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番外10 2年後その10

※ ウィークリイ王国・王都、学園・停車場前

  アレックス・ホリデイ


学園への入学式の日、俺は早めの時間に来て、学園の制服姿で馬車の

停車場の下車エリアの近くに立っていた。


斜め後ろには、学園で俺の日常生活の世話をしてくれるメイドのリリーが

控えている。


ボディーガードも兼ねて男性の従者をつける者も多いが、正直、

男に生活の面倒をみられるなんて嫌だ。


朝、男に起こされたいか?!夜食を男に作ってもらいたいか?!

そういうことである。(どういうことだよ?!)


もちろんHなことを強要したりなんてしないよ。

ラッキースケベはあるかもしれないけどね、うぷぷぷ・・・。


そこに、

「若様!」

声をかけてきた者がいた。


学園の関係者で俺を『若様』と呼ぶ者は1人しかいない。


クラリスだ。


同じ歳の彼女も当然、今日が入学式である。

うん、制服がよく似合ってるね。


「やあ、おはよう」

「おはようございます」

お互いに挨拶を交わす。


「若様、同じAクラスになれました。今後とも、よろしくお願いします」

「うん、こちらこそよろしく」


うん、知ってた。

さっき確認したからね。

それで驚いたんだよ。


学園では事前に行われた試験によって、基本的に成績順にA~Eクラスに

振り分けられる。


基本的にというのは、身分による忖度そんたくがあるからだ。


規則として決められているわけではないが、『暗黙の了解』という

やつである。

高い身分の者に恥をかかせるわけにはいかないからね。


まあ、高い身分の者は基本的に教育が行き届いているので、よほどの

ことがない限り、大丈夫なのであるが、そのよほどのことが起こるのが

世の中というものである。


俺はもちろん大丈夫だよ、元大学生だしね。

ほぼ満点の自信がある。

ただ、満点だったとしても、ある理由で主席にはなれないのだが。


なので、クラリスが男爵家という貴族としては低い家柄なのにAクラスに

入れたということは成績が相当よかったということになる。


でも、彼女、そんなに勉強ができたっけ・・・?!。

『たそこい』の原作では、Cクラスだったはずだが・・・。


まあ、彼女とは仲良くするつもりだし、監視する件も考えると

同じクラスの方が都合がいいので何も問題ないのだが。


「そうそう、クラリス嬢、同級生になることだし、これからは、

アレックスと呼んでくれないかな?!」

さすがに学園で『若様』呼びは、ダメだろう。


「はい、ではアレックス様で」

「うん、それでよろしくっ!」

『嬢』や『様』を取るのは、お互いにもっと親しくなってからだね。


名前呼びだけでも十分に親しいと周囲に示せるから、『男爵家のくせに

Aクラスなんて生意気だ!』とか思う者からの変な虐めも防げるだろう。


とかやってたら、目的の馬車がロータリーに入って来た。


フライデイ侯爵家の馬車だ。


少し改造されて形が変わっていたが、見間違えるはずなんてない。


何しろ車輪にゴムタイヤがついた馬車なんて、今、この世界に

1台しかないのだ。


マウンテンバイクでうまくいったので、フライデイ侯爵家では馬車用の

ゴムタイヤの開発にとりかっていた。

そして、試作ができたので、ここで披露すると連絡があったのだ。


俺は馬車に近づき、御者がドアを開けるのを待つ。


早くタイヤをチェックしたいが、シャルロッテを出迎える方が

大事だからね。


ガチャッ


ドアが開いたので、俺は出てくる女性が降りるのを手伝うために

右手を差しだし、


「えっ?!」


その姿勢のままで一瞬、固まった。


「おはよう、アレックス」

そう言って俺の手を取ったのは、サーズデイ公爵家のフランチェスカ

であった。


「お、おはよう、フラン」

俺は、とまどいながらもフランチェスカの降車のサポートをする。


「あははは・・・、おはよう、アレックス」

フランチェスカに続いてシャルロッテが、笑いながら馬車の中から

身を出してきた。


「おはよう、シャル」

もちろん、彼女にも手を差し出し降車のサポートをする。


「新しい車輪が出来たというので、私も試乗させてもらいましたのよ」

俺に尋ねられる前にフランチェスカが現状の説明をしてきた。


「なるほど。それで乗り心地はどうだった?」

「すてきでしたわ。うちの馬車にもぜひ、お願いしますわ」

「ごめん、原料が少なくてな・・・。もうしばらく待ってくれ」

シャルロッテが答える。


今、うちの領では、ゴムの木を栽培して増やしているところなのだが

ゴムの樹液がとれる大きさになるまで、まだだいぶかかりそうなのだ。


「そうなのですか・・・」

残念そうなフランチェスカ。


「アレックス様、そろそろ講堂に行かれませんと・・・」

リリーが入学式の時間がせまっていることを伝えてきた。


「そうか、じゃ行こうか」

仕方がない。

ゴムタイヤのチェックは、またの機会だ。


「おっと!」

振り返るとまだクラリスがいた。


「紹介しておくよ、こちら同じAクラスのクラリス嬢、そしてこちらが

シャルロッテとフランチェスカだよ」

当然、シャルロッテとフランチェスカもAクラスである。

だいたい公爵家や侯爵家がBクラス以下なんてありえない。


「よ、よろしくお願いします」

「よろしくですわ」

「よろしくなっ!」


本当なら婚約者のシャルロッテをエスコートすべきなのであろうが、

この3人にも仲良くなってほしいので、わざと少し離れて歩く。


思惑通り、3人は楽しそうにおしゃべりを始めた。

『女3人寄ればかしましい』である。


そして講堂に近づいたところで人の流れがとどこおっている場所があった。


(ああ、彼のせいか)

俺は、その原因の中心人物を見つけて、心の中で納得する。


ジルベスター・サンデイ第2王子。


『たそこい』の原作でメリンダの婚約者だった男であり、俺が満点を

取っても主席になれないと言った理由だ。


王族だから、主席以外ないよね。


わざわざ騒ぎの中に入りたくはないが、挨拶をしないわけにもいかない。


俺は、

「失礼します」

と言って、王子に近づき貴族式の礼をする。


シャルロッテたちも、俺の後ろから礼をした気配がした。


「アレックスか。先日は弟と妹が世話になった」

「いえ、こちらのクラリス嬢に手伝っていただきましたので」


普通なら、わざわざ男爵家の者を王子に紹介する必要はないのだが、

王子とクラリスが出会った時のそれぞれの反応を見たかったので、

クラリスを紹介する。


「ク、クラリス・サタデイにございます」

いきなり王子に紹介されたクラリスが、あわてて挨拶をする。


「ふむ、そなたがクラリスか・・・」


ん?!名前を知っている!

王妃様が、わざわざ教えたのか?


「ご苦労であった」

「はい」


だが王子は、たいした興味はないというように、あっさりと会話を

終わらせ、

「では」

と言って立ち去った。


う~~ん・・・・とりたてて、変わった反応はなかったようだが・・・。


まあ、いいか!


俺は、気を取り直して、


「さあ、行こうか!」


3人の少女とともに、入学式の行われる講堂に向かうのであった。

今回で番外編は終了です。

「にーこーぷ」を書くので、またしばらくこちらはお休みします。

では、1年後が舞台となる第二部で、またお会いしましょう。

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