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第86魔 『ギャスガル・ランベルグ』

……次の更新は明後日9月16日(木)だ。

 ギャスガルは用心深い男だった。


 自分に怯える情けないガキ相手でも、慎重に行動する。

 だから今日、寝込みを襲った。

 眠っているガキの頭に、剣を突き下ろしたのだ。

 完璧な仕事だった。


 にもかかわらず……。

 そこまで慎重に事を進めたにもかかわらず、逆にギャスガルが追い詰められてしまった。


 なぜこうなったのか。


 オックスを足で押さえつけたまま、ギャスガルは考えた。


 ∮



 このガキは猫をかぶって、オレを油断させてやがったんだ。

 だから警戒のレベルを誤っちまった。


 クソッ。


 こんなに手強いと分かってりゃ、もっと警戒しておくんだったぜ。

 寝込みをクロスボーで撃っちまうなり、油を撒いて火をつけるなりすりゃよかったんだ。


 そうすりゃ、あのクソッタレからもらった〝魔眼〟なんぞ使うこともなかったってのによ!

 クソッ、クソッ、クソッ!


 ……まぁいい。まぁいいさ。


 結局は、オレ様の勝ちなんだ。

 このガキが散々馬鹿にしたオレ様のな!

 ん?

 そうじゃねぇな。

 それどころじゃねぇぞ。


 なんと、こいつは例の赤ん坊だってオマケ付きだったんだ。

 つまりは、オレ様の大勝利ってわけだ!


 クックック。

 やっぱりだ。

 やっぱりこいつは、奴と繋がってやがった。

 オレの目を奪いやがったあの野郎――グリスタン・グラヴェリアムの野郎とな!


 つまり、こいつはグリスタンの弟子ってわけだ。

 クックック。

 あいつは悔しがるだろうな。

 弟子であるこのガキの生首をみせつけてやりゃあよ。

 いや。

 もしかしたら、あいつぁ喜ぶかもしれんな。

 ()()()()()()()()ってな。

 まぁどっちでもいいさ。

 どのみちあいつぁ殺すんだ。


 だが、あいつは手強い。

 くやしいが、剣の腕はあいつの方が上だ。

 あれから13年経ったが、いまだに当時のあいつに勝てる気がしねぇ。


 あのクソ真面目野郎は、どんな場所だろうと鍛錬を怠らねぇだろうぜ。

 つまり今の奴は、昔より強い。


 だがな。

 だが今のオレには〝魔眼〟がある。

 グリスタンのクソ野郎を殺すためなら、寿命の5年や10年くれてやるぜ。


 見てろ、クソ野郎が。


 さてと。

 なら、どうするか。

 まず決定事項として、このガキの首は落とす。


 次に、あの女のガキのところへ行こう。

 そして、犯してやる。

 このガキの首を見せつけながら、何度も、何度も、何度も、何度も……。


 あいつは特別だから、他の女のように雑には扱われまい。

 つまり、オレ様が初モノをいただくわけだ。 

 クックック。


 そう考えると、あのメスガキはツイてやがるぜ。

 特別待遇じゃなきゃ、すぐにでも変態どもに提供されてるだろうからな。

 その分、オレがかわいがってやろう。


 だが待てよ。

 あの依頼主は邪魔しやがるかな?

 ふん……間違いなく、するだろうな。


 あいつはメスガキに、本気で惚れ込んでやがるからな。

 まったく、心底気持ちの悪い野郎だぜ。

 邪魔するなら、それでもいいさ。

 それならそれで、あいつもぶちのめすまでだ。

 ぶっ倒れたあいつの目の前で犯すのも、また一興さ。


 飽きるまで犯したら、グリスタンの居場所を聞くとしよう。

 そしてグリスタンの首も落とす。


 それから、オレ様は首を二つ持って、カストリージョ様のところへ行けばいい。

 そうすれば、オレ様は返り咲けるはずだ。

 クソみたいな民衆に尊敬され、恐れられる筆頭騎士様としてな。


 あぁ、これでもう、デブ女(ビュアナ)の言いなりにならなくてすむ。

 オレが奴の手を借りずに騎士になったら、どんな顔をするか、今から見ものだぜ。


 おっと、少し考えすぎちまった。

 さっさと終わらせて、メスガキを犯しに行くとしよう。



 ∮



 オックスの首を落とすべく、ギャスガルは剣を振り下ろした。


「あばよ」


 剣がオックスの首に触れる寸前、だが、それは起こった。

 眩い光がギャスガルを襲ったのだ。


「ぐはッ!」


 尋常ではない眩さに、ギャスガルが目を閉じる。

 その耳に聞こえたのは、ドカッ、と剣が床に刺さる音だった。


「なんだ! どうなった!」


 光にしょぼついた目を必死に開く。

 と、そこにオックスの姿はなかった。


 ゾクッ!


 ギャスガルの背筋に悪寒が走った。

 まるで、凶暴な魔獣のいる檻の中に裸で入れられた気分だった。

 そんな絶望的な感覚がギャスガルを襲った。

 その絶望の(みなもと)が、すぐ後ろに、いる?


「ひっ!」


 床に刺さった剣を抜き、ギャスガルは、前方に飛びながら振り返った。


 そこにいやがるのは、どんな化け物だ!


 ガタガタ震える剣を構え、必死に暗闇へ目を凝らすと……いた。


 そこにいたのは、相変わらず身動きの取れないオックス。(どうやって移動しやがった!)

 そして、オックスを抱える、虎じま頭の()()だった。

 いや、少女ではない。

 少女の形をしたナニかだ。


 形容し難いナニか。

 あえて例えるなら、それはまるで〝恐怖の塊〟であった。


「だ、だ、だ、誰だ、テメェ! なんなんだ!」


 全身の震えを抑えるなんて、とてもじゃないが無理だった。


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