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30 フライデイ侯爵家 その1

「初めまして、ホリデイ辺境伯家嫡男アレックスです」

「初めまして、ホリデイ辺境伯家長女メリンダでございます」


「おうおう、よく来たのう。わしがフライデイ侯爵家当主、

ギルベルトじゃ」

「ようこそいらっしゃいました。シャルロッテの母のカンデラスです」

「兄のライムンドだ」


社交デビューから2日後、俺はフライデイ侯爵家を訪ねていた。

シャルロッテが訊いてきたスプリングの件だ。


出迎えてくれたギルベルト・フライデイ侯爵はシャルロッテの

父方の祖父である。


「メリンダちゃん!」

「シャルちゃん!」


シャルロッテがメリンダに抱きついてきた。


メリンダは来なくてもよかったんだが、シャルロッテに会いたいと

付いてきたのだ。


社交デビューパーティーで交代で俺と踊った後、仲良くなったらしい。


うんうん、シャルロッテはいいだからね、メリンダと仲良く

してくれたら俺も嬉しいよ。


「これこれ、シャルちゃん、ちゃんとご挨拶なさい」

カンデラス様がシャルロッテに注意する。


「はい、お母様」

素直に返事をしたシャルロッテは、


「アレックス様、メリンダ様、ようこそおいでくださいました。

シャルロッテにございます」

スカートのすそを両手で少し持ち上げ、見事な挨拶を決める。


上位貴族の娘なんだからこれぐらいのこと出来るのが当たり前なのだが

普段とのギャップがすごい。


まあ、それも彼女の魅力の1つなのだが。


そして俺とメリンダも、きちんと真面目に挨拶を返した。


「来て早々じゃが、まずはサスペンションというものを見せて

くれんかの?!」

待ちきれないというように、ギルベルト侯爵が言う。


侯爵ではあるが、ドワーフの鍛冶・大工の総元締めとしての顔も

持つお方なので、やはり興味があるようだ。


「はい、どうぞ」

俺はそう言って、うちの馬車の方に一緒に行く。


そして、スプリングとサスペンションについて説明する。


「ふむふむ・・・」

ギルベルト様は、俺の説明を聞きながら、しゃがんで馬車の

下部を覗き込み、車体を腕で押したり引いたりして揺れの

具合を確かめる。


「乗せてもらってもいいかの?!」

「もちろんです・・・あ、その前にこれぐらいのいらない木の棒は

ありませんか?」

俺は手ぶりで欲しい棒の大きさを示す。


「これでいいでしょうか?」

「はい、ありがとうございます」

侯爵家の使用人が持ってきた棒を受け取り、中庭の道の端に置く。


そして、侯爵様、カンデラス様、ライムンド様と一緒に馬車に乗り

侯爵屋敷の中庭を一周する。


「ふむ、だいぶ違うのう」

「ほんと、うちの馬車にもつけたいですわ」

「ふん、人族にしてはなかなかやるな・・・」


ライムンド様、挨拶のときもそうだったけど、話し方にけんがあるな。

何か人族について思うところがあるのかな?!


「おめの言葉、ありがとうございます。ただ、まだ問題が

残っておりまして・・・」

「問題?!」

「はい」

そう言った後、俺は小窓を開けて御者に、さっき置いた木の棒を

わざと車輪で踏むように指示をだした。


ガタンッ!


当然、衝撃がくるがそれはサスペンションで軽減される。


しかし、スプリングが伸び縮みするため、それが収まるまで

馬車の車体は上下運動を繰り返す。


「上下動が続くのが、おわかりでしょうか?!

この上下動を収めることを減衰げんすいと言いますが、その減衰げんすい

すばやくなめらかに収束させるさせる仕組みが必要なのです」


「これよりさらに乗り心地がよくなるの?!!」

カンデラス様が期待に満ちた声で言う。


うん、普通の馬車の乗り心地はひどいからね。その気持ちわかりますよ。


「はい、実は仕組みはもう出来ているのですが、技術的な問題で

実現できてないのです。それを協力していただきたいと」


「なるほど・・・」

侯爵が俺をじっと見ながら言う。

「アレックス殿、お主はシャルをどう思う?」


え、何でいきなりシャルロッテのことを?


「いいだと思いますが・・・」


「婚約してくれと言ったらどうする?!」


「「「 え~~~~っ!!!! 」」」


侯爵の言葉に俺ばかりか、カンデラス様とライムンド様まで

驚きの声を上げるのであった。

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