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第80魔 『獣の見る夢3』

前回の終わり方が中途半端すぎたので、予定変更して投稿するっす。

次の更新は9月8日(水)っす。

「クックック、約束ってのは契約だ。オレは契約したことは守る。商売人だからな。――ほらよ」


 金髪デブが何かを投げた。

 それを青髪女が受け取ると、獣の首の輪っかをカチャカチャといじった。


「ちょ、ちょっと待て! いま外して大丈夫なのか!? オレを襲ったりしないだろうな!?」


 金髪デブの言葉を青髪女は無視した。

 ん? いま、デブはなんて言った?


『まさか……』


 獣は大人しくなされるがままにした。

 すると……

 ガチャリ。

 なんと、首輪が地面に落ちた。

 獣の動きをずっとずっと制限してきた忌々しい首輪が外れたのだ。

 とんでもない開放感。

 そして湧き上がる積年の恨み。


 よし、これで……。


 恨みを清算すべく、すぐに金髪デブへ身体を向け、歩を進めた。


「わーっ! ダ、ダメよ、虎さん! そんなことしちゃ、役人さんに殺されちゃうわ! それに変なもの食べたらお腹壊しちゃう!」


 だが、抱きついてきた青髪の女に、止められてしまった。

 別に金髪デブを食おうなんて思っちゃいないのに、物騒なことを言う。


 歩みも報復も、獣は諦めた。

 この女の言葉には、どうも逆らえない。


 今まで散々殴られた借り返そうと思ったのだがな。

 ま、いいか。


「ひっ……」


 金髪デブは足早に去っていった。

 せめて一噛みしたかったのに、残念だ。

 まぁ、やつの足がガクガク震えていたのを見て、少しだけ溜飲が下がったがな。

 ん? この臭いは小便も漏らしてやがるな?

 情けないやつだ。


 金髪の姿が見えなくなり、青髪の女は、優しい拘束から獣を開放した。

 そして赤い髪の女に近づき「イエイッ!」とふたりでハイタッチをしたのだった。


「やったぁ! ついに、今日から君はあたし達の仲間よ! くーっ! ふっかふかのモッフモフだぁ!」


 赤い髪の弓女がギュッと首筋に抱きついてきた。

 意外なほどに力が強く、正直苦しい。

 が、嫌な気分ではない。


「こらこら、アンナマリー、お前の馬鹿力で締め上げるんじゃねぇよ。――それじゃ改めてよろしくな、虎さんよ」


 黒髪の大男が頭を撫でてきた。

 赤髪の首絞めを止めてくれたことに、獣は感謝した。


「さぁ、帰りましょ。私たちの家へ」


 青い髪の女が、スラリとした手を差し伸べてきた。


 獣はゆっくり歩くと、その手に頭を擦り付けた。

 それは意図せず行った服従の意思表示であった。

 なんとも言えない高揚感が、全身を駆け巡る。


『タハハ。もうあんたらには逆らえないっすねぇ』


 グルグルと獣が発した言葉の意味は、大好きな三人に届いただろうか?



 ∮



「ねぇ、ふたりとも。さっそくだけどさ……」


 歩きながら赤髪女が言った。


「ん? なんだ、アンナマリー?」


「どうしたの、アンナ?」


「この子の名前決めちゃわない? 今ここでさ」


「そうだな。いつまでも〝虎さん〟は、かわいそうだ。レオノールは、なにか案があるか?」


「こら、ミゲル! どうしてあたしに聞かないのよ!? ちなみにあたしの案は〝聖獣あんなまりーさん;〟ね!」


「却下だ、バァカ。そもそもお前にはネーミングセンスが感じられない。その弓の名前はなんだっけ?」


「〝聖弓あんなまりーちゃん12号〟よ! これのどこが悪いってんのよ!?」


「バァカ。最悪だろ。どうして全てにお前の名前が入れるんだ。自分好きにも程があるぞ。もし子供が生まれたら、絶対にそんな名前つけるなよ? まぁ、お前を嫁にもらおうなんて物好きが、この世にいるとは思えんがな」


「んだとぉ! じゃあミゲルなら、どんな名前をつけるのよ!」


「俺は自分にセンスがないことを知っている。わきまえてるんだ、お前と違ってな。だからレオノールに任せる。どうだ? なにかあるか?」


「うん、実はね……こっそり考えてたの」


「へぇ? どんな名前?」


「聞かせてくれ。レオノール」


「この子って、なんていうか、ものすごく食い意地が張ってるじゃない? で、お肉どころか骨まで食べちゃうのよね。ボリボリと。だから、この子の名前は……」



 そのとき、唐突な目眩が、獣を襲った。


『な、なんすか、これ……』


 意識が薄れていく。

 これは……夢から醒めようとしているのか。


『せめてもう少し……あと少しだけ……あーしの名前を……この人がくれる、あーしの名前を……』


 そして、視界がぼやけて行く中、青髪の女主人の声を聞いた。


「〝ボーリ〟……〝ボーリ〟なんてどうかしら?」

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