34 フライデイ侯爵家 その5
というわけで、まずはスプリングの製法を説明する。
「なるほど!!鉄線を鉄の棒に巻き付けるのではなくて、
逆に棒の方を回転させるのか!!」
感心する侯爵様。
「まあ?!!そんな機械を一年がかりで・・・」
カンデラス様が驚く。
1年というのはスプリングを量産できるようになるまでにかかった
期間なので機械そのものはもっと早くできたんだけどね。
「ふ、ふん。そんなに時間をかければ、それぐらい誰でも思いつく」
ライムンド様、たまには素直に感心してくれないかな?!
「じゃが、そんな機械が必要なら、わしらがスプリングを作るのは
当分、先のことになるのう・・・」
侯爵様が残念そうに言う。
「馬車用のは無理でしょうが、もっと細くて小さいスプリングなら
出来ると思いますよ。ドワーフのバ・・・剛力なら、手動で
いけるかと・・・」
そう言いながら俺は、人力用のスプリング製造機の簡単な図を
描いていく。
あぶな~・・・、〇カぢからって言いそうになったよ。
「こんなかんじかな?!」
棒の端に取っ手をつけて台に固定した図に説明を書いただけの
簡単な絵だけど、わかるよね?!
「なるほど、巻き付ける棒に取っ手をつけて人力で回すのか」
「しかも、棒にネジを切ってあるので、回すのと一緒に棒が
突き出され一定間隔でスプリングが巻かれると・・・」
うん、よかった、俺の拙い絵でもわかってくれたみたいだ。
こういうのが上手に描けるスキル、欲しいなぁ・・・。
「よかったら、いろいろ試してみてください。スプリングは
サスペンションだけではなくて、いろいろな用途がありますので」
「ほう、例えばどういうものじゃ?」
「すみません、そこまで話すと長くなるので、そろそろ、お願いしたい
サスペンションの改良部品の話をしたいんですが・・・?!」
ドアクローザー、要するにドアを開けると自動的に閉まる装置とか、
トランポリンやホッピングなんかの遊具とかを思いついたけどね。
「おっと、そっちもあったんじゃったの。忘れておったわい」
いや、忘れないでくださいよ。
こっちとしては、これのほうがメインなんだから。
そう思いながら、俺は用意していた設計図を広げる。
そこには2重になった筒にピストンが組み込まれた図が書いてあった。
「これは?!!」
「中に入っている油がピストンによって移動してと空気を圧縮して
衝撃を和らげる仕組みで、ダンパーといいます」
ショックアブソーバともいうが、ここではダンパーで統一しておく。
「ほほう」
「うちの職人では空気をきちんと密封することが出来なくて
作れなかったのですが、ドワーフの技術なら・・・と」
「ふむ・・・」
「筒を2重にする意味は?」
「油だけ、空気だけじゃダメなのか?」
「ピストンの材質は?」
侯爵様とライムンド様の目の色が変わり、いろんな質問をしてきた。
どうやら、職人魂に火がついたようだ。
つか、そんなに質問されてもわかるか~~い!!
なんとか記憶をたどって、ここまで思い出しただけでも褒めてくれ!
フライデイ侯爵屋敷を出た俺は、質問責めのおかげで帰りの馬車の中で
グッタリするのでありました。




