36 フライデイ侯爵家 その7
※フライデイ侯爵王都屋敷
侯爵ギルベルト・フライデイ
「では、いただこうか」
夕食の席でわしがそう言うと、皆は夕食を食べ始めた。
わしはグラスを手に取る。
注いであるのは、昼間、ホリデイ辺境伯家のアレックス殿から貰った
ブランデーの3年ものじゃ。
香りを確かめた後、口に含む。
ほほう、2年ものより香りが強いのに、舌触りは柔らかい。
舌の上で転がしてから喉に流し込む。
すると心地良い刺激と芳醇な香りが鼻に抜けていく。
これは良い。
まさに絶品じゃ。
これが5年もの、10年ものとなっていけば、どうなるのか。
このことだけでも、アレックス殿とは末永く付き合っていかねばならんのう。
いっそ、遅まきながらも我が領でもブランデーの熟成をやってみるか・・・。
いや、ドワーフが何年も上質の酒を保存なぞ出来るわけがないな。
職人たちが盗み飲みしてしまうのがオチじゃ。
これからも彼に協力して優先的に譲ってもらえるようにしよう。
彼奴の様子では、スプリングやダンパー以上の隠し玉が
あるに違いない。
それらを実現させるために、わしらの手を借りたいと言ってくるはずじゃ。
そのためにも、わしらは技術を磨き、進化させていかねばならん。
彼の言っておった『水車動力』なども取り入れていくべきじゃろう。
などと考えておると・・・
「父上、遅くなりました」
「うむ、先にやっておるよ」
息子のアレッハンドロが食堂に入ってきた。
もう50歳にもなろうというのに、『侯爵を継ぐのはもう少し待ってくれ』
などと言っておる。
困ったものじゃ。
まあ、気持ちはわからんでもないが・・・。
「父上!その酒、なかなかのものに見えますが・・・?!」
「ああ、今日来た客の土産じゃ」
お!さっそく気が付いたか。
さすがはドワーフの男じゃのう。
「よろしければ、一杯いただけないでしょうか?!」
「お前は風呂上りには、冷やしたエールじゃないのか?!」
わしがそう言うと、すねたような目をするアレッハンドロ。
くっくっく・・・、たまにはイジワルをしてやってもよいじゃろう。
とは言っても、あまりいじめるのもダメじゃな・・・。
ドワーフの男は酒の恨みを忘れんからのう。
「わっはっは、すまんすまん、冗談じゃ」
そう言ってブランデーを注いでやる。
ブランデーを飲んだアレッハンドロの表情が見る見るうちに変わる。
「父上、この酒は?」
「ふっふっふ・・・、ホリデイ領産のブランデー3年ものじゃ」
「これがっ!!」
驚くアレッハンドロにアレックス殿のことを話す。
「アレックス殿は、なかなか見どころのある若者でな。シャルロッテを
嫁にやろうかと思っておる」
「え?!!」
わしの言ったことに固まるアレッハンドロであった。
※フライデイ侯爵王都屋敷
アレッハンドロ・フライデイ
「今、何とおっしゃいました?」
思わず父に聞き返す。
「シャルロッテをアレックス殿に嫁がせようかと考えておると
言ったのじゃ」
「シャルの父である私に一言もなくですか?!」
「これこれ、声を荒げるんじゃない。食事は楽しく食べるものじゃぞ」
と父が言うが、落ち着いて何ていられるものか!
「しかし!シャルだって嫌だろう?!」
とシャルロッテに聞いたが、
「いいよ」
「 え?! 」
思わず『いいんかい?!』と娘にツッコみそうになる私であった。




