18 社交界デビュー その4
ウィークリイ王国国王グリフィス・サンデイ、35歳。
昨年即位したばかりの比較的若い王である。
即位してまもないし、戦争はもちろん特に大きな出来事もないので
まだ王としての評価といえるものはない。
金髪で茶色の瞳、顔つきはサッカー選手のベッ〇ムに似ている。
間違いなく男前である。
「そこまで近づくか・・・さすが武門で名高い辺境伯家の嫡男、
豪胆であるな」
国王様が楽しそうに言う。
国王様までの距離はおよそ5m余り。
俺の判断ではギリギリの近さのはずだ。
「畏れながら申し上げます。勝手ながら、何度も
『近くに』とおっしゃられる手間を省かせていただきました」
と建前上の理由を言う。
落ち着いて考えたら、別にあせる必要はなかった。
国王様や王妃様が俺やメリンダに対して不利益になるようなことを
する理由がない。
わざわざ近寄らせてそんなことが起きたら、『ゲーム本編も始まって
ないのに、もう悪役令嬢の弾劾イベントかよ?!!』とツッコめるので
ちょっと嬉しいかもしれないが・・・。
いや、嬉しくないな。
まあ、俺たちを気に入らないなら、他の多くの者たちにするように
『うむ』とだけ言っておけばいい。
わざわざ、お声をかけてくださるということは好意的に接してくれると
いうことだ。
「はっはっは、そうか。いや、わざわざ近寄らせたのは妃が礼を
言いたいとのことなのでな」
国王様が横の王妃様を見ながら言う。
「礼・・・ですか?!」
思わず王妃様に訊ねてしまったが、これはダメだな俺。
こういうときに訊き返すなんて・・・減点1である。
「そうですよ」
王妃様はそんなことを気にせずに微笑みながら答えてくださった。
エウデリケ・サンデイ王妃34歳。
茶色の髪に青い瞳、穏やかで優しい雰囲気の方である。
似た芸能人としては、ナ〇リー・ポー〇マンだろうか? よく知らんが。
「私のいとこであるソフィア・マンデイ侯爵夫人の馬車がオークの
群れに襲われているところ、自らクロスボウを携え騎士を引き連れて
助けてくれたと当人から聞きました。
よくやってくれましたね」
その言い方、間違いじゃないけど、まるで俺が先頭をきってオークと
戦ったみたいな意味にもとれてしまうじゃないか。
ほら、周りからも『あんな子供が』とか『さすが辺境伯家』とか、
ひそひそ話が聞こえてきた。
いや、わざとだな。
王妃様ともあろうお方が、そんなことがわからないはずはない。
わざとそう誤解される言い方をして俺の評価を上げてくれようと
しているのか。
訂正したらお心遣いを否定してしまうことになるから、ここは
乗っておくしかない。
「は、ありがたきお言葉」
こういうときは、余計なことを言わない方がいいだろう。
「しかも、助けてもらった上に、とてもいいものを譲っていただいたと、
私にも分けてくれましたよ」
あ、やっぱりソフィア様から聞いて、献上品に化粧水をお望みに
なられたのか。
「これからも譲ってもらえるのでしょうね?!」
「もちろん、定期的に王妃様に献上させていただきます」
俺の返事に満足そうにうなづく王妃様。
もしかしたらソフィア様を助けた礼よりも、こっちの方が主な
目的かな?!
「メリンダといいましたか、良い兄を持ちましたね」
「はい、自慢の兄にございます」
メリンダが答える。
うんうん、お前も自慢の妹だよ。
「もしかして、その変わったドレスもアレックスが?」
「はい、私のためにデザインしてくれました」
「ほう・・・なるほど・・・」
王妃様がさらに俺を品定めするような目で見てくる。
ううっ、頼むから無茶振りはやめてくれよ。
王妃様は口元に笑みを浮かべ言う。
「いずれ、いろいろと話をしましょう。この場はこのへんで・・・。
下がってよいですよ」
う~~、他にもいろいろねだられそうだなぁ・・・。
知ってる?『ねだる』って『強請る』って書くんだよ。
ほんと、漢字のとおりである。
とか、考えてしまう俺であった。




