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04 辺境伯夫妻

・辺境伯マキシミリアン・ホリデイ

                  辺境伯屋敷食堂にて


息子がおかしい。


わっはっはっ・・・違う!!そういう意味のおかしいではない!!


様子が変なのだ。


階段から落ちた怪我から回復したのはいいが、わけのわからないことを

言い始めた。


医者の話では頭を打った影響で記憶が混濁しているということだったが、

それも少しずつ落ち着いてきたようでほっとしていた矢先、勝手に

花祭り用の花畑の収穫を指示したと連絡がきた。


理由を聞いたら、


『深夜に豪雨が降り、花が痛んで商品にならなくなるから』


ということだ。


何じゃ?!そりゃぁ~~!!!


なぜ、そんなことがわかる?!!!

ほれ、周りの者たちもポカンとしておるわ。


わけがわからん!


ということで、とりあえず放置!!


詳しい話は、今夜の結果がでてからにしよう。

だって、変なのが息子に取りいてたりしたら怖いじゃないか。




・辺境伯夫人ルイーザ・ホリデイ

                 辺境伯屋敷寝室にて



「おほほほほ・・・、また、あなたったら・・・」


私は夫のマキシミリアン辺境伯に笑いかける。

相変わらず気が弱いこと・・・。


でも、そこがこの人の良いところなのだ。


彼とは王都の学園で知り合った。


入学当初、彼は見た目がゴツくて争いごとにすぐ首を突っ込む乱暴者、

という評判だった。


しかし、違和感を感じた私は、彼を観察することにした。


違和感の正体はすぐにわかった。


彼は争いごと、特にイジメを止めようとしていただけだった。


イジメに気がついたら反射的に間に入る。

相手が上級生だろうとおかまいなしだ。


弱い者がしいげられているのを許せないのだ、実際は気が弱いくせに。

だから間に入ってもまともに文句も言えず、ただ相手をにらみつけるだけ。


だが、それで十分だった。


武闘派の辺境伯家の嫡男として鍛え上げられたあの巨体が間に割って入り

にらんでくるのだ。

そりゃ、相手は逃げ出すし、くやしさで悪い噂も流すだろう。


だから私は決めたのだ。


この優しくて不器用なひとを支えてあげて、ついでに私も

幸せにしてもらおうと。


そして猛アタックして、めでたく彼の妻になったのである。


現在、領の状態も問題なく充分幸せと言えるだろう。


「降りましたね・・・」

私は窓の外を見ながら夫に話しかける。


雨が降っていた。


確かに息子は変わってしまった。


だが、私たちに害を成すどころか利益をもたらそうとしてくれている

ように見える。


ならば、そのうち理由を話してくれるときがくるだろう


しばらく好きなようにさせて、場合によっては協力してやろう。


さらに強くなる雨を見ながら私はそう決めたのだった。

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