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05 4年後

とか、やってるうちに4年経ちました。(早いな?!)


俺は12歳、メリンダは11歳になった。


この4年でホリデイ辺境領はすさまじく発展した・・・と言いたい

ところだが、さすがにそこまでは無理だった。


もちろん、それなりに発展はしたよ。


でも、大学に一か月しかいっていない、実質高卒の知識でやれること

なんてたかが知れてるんだよ。


さらに知識があっても技術がなければ意味がない。


例えば農業で大事な窒素肥料の原料であるアンモニアの合成方法の

ハーバー・ボッシュ法には、約500℃で200気圧以上の環境が

必要だがそんな容器を作る技術はこの世界にはないので無理だ。

(現在は効率がよくなって、もっと低い温度と圧力で合成されてます)


知識は技術に支えられてこそ役に立つのだ。


というわけで農業関係では、窒素肥料の代わりに『緑肥りょくひ』になるレンゲや

クローバー(シロツメクサ)を植えて農地にすき込んだり、農具を改良

したり、病虫害を防いで効率をよくするために農地を整備しなおしたり

とかの地味なことしか出来なかった。


まあ、それだけでも結構大変だったんだが・・・。


あとは蒸留所を作ってワインからブランデーを作ったり、石鹸を作って

広めたぐらいだ。


「がんばったつもりだったが、まだまだだなぁ~・・・」

今は夏、目の前に広がる黄金色に実った麦畑を見ながら言う俺。

ため息とともについ愚痴ぐちがでてしまった。


「何をおっしゃいます」

「わっ!・・・ゴンじい、いたのか・・・」

「わしはいつでも坊ちゃんの側におりますよ」


にこやかな笑顔をうかべながらゴンじいが言う。


そうなのだ、俺が出かけるときは必ずゴンじいが付いてきてくれて、

やることのサポートをしてくれた。


ゴンじい、とても有能なのだ。


物事の理解も早いし、農民や職人との仲立ちをうまくやってくれている。

さらに、ときおり見せる眼光の鋭さや体の動きを見ると、普通の庭師とは

思えない。


元軍人か何かじゃないかと思って聞いたのだが、笑うだけで

答えてはくれなかった。


もしかすると、庭師ならぬ御庭番おにわばん?!なんちゃって(笑)。

(注:御庭番おにわばん:徳川幕府に仕えた隠密(おんみつ)・忍者)


「坊ちゃんのおかげで収穫量だけじゃなく品質もよくなって

農作物がいい値段で売れると皆、喜んでおりますよ。

事務方のほうも坊ちゃんが異国の数学を伝授してくれてたばかりか、

書類の形式を統一してくれたおかげで間違いが少なくなったと・・・」


ああ、メリンダが数学が苦手というんで教えてたら、ついでにと

頼まれて事務方にもいろいろやったんだった。

まあ、数学というより算数に近いんだが。


「そういうわけで、坊ちゃんは充分にこの領に尽くされておりますよ。

誇ってもいいぐらいですじゃ」


ゴンじいの言うことはわかるが、最初の目標とだいぶ違ったのがなあ・・・。

現代知識無双なんて幻想でした。


まあ、仕方ない出来るだけのことはやったんだ。


これから秋にかけて目の前の小麦をはじめ、いろいろな作物の収穫や

加工が目白押しだ。


それらが終われば、俺とメリンダにとっていよいよ初めての王都。

そして、社交界デビューである。

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