番外03 2年後その3
※ ウィークリイ王国・王都、孤児院
まさかこんなところでヒロインとの初顔合わせになるとは・・・。
雰囲気が俺の知っている『たそこい』のヒロインと違うんだよね。。
あっちはもっとぽややんとしたまさに癒し系という感じだったのに、
こっちは落ち着いたしっかり者という感じだ。
おかげですぐにはヒロインと気が付かなかったよ。
今、俺たちがいるこの世界の『たそこい』では、隠しキャラのはずの
マッティオがほいほい出てきたり、男キャラのはずのフランチェスカや
シャルロッテが女だったりと、俺の知っている『たそこい』とは、
いろいろと違いがでている。
なので、今のところの俺の結論としてはスピンオフとかリメイクでは
ないかということになっている。
だから、彼女の性格が多少違うとしても不思議はないんだが・・・。
「ねえ!お歌、歌って!」
俺にまとわりついていた子供たちの中の女の子が言う。
「はいはい・・・」
俺は、彼女の頭を撫でて、部屋の壁際に設置されているピアノの方に
一歩踏み出したのだが、
「あ・・・!」
そのまま立ち止まる。
「若様ぁ!どうしたの??」
上目づかいで聞いてくる女の子。
うんうん、とってもかわいいよ。
だけど今はそれどころじゃない。
異世界物によくあるパターンに気が付いたのだ。
『いつから転生者は自分だけだと勘違いしていた?!』
というやつである。
もし彼女・クラリスも転生者だった場合、現代日本の歌を歌えば、
俺が転生者だとばれてしまうだろう。
どうする・・・?!!
とりあえず、
「あ、ごめんね。ちょっとトイレ・・・」
そう言って女の子から離れる。
子供たちの『え~~~っ・・・』という声を背に、俺は部屋の外に出た。
そして、トイレの方に歩きながら考える。
このまま急用ができたと告げて立ち去るか?
う~~ん・・・愚策だな・・・。
たぶん疑問に思うだろうし、クラリスが子供たちから、どんな歌なのか
聞き出すかもしれない。
いっそ、始末しちゃう?!
断罪イベントは王子や有力貴族を味方につけることで可能となる。
今なら、彼女は普通の男爵家の娘だ。
裕福な辺境伯家嫡男である俺の方が、財力も権力も、さらに武力も
ずっと上である。
辺境伯家の暗部の者にやらせれば・・・。
うん、無理だ。
罪もない者を始末するなんて、出来るわけがない。
危害を加えられたり、敵対することがはっきりしたなら別だが。
んっ!そうだよな?!クラリスがまだ『敵』だと確定しているわけじゃない。
俺の最大の目的は、『妹のメリンダが幸せな人生を送ること』である。
もちろん、その他の身の回りの者たちも幸せになって欲しい。
今では、シャルロッテもメリンダと同じぐらい大事だしね。
そして俺も幸せになる。
自分はどうなってもいいなんて言わないよ。
俺が不幸になったら、メリンダやシャルロッテをはじめ、父上・母上、
ゴンじい、使用人たちなど、悲しむ者たちがたくさんいるもん。
皆で一緒に幸せになるのだ!!
それさえ達成出来るなら、クラリスが王太子妃になろうが逆ハーレムを
作ろうが、まったくかまわない。
ならば、まずは・・・
俺は、ゴンじいと護衛の1人を近くに呼び寄せ、耳打ちをする。
「はっ!」
「了解しました!」
2人に指示を出した後は、一応トイレに行ってから子供たちのいる部屋に
戻った。
「若様、おそ~~い!」
「早く弾いて~」
「ちゃんと手を洗った?!」
はいはい、ちゃんと洗ったよ!
そして俺はピアノ用の椅子に座り、ピアノを弾き始めるのであった。




