01 お約束
新作です。
よろしくお願いします。
「えっ?!!!」
ずるっ
「わああああっーーーー!!!」
「お兄様ーーー!!!」
「坊ちゃまーー!!」
「アレックス様ーー!!」
ガタガタッ、ドドンッ!!!
なんてことだ・・・。
ほんの不注意で階段を踏み外しただけなのに・・・。
メリンダ・・・僕のかわいい妹・・・
最後に見るのが君の泣き顔なんて・・・
ごめんよ・・・
こうして、僕、ホリデイ辺境伯家嫡男アレックスは死んだ。
享年8歳。
2か月後・・・
「お兄様っ、こっちですわ」
1つ年下の妹のメリンダが坂道を小走りに駆け上がりながら
俺に言う。
金髪青眼、そしてぬけるような白い肌。
紛れもない美少女である。
「メリンダ、ちゃんと前を見ないと転ぶよ」
と俺が注意したとたん、
「きゃっ!」
彼女は小石に躓いてこけそうになった。
「危ないっ!!」
がしっ
「ふ~~~っ・・・」
俺はなんとかメリンダを抱きとめることが出来た。
「だから言っただろ!めっ!」
「ごめんなさい、お兄様・・・」
ちょっと涙目で謝るメリンダ。
うん、かわいい!!
うちの妹が世界一かわいい!!!!!!!!!!!!!
だが、不満がある。
「メリンダ、身内だけのときは『お兄様』じゃないだろ?!」
メリンダの頭を撫でながら言う。
「あ・・・、お・・・お兄ちゃん・・・」
頬を赤く染めながら上目遣いで言うメリンダ。
語尾が微妙に上がっているのがまたいい。
ド~~~~~~~~~ン!!!!!!!!
俺の心の中の富士山が噴火する。
かわいい!!!!!
うちの妹が宇宙一かわいい!!!!!!!!!!!!
むぎゅ~~~~っ
「お、お兄ちゃん、苦しいです・・・」
あ、いかん。あまりのかわいさに、つい抱きしめてしまった。
「ごめんごめん、メリンダがあまりにかわいいから、つい・・・」
「お兄様ったら、いつもそんなことばかり・・・」
ありゃ、また『お兄様』に戻ってしまった。
「がっはっは・・・、本当にお二人は仲がいいのう」
付いてきていた庭師のゴンじいが言う。
本名はゴンザレスだが、俺がそう呼んでいたらそれが定着してしまった。
本人もその呼び名が気に入っているようだ。
「お坊ちゃまも記憶をなくされたときは本当にびっくりしましたが、
それもすっかり回復されて・・・本当によかったです」
メイドのリリーがちょっと涙ぐみながら言う。
そう、俺、アレックス・ホリデイは2か月前に階段から落ちて大怪我をし、
そのショックで一時的に記憶をなくしていた・・・ということになっている。
実際は、身体は確かにアレックスだが、精神は日本の大学生・真白晶だ。
第一志望の大学に合格し、これから大学生活を満喫するぞと
意気込んでいた俺であったが、大学入学後わずか一か月でトラックに
跳ねられ死んでしまった。
志望大学に入ったとたんに死亡・・・うるさいわ!
そして、どういうわけなのか、このアレックスの身体に転生していたと
いうわけである。
当然、目覚めたばかりの俺には状況がわからないし、周りの者たちのことも
知っているはずがない。
そのため医者は俺がショックで記憶をなくしたという判断をした。
だが、周りの者たちの話を聞いていくうちに、俺はこの場所や人々を
知っていることに気が付いた。
『黄昏の聖女と七曜の恋人たち』(トワイライトセイント&セブンラヴァーズ)
略称:『たそこい』という恋愛シミュレーションゲームの舞台の1つ、
ホリデイ辺境伯領とそのキャラクターたちにそっくりなのだ。
俺はどうやらお約束のゲームキャラ転生をしてしまったようだ。