31 フライデイ侯爵家 その2
「おじい様!いきなり何をおっしゃるのです?!」
ライムンド様が言うが、
「あら、いいことじゃない?!シャルはこの少年を気に入ってる
ようだし」
カンデラス様は侯爵様に賛同する。
いや、俺を放置して3人で決めないでほしいんだが。
でも、下手に口出しすると藪蛇になりそうだし・・・。
「ライムンド、こやつがこっち側の人間だということは、お前も
わかっておるじゃろう?!」
こっち側?!・・・何のことだ?
侯爵様の言うことがわからない。
ちなみに、ここで言った『人間』とは、エルフやドワーフなども
含んだ人型の知性生物のことである。
狭い意味での人間の場合は、『人族』や『人種』と言うことが多い。
「そ、それは確かにそうですが・・・」
ライムンド様、わかるんかい!!
「まあまあ、とりあえず屋敷に戻りましょう。
話は、そこでゆっくりすればいいわ」
「それも、そうじゃな。では、戻るか・・・」
だから、俺を無視して話をすすめるなよ!!
なんてことを言えるはずもなく、俺たちは侯爵屋敷の応接間に
移動したのであった。
メリンダはシャルロッテに誘われて彼女の部屋に行った。
お供にリリーをつけておいたので、何かあったら知らせがくるだろう。
かわいい妹とシャルロッテのキャッキャウフフが見れないのは
残念だが仕方がない。
あとでリリーに様子を聞こう。
俺のお供は執事モードのゴンじいだ。
ゴンじい、王都にいるときはこれで通すらしい。
王都屋敷には別の庭師がいるしね。
侯爵様、ゴンじいを見て何か言いたそうだったが、ゴンじいが
目配せしたので何も言わなかった。
そのことに気づいたけど、俺も何も言わないよ。
俺は気配りのできる男だからね。
「坊ちゃん、これを・・・」
そう言ってゴンじいが俺に『瓶2本包み』を渡す。
俺は受け取った包みを、
「お口に合えばいいのですが」
と言いながら、侯爵様に差し出す。
「ほう、何かな?!」
包みを開く侯爵様。
「おう!これは!!」
嬉しそうな声を上げる侯爵様。
「うちの領で作っているブランデーです。
今回は、2年ものと3年ものをご用意しました」
うん、やっぱりドワーフに対しての挨拶の品といえば酒だよね。
「うひょひょ~!これが噂の3年ものか!!」
3年ものの瓶を持ち上げて変な叫び声を上げる侯爵様。
おいおい、さっきまでの威厳はどうしたんだよ?!
「ヘイゼル、グラスを用意しろ!」
侯爵様がメイドに言うが、
「ダメですよ!」
カンデラス様が止める。
「今から大事な話をするのに、お酒を飲んでどうするんですか!」
「う・・・、い、一杯だけ・・・」
「お義父様!!」
「うぐぐ・・・」
侯爵、あきらめきれない様子だが、瓶をカンデラス様に奪われる。
「なっ!何をするんじゃ!!」
「夕食のときにちゃんと出して差し上げますから・・・。
ヘイゼル、しまっておいてちょうだい」
「はい、奥様」
メイドはカンデラス様から瓶を受け取り退室する。
「ああ・・・」
名残惜しそうにメイドを見送る侯爵様。
「ごめんなさいね。ほんと、ドワーフの男ったら・・・」
カンデラス様が俺のほうに向きなおって言う。
「いえいえ、そんなに喜んでいただけたなら、嬉しいです」
と言いながらも、2年ものだけにしておけばよかったと、ちょっと
後悔する俺であった。




