表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/109

第93魔 『不測の事態』

次の更新は明明後日9月29日(水)やなぁ。

「坊主、名前はなんてぇんだぁ?」


 意外に揺れの少ない馬車の中、熊の獣人男性が話しかけてきた。

 おっとりとした口調だ。

 その身体はでかい。

 体重でいうと、オックスの三倍はありそうだ。


「……」オックスは無言。


「ちょっとやめなさいよ。余計な詮索はしない約束でしょ? 坊や、気にしなくていいからね?」


 犬の獣人女性が言った。

 白い毛皮に覆われた顔は、人間に近い風貌だった。

 それに、討伐受付嬢のジョイスーとは違い、犬族特有の訛りがない。

 おそらく、混血種で、人間の血が濃いのだろう。


「ケッ、名前くらい聞いたっていいじゃねぇか。相変わらず犬族ってのはケチ臭ぇな」


 狐の獣人男性が言った。

 オックスを見つめる目には猜疑心が宿る。


「はぁ、わかったわよ。じゃあ名前だけよ。私の名はイロベル。この作戦のリーダーをやってるわ。よろしくね、坊や達」と犬族女性。


「オレっちは、オスカリゲス。まぁ覚えなくてもかまわん」と狐族男性。


「おいは、ソリブガブガっていうんだぁ。よろしくなぁ」と熊族男性。


「……」無言なのは鳥族の男性(恐らく)だ。


「彼は言葉が話せないの。鳥族にはそんな人が多いのよね。ちなみに彼の名はカレーニルよ」

 と犬族女性のイロベルがフォローした。


 犬族女性が、イロベル。

 熊族男性が、ソリブガブガ。

 狐族男性が、オスカリゲス。

 鳥族男性が、カレーニル。

 よし、覚えた。


「……俺の名前はオックスです。よろしくお願いします」


「よろしくね、オックス坊や」「よろしくなぁ」「ふん、足引っ張んじゃねぇぞ、人族」


 さて次はボーリの自己紹介か、と隣を見ると。


「ぐぁぁぁっ……むにゃむにゃ」


 なんと悪魔の少女は涎を垂らして眠りこけていた。

 話では12年間眠っていたはずなのに、まだ眠るのか。

 あまりに気持ち良さそうに眠っているので、起こすのは忍びない。


「彼女の名はボーリです。なんかすみません……」


 なぜか謝るオックスであった。

 オックスが主人の筈なのだがな。


 それからオックスはイロベルから話を聞いた。

 オックス等が座っている座席には細工がしてあり、複雑な手順で開くらしい。

 中に武器が隠してあるとのこと。


 オックスが試してみたが、仕掛けは解けなかった。

 というか、どこに仕掛けがあるかすらわからない。

 すごい技術だ。

 ルビーはこういうパズルを解くのが好きなんだよな。

 あいつなら、解けるかも知れんな。


「おっと、そろそろだぞ。みんな静かにしろ」


 イロベルが言うと、馬車が停止した。

 屋敷の門に着いたようだ。


「こんな夜中に大変だな。ほれ、差し入れだ。一級品だぞ」


 御者役の男が、門番の一人に酒を手渡しているらしい。(犬のイロベルからの説明)

 あとは、門番が屋敷の楼閣に合図を送って、結界を解く。

 そうすれば、晴れて馬車での潜入が果たせるわけだ。


「うほ! こりゃいいや! 冷えた体を温めるにはちょうどいいな! それじゃ、()()の確認をさせてもらおうか」


「いいぜ。今日の品は()()()ばかりだ。腰を抜かすなよ?」


 馬車の扉が開かれて、御者役の男と、二人の門番がオックスらをジロジロと、まさに品定めした。


「もういいだろ。早くこいつらを屋敷に届けて、帰りてぇんだよ」


 御者役がそうせかすと、門番の一人が、なんと馬車に乗り込んできた。


「な、なにしてんだ!?」


 御者役が思わずと言った感じで叫んだ。

 バカか。

 そこで狼狽えてどうする。

 オックスは舌打ちしたい衝動をかろうじて抑えた。


「俺ぁちょうど交代の時間なんだよ。ついでに乗っけてってくれ」


 乗り込んだ門番がオックスの隣に腰を下ろした。


「そ、それならオレの隣に座りゃいい!」


「いいって、いいって。ほら、早く出発しろよ」


 御者役が犬族女性イロベルに視線で助けを求める。

 イロベルは無言で頷いた。

 逆らうなって意味だ。


「そ、それじゃ……」


 御者役が扉を閉めて、鍵をかけた。


「結界が解けたぞ。早く入れ!」


 外から門番の声。


 そして再び馬車が動き出した。


 車内に緊張が走る。

 全員の表情が強張っている。(爆睡中の一名を除き)

 その中でも、門番の男が一番緊張しているように見える。

 奴隷と同じ車内とは言え、どうしてそこまで?

 まるでイヤイヤ乗っているようだ。

 だがこいつは、自ら進んで乗ってきたよな?

 男の様子に、オックスは違和感を覚えた。


 ボーリは相変わらずいびきをかいて、就寝中だ。

 頼りになるのか、ならんのか、よく分からない悪魔だな。


 しかし、まずい。


 作戦では、このタイミングで手枷足枷を外す予定だった。

 そして車内に隠していた武器を手にするはずだったのだ。

 門番の男がいたのでは、不可能だ。

 枷の鍵はイロベルしか持っていない。


 今この瞬間、男を気絶させるか?


 そう思い、正面に座る狐族男性オスカリゲスへ視線を送った。

 オックスへあからさまな猜疑心を向ける彼こそが、一番信用できると踏んだからだ。

 オスカリゲスは、すぐにオックスの意を解した。

 思ったより優秀な男だ。

 リーダーの判断を仰ぐべく、オスカリゲスが、犬族女性イロベルへ顔を向けた。

 すると、なんとイロベルは首を横へ振ったのだ。

 これには、狐族男性オスカリゲス、熊族男性ソリブガブガ、鳥族男性カレーニルが困惑の表情を浮かべた。


 は? どういうことだ?


 このままじゃ、武装どころか枷も外せない。

 作戦どころではなくなってしまう。 


 全員が困惑し、無言のまま、やがて馬車は停止した。

 そして、扉が開き、オックスらは愕然とした。


「ようこそ、我らが来賓館へ」


 出迎えた貴族風の男が、そう言った。

 その後ろには、武装した警備兵が20人以上待ち構えていたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品を読んで頂きありがとうございます!

少しでも気になった方は、ブクマと作品の評価をしてくれるようれしいです!(☆☆☆☆☆をタップするだけです)

★★★★★で、応援していただけるとすごく励みになります!

ブクマも超うれしいです!>

script?guid=on
 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ