17 社交界デビュー その3
俺はメリンダをエスコートして、大ホールの中央に進んでいく。
するとあちらこちらから、『えっ?!』とか『ほう?!』とかいう、
ため息とも驚きとも賞賛ともとれる声が聞こえてきた。
ふふふ・・・我が妹のかわいさ、そしてそれを引き立てるドレスと
アクセサリーを見よ!!
いや~、このドレスには苦労したよ。
メリンダのドレスをどうしようかと母上たちと話しているときに、
日本風の柄にしたら面白いんじゃないかと思いついた。
イメージは、フランスの印象派の画家クロード・モネのラ・ジャポネーズ
『日本衣装を着るカミーユ』だ。
もちろん、あんな武骨な武者の絵じゃなくて、もっとかわいい模様を使う。
何の模様がいいかと皆で相談して、ホリデイ辺境領の特産である花に
することになった。
この季節の草花を染め抜いた生地を縫製し、さらに刺繍をほどこして
模様を立体的に仕上げた。
辺境領の刺繍の得意な女性たちが、『お嬢様のためなら』とがんばってくれた。
ありがとう。
問題は、メリンダが成長期に入っていることだ。(俺もだが)
なので、辺境伯領で仕立て上げるとサイズが合わなくなっている可能性が
あると思ったので、仮縫いまでしておいて、こっちに来て仕上げをした。
ここ数日にやったことで、一番大変だったよ。
まあ、俺が直接やったわけじゃないんだけど。
アクセサリーはメリンダの金髪に映えるように銀細工の髪飾りと
ネックレス。
星や花、貝などをデザインした銀細工に小粒の宝石やガラスが
ちりばめられている。
材料費はたいしたことはないが、手間がおそろしくかかっている。
我が辺境領の職人たち、入魂の一品である。
俺の服装?
俺はメリンダの引き立て役だからね。
なので襟に家紋がついているだけの濃紺で無地の特徴のない礼服に
アクセサリーも家紋入りのカフスだけだ。
「ホリデイ辺境伯家長男アレックスにございます」
「同じくホリデイ辺境伯家長女メリンダにございます」
大ホールの中央まで進んだ俺たちは順に挨拶をする。
このとき、俺は片膝をついていた。
今回は、そこまでの礼儀をしなくてもよいのだがメリンダを目立たせるためである。
観客に、俺が邪魔でメリンダがよく見えないなんてことがないようにね。
ほれほれ、どうだ俺の妹は?!!
かわいくて可憐だろ?!!!
じっくり見るがよい。
「両名、前へ出よ!」
「「 え?!!! 」」
国王様の言葉で俺とメリンダのみならず、会場中の者が驚く。
声をかけられることはあっても、『前に』なんて言われた例はないはずだ。
しかし、
「2人とも、もっと近くに来なさい」
「「 !!!!! 」」
今度は王妃様がおっしゃった。
俺は立ち上がり、メリンダの手を取ってエスコートしながら前に進む。
どれぐらい近づけばいいのか?
近づきすぎては不敬になるし、遠ければ『さらに近くに』と言われて
しまうだろう。
どちらが国王様・王妃様の好感度を損ねないですむのか?!
考えろ!
国王様の意図は・・・?!
自分だったらどれぐらいの距離を望む・・・??
え~~~い!ままよ!!
(注:ままよ[儘よ] 意味:なるようになれ、成り行きまかせだ)
俺は、自分が判断した距離まで近づき礼をする。
メリンダも俺に続き礼をした。
すると、
「ふっふっふ・・・」
「「 ?! 」」
「わっはっはっはっ・・・」
国王様が笑い始めたのであった。
「ええい、ままよ!」は、今ではあまり使われない言葉だと思いますが、
こういう場合には一番合ってる気がして使ってみました。
いかがでしょうか?




