第94魔 『奴隷の首輪』
次の更新は明明後日10月2日(土)よ!
どうなっている?
警備兵は11名じゃなかったのか?
それにこの貴族風の男は誰だ?
次々に疑問が湧き上がる。
だが、そのすべてに、答えは見つからない。
状況を理解する暇もなく、全員が馬車から引き摺り出される。
ボーリも同様だ。
まだ寝ぼけているのか、むにゃむにゃと呟きながら、警備兵に引きずられていた。
馬車を降りたオックスが見たのは、豪奢な庭園であった。
セシウスの街の、中央広場にあるものより豪華な噴水だ。
そして大きな石像が3体。
髭面の男性、太った男性、そしてほっそりとした女性を模している。
「さぁ、こいつらに首輪を」
貴族風の男が言った。
首輪だと?
「抵抗するなよ」
警備兵の一人が、オックスの後ろから話しかけた。
言われるままじっとしていると、オックスの首に冷たいものが当たった。
カチリと音を立てるそれが、首輪だった。
拘束具、ではないな。
なんだ、これは。
いったいなんのために?
その答えは、すぐに判明した。
「それは特別製の一品です。くれぐれも抵抗しないように。抵抗すれば……」
貴族男が右手を掲げる。
人差し指にある指輪が光を放った。
「がぁぁぁぁぁッ!」
激痛がオックスを襲う。
首輪から発生した電撃であった。
たまらず膝から崩れ落ちる。
一緒に来た獣人たちも叫び声と共に、膝をついている。
一人平気そうなボーリが、激痛に苦しむオックスを見て、助けに動こうとした。
それをオックスは視線で制した。
この大人数の前で、ボーリの正体を明かすわけにはいかない。
頼むから目立つような真似はしないでくれ。
オックスの意図を察したのか、ボーリは思い出したように苦しみだした。
「うぅぅぅっ……辛いっすぅ……苦しいっすぅ……」
なんという大根芝居。
まぁ元気そうで何より。
「このように痛い目に遭いたくなければ、決して我らに逆らわないように」
貴族風の男が、せせら笑うように言った。
「ダビドン様!」
馬車の車内から声が聞こえた。
「どうしました?」
貴族男が言った。
こいつの名はダビドンか。
「車内の座席に細工がしてあり、このようなものが」
重装の警備兵が、馬車の車内から何かを持ち出した。
それは車内に隠していた、オックス等の武器であった。
バカな。
細工は完璧だった。
めんどくさい手順を踏まなければ、絶対に開かないはずだ。
知らないものが、この短時間で発見できるはずがない。
「いけませんねぇ。このように危険なものを、我らが来賓館に持ち込むとは」
貴族男――ダビドンの皮肉めいた言葉に、狐族のオスカリゲスが吠えた。
「おい、人族! お前知ってやがったな!」
「オホホホ、当然でしょ。下等人種の考えることなど、すべてお見通しです」
「どうしてだ! どうしてオレ達のことがわかった!」
「ボクには知り合いが沢山、た~くさんいるのですよ。例えば――」
ダビドンがニヤリと笑い、言葉を続けた。
「アーヴィング商会とかね」
「なっ!」
狐族オスカリゲスは絶句した。
つまりは、ダビドンの言葉通りなのだろう。
獣人の潜入者たちはアーヴィング商会の者だった。
しかも商会内部には、ダビドンの内通者がいる、ってことだ。
「ちなみに、使えるとしても魔術は使おうとしないほうがいいですよ。その首輪が魔力を感知すると作動する仕組みになっています。また痛い目に遭いたくはないでしょう?――ん?」
ダビドンの目がヌメリと光る。
その対象となる人物へダビドンが近づき、クイッと顎を持ち上げた。
「ほほう、これはこれは。わざわざこんな極上品を差し出してくれるとは、アーヴィング商会は太っ腹ですな」
ダビドンの気に入った相手とは、
オックスの隣で膝をついた大根演技の美少女――悪魔ボーリであった。




