35 フライデイ侯爵家 その6
※フライデイ侯爵王都屋敷
アレッハンドロ・フライデイ
私はアレッハンドロ・フライデイ、フライデイ侯爵家の嫡男である。
最近、父のギルベルト・フライデイ侯爵が跡を継げとうるさい。
鍛冶を始めて40年、やっとそれなりのものが作れるようになったのに
侯爵なんぞという雑事にかかわっていられるか!
「お帰りなさいませ」
屋敷に帰ると、執事のジュルジュが出迎えてくれた。
「うむ、風呂の用意はできているか?」
今日もよく働いたので腹が減っているが、まずは身体の汚れを
おとさないとな。
ザバ~~~~~ン・・・
ガシッガシッ
頭からお湯をかぶり、全身を洗う。
んっ?!気のせいか、せっけんの泡立ちがいいな。
香りもいい。
おや、この石鹸についている刻印は?
う~ん、どこかで見た覚えがあるんだが・・・。
まあ、いいか。
ザブッ
ふほ~・・・鍛冶で疲れた体に熱い湯が染み込む。
やはり風呂はいい。
そして風呂上りには・・・。
「冷たいエールを頼む」
「はい、旦那様」
食堂に入りメイドにそう言って、席につく。
私以外の家族は全員座って夕食を食べていた。
「父上、遅くなりました」
「うむ、先にやっておるよ」
父がグラスを軽く上げて私にこたえる。
「お帰りなさいませ」
「父上、お帰りなさい」
「お父様、お帰りなさいませ」
「父様、お帰りなさいです」
「うむ」
妻と2人の息子、そして娘がお帰りを言う。
「う~~~む・・・」
父がグラスの酒を飲んだ後、満足そうなうめき声を上げる。
ん?!この香り?!そしてあの色は?!
「父上!その酒は?!!」
「ん?!どうかしたかの?!」
「その酒、なかなかのものに見えますが・・・?!」
「ああ、今日来た客の土産じゃ」
父は何でもないように言うが、私の身体に流れるドワーフの血が
普通の酒じゃないと言っている。
「よろしければ、一杯いただけないでしょうか?!」
「お前は風呂上りには、冷やしたエールじゃないのか?!」
「そ、それはそうですが・・・」
「旦那様、お待たせしました」
そこにタイミングよく・・・なのか、タイミング悪くなのか
わからないが、メイドがエールを持ってきた。
「ほれ、よく冷えておりそうじゃぞ。飲まんのか?!」
と言う父。
今日の父は、いつになくいじわるである。
普段なら逆に『お前も付き合え』と言って酒をすすめてくるのに・・・。
と思いながら父をじっと見ていると、
「わっはっは、すまんすまん、冗談じゃ」
そう言いながらメイドに私用のグラスを用意させ、それに酒を
注いでくれた。
香りを確かめた後、グラスに口をつける。
こっ!これはっ!!
口の中で酒をころがした後、飲み込む。
はあぁ~~~・・・
この鼻を抜けていく香り・・・すばらしい!
「父上、この酒は?」
「ふっふっふ・・・、ホリデイ領産のブランデー3年ものじゃ」
自慢げに答える父。
「これがっ!!」
まだ国王様に献上された以外、ごく少数の上級貴族しか手に入れて
いないという噂だが・・・。
「ということは、これを土産にくれた者は・・・」
「うむ、ホリデイ辺境伯家嫡男アレックス殿じゃ」
アレックス・ホリデイ・・・
噂では、『ホリデイの改革者』と呼ばれるほどで、神童とも
言われているというが・・・。
「いったい何の用で来たのですか?」
「うむ、それについてお前にも少し手伝ってもらおうと思うのじゃが
それは後で話す」
「他にもあるのですか?」
「ああ、なかなか見どころのある若者でな。シャルロッテを嫁に
やろうかと思っておる」
「え?!!」
今、父は何と言った?!!
一瞬、父の言ったことの意味がわからず、固まる私であった?!!




