穫であった。
うちの経営する店は、流行の最先端の人気店ばかりだから、普通に、
フランチェスカたちのデートコースに入るんだよね。
そして現在、新入学のライアンを出迎えに停車場に来ているフランチェスカ。
こんなもん、見物するしかないだろ?!!
というわけで、俺とメリンダは、従者2人を停車場の出入り口に待たせ、
物陰に隠れてフランチェスカを観察する。
するとチューズデイ伯爵家の紋章を付けた馬車がロータリーに入って来た。
もちろん、この馬車にもホリデイ辺境伯家とフライデイ侯爵家で
開発したサスペンションとゴムタイヤが使われている。
サスペンションの方は量産化も出来て普及しているのだが、ゴムタイヤは
耐久性の問題で一部の馬車にしか使われていない。
なので、うちがフォローできる範囲の馬車しか装備していないのだ。
馬車が停まり、ドアが開いて出てきたのは、身長が180cmを優に
越える筋肉質の男だった。
もちろん、ライアンであるが、育ちすぎだろ?!!
本当に14歳かよ?!
俺の心の中のツッコミをよそに、ライアンはフランチェスカを見つけると
ぱあっと明るい顔になり、
「フラン様っ!」
と叫んで駆け寄っていった。
その様子は、まるで大型犬が大好きなご主人様を見つけたときのようだ。
うん、ぶんぶんと勢いよく振ってる尻尾が見える気がするよ。
「遅いですわ!こんなに私を待たせるなんて!」
「すっ、すみません」
「まあ、めでたい日ですから、許して差し上げますわ。ほらっ・・・」
「えっ?!・・・あっ!」
一瞬、戸惑ったライアンだが、すぐに腕を差し出してフランチェスカを
エスコートする。
「入学おめでとう。制服、よく似合ってますわ」
頬を赤くしながら言うシャルロッテ。
「は、はいっ、ありがとうございます」
言われたライアンも照れている。
「う~ん・・・、見事なツンデレだ!」
いいものが見れて、とても満足した俺であった。




