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39 フライデイ侯爵家 その8

1年ぶりに1話だけの更新では・・・

と思ったので、もう少しこっちをやってから

『にーこーぷ』に戻ります。

「え?!もう出来たの?!!」


ダンパーの試作品が出来たとのフライデイ侯爵家からの知らせに、

ついそう言ってしまった俺。


ダンパーの作成を依頼してから、まだ10日ほどだ。

2~3ヶ月は、かかると思ってたのに、ドワーフ半端ねえな!


ということで、知らせを受けた次の日に、フライデイ侯爵家王都屋敷を

訪ねた。


「やっほ~!アレックス!」

「ぐほっ!」

馬車を降りたとたん、シャルロッテが飛びついてきた。


彼女の自前のもちもちクッションのおかげで痛くはないがゆっくりと衝撃が

伝わってくる。


極上の羽毛布団をぶつけられたような感じである。


シャルロッテは俺に抱きついた体勢のままスリスリと頬ずりをする。

この前のピアノコンサートで、ますます俺のことを気に入ってくれたようだ。


もちろん、俺も彼女が大好きだよ。


俺たちを見ているギルベルト侯爵様やシャルロッテの母親のカンデラス様は、

「うむ、もう正式に婚約でいいんじゃないか?!」

「いっそ、結婚させてしまいましょう」

なんて言ってる。


いや、正式な婚約はともかく、結婚は無理だからね。

俺、まだ12歳だよ。


シャルロッテだって発育はいいけど、芳春院じゃないんだから。

(注:芳春院(前田まつ)・戦国武将前田利家に満11歳で嫁ぎ、

満11歳11か月で長女を出産した)


「シャル、それぐらいにしなさい」

アレッハンドロ様がシャルロッテに注意する。

「アレックス殿は遊びに来たのではないぞ」


「わかってますよ~だ。行くぞ、アレックス」

ぶくっと膨れながらそう言ったシャルロッテは、俺の手を引っ張って

屋敷の中に入って行く。


それを見て、アレッハンドロ以外の周りにいた者たちは、にこやかな

表情で後に続くのであった。




「着替えてくるので、好きに中をみていてくれ」

侯爵様たちは、作業服に着替えてくるとのことだ。


俺としては、最初から作業服を着てもらっていてもかまわなかったのだが

大事な客を出迎えるときに、貴族としてそれは・・・ということらしい。


俺の方は『汚れるかもしれないので気軽な服装で』と知らせにあったので

失礼にあたらない程度のラフな服装にしてある。


侯爵家の使用人に案内されて、屋敷の中を抜け、奥庭に建てられた

工房に来た。


工房と言っても、一般的な日本家屋の2~3件分はありそうだ。

さすが職人種族のドワーフである。


中に入ると作りかけの馬車や家具などが並んでいた。


そして、いくつかある作業台のうち一番大きなものに、ダンパーと

スプリングが並んでいる。


「お~~~っ」

思った以上の出来栄えに思わず声が出た。


試しにダンパーを1つ手にとり、引っ張ったりし縮めたりしてみる。


ダンパーは、ゆっくりと長くなったり短くなったりした。


「どうじゃな?アレックス殿」

後ろから侯爵様に声をかけられた。


「いいですね!オイル漏れもないようですし」

俺は笑顔で答える。


さすがドワーフ、うちの領の鍛冶師たちでは出来なかったのに・・・。

ほんと半端ねえ!!


「そうじゃろ、そうじゃろ」

侯爵様、ご満悦である。


「では、うちの馬車用のスプリングに合わせて大型化をお願いします」

「うむ、ついでに耐久テストもこっちでやっておくかの」


この分なら来年には商業化できるかもしれない。

うん、儲かりそうだ。


「こっちも見てくれ」

アレッハンドロ様が、スプリングを示しながら言う。


「俺も手伝ったんだぞ!」

と自慢げに言うシャルロッテは、オーバーオールのような作業着を着ていた。


かっ、かわいいじゃないか!!


貴族服やドレス姿も似合うが、作業の邪魔にならないように髪をまとめ、

ワークキャップをかぶったこういう格好もボーイッシュでとてもいい。


「うんうん、ありがとね」

そう言いながら、シャルロッテの頭を撫でる。


「えへへ・・・」

シャルロッテ、嬉しそうである。


そして、改めてスプリングを手に取り、伸ばしたり縮めたり曲げたりと

いろいろ試す。


「いいですね、これもいろんなことに仕えそうです」

「ほう、例えばどういうことにだ?」

アレッハンドロ様が尋ねてきた。


少し考えて俺はあるものを思いついた。


「これ、100本単位で量産出来ますか?」

「あ、ああ、手動で巻き取る機械を作るのはちょっと大変だったが、

それが出来た今は、その気になれば、1日に100本だって1000本

だって作れるが・・・」

アレッハンドロ様、いきなり100本なんて数がでてきたので、少し

驚いたようだ。


それなら、あれが作れそうだね。


俺は、侯爵様たちに説明を始めるのであった。

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