16 社交界デビュー その2
ここは王城の社交界デビューの会場である大ホールにつながる廊下の1つ。
俺たちは、他の貴族の子女とともに列を作って並んでいた。
「トリニティ子爵家ウイリアム殿」
「はい!」
案内係に呼ばれた少年が、大ホールに入って行く。
彼は、そのまま大ホールの中央まで進み、玉座に座る国王様と王妃様に
貴族式の正式な礼をして
「トリニティ子爵家長男のウイリアムにございます」
と名乗る。
余計なことを言うのは基本的に許されない。
それに対して国王様は『うむ』と軽く応えるだけである。
たまに、お言葉をいただける者がいるが、それは身内が功績を上げている
場合などで、当人にも期待していることを意味する。
王妃様は軽く会釈をするだけだ。
そしてウイリアムはまた礼をして、国王様から見て左に進み、他の目通りを
終えた者たちの列に並ぶ。
目通りの順番は家格の低い方からなので、俺たちはもう少し後だ。
「キャンベル伯爵家ペイズリー嬢」
「はい!」
次に呼ばれた女の子が返事をして、騎士にエスコートされて入場する。
女性の場合は基本的に兄弟がエスコートすることになっているのだが、
兄弟がいない場合は、近衛の騎士がその役を頼まれることが多い。
また、近衛騎士というある意味エリートとお近づきになれる機会でも
あるので、兄弟がいても都合が悪いとかの理由で頼むこともあるらしい。
まあ、成功率は低いようだが。
ところで俺たちの前に並んでいる赤毛の少年は・・・。
「チューズデイ伯爵家ライアン殿」
「おう!」
俺たちのすぐ前に並んでいた少年が、元気よく返事をした。
あ、やっぱり。
燃えるような赤毛が特徴的な少年だったので、もしかしたらと思っていたが、
やはり攻略キャラの1人、ライアン・チューズデイであった。
『たそこい』では、熱血漢の体力バカという評価の肉体系キャラだ。
ただ、体力バカと言っても特に頭が悪いわけではない。
他の攻略キャラの水準が高いため、彼らに比較してというだけで、
ライアンの学業の成績は平均ぐらいだったはずだ。
あと、おおらかな性格で細かいことを気にしないタイプなので
バカっぽく見えるというのもあるが、一部の女子にはそこがいいらしくて
それなりの人気キャラだ。
うちのバカ姉いわく、『こんなのじゃなく、こういう弟が欲しかった』。
もちろん、『こんなの』とは俺、『こういう』はライアンのことだ。
俺だって他の姉がよかったわい!!
姉ゆえに人は苦しまねばならぬ!!姉ゆえに人は悲しまねばならぬ!!
こんなに苦しいのなら悲しいのなら、姉などいらぬ!!
というわけで、今、俺の隣には、かわいい妹が微笑んでいます。
とりあえず頭を撫でておこう。
「え?!何ですの?お兄様」
急に頭を撫でられたことの訳がわからず、小首をかしげながら言うメリンダ。
「いや、今日もメリンダはかわいいなと思ってね」
「まあ、嫌ですわ。お兄様ったら・・・」
うんうん、その恥ずかしがるのもかわいいよ。
「ホリデイ辺境伯家アレックス殿、並びにメリンダ嬢」
おっと、順番がきた。
俺とメリンダは返事をして大ホールに入って行くのであった。




