第79魔 『獣の見る夢2』
ここは、また夢の中か。
くそっ!
襲撃に備えて警戒していたはずなのに!
なのに、右肩がどんどん熱くなって、耐え切れないほど眠くなって……。
嫌な予感がする
早く起きないと。
ん? 俺は鎖に繋がれてるのか?
この体は……また例の獣の体か。
つまりは、以前見た夢の続きだろうか?
だが、それにしちゃ体がでかい。
続きだとしたら、あれからいったい、どれほどの時間が……。
そのとき臭いがした。
神経を逆撫でするような〝イライラする臭い〟だ。
『この臭いは……またあいつっすか』
すぐに、金色髪の人族の男が現れた。
予想通りだ。
いけすかない奴との再会である。
初めて会った時は子供だった。
今では大人に成長しているように見える。
縦にも横にもだ。
「おい、餌だぞ。まったく、どんだけ食えば気がすむってんだ」
手に持った肉を放り投げてきた。
悪臭に鼻が曲がる。
獣はその腐肉に見向きもせず、小太りな男を睨んで歯を剥いた。
以前とは違い、人族の言葉が理解できた。
つまり、言葉を学習するほど時間が経ったということか。
『グルルルルッ!』
声、姿、臭い、こいつのすべてが気に入らなかった。
鎖を外せ。
こいつに目にモノを見せてやる。
そのときバタバタと複数名の足音がした。
走ってこちらに向かってきている。
『この音は……』
獣が唸り声を止めた。
足音のする方へ頭を向ける。
やがて現れたのは三匹――いや、三人の人族だった。
三人は三人とも、巨大な獣を恐れなかった。
躊躇なく、鎖の範囲内へ、獣の牙が届く範囲へ、足を踏み入れたのだ。
獣が三人を襲うことは、だがなかった。
この三人からは、それぞれ違ったいい匂いがする。
それを嗅げなくなるなんて、とんでもないことだ。
そのうちの一人、青い髪の人族の女が、不用意に獣へ近づいた。
こいつからは、いつも〝落ち着く匂い〟がする。
「ふふふ、こんにちは、虎さん。調子はどう?」
そういって獣の頭を撫でた。
言われて獣は気づいた。
以前に負っていた全身の怪我が、すべて治っている。
痛みはない。
普通に歩けるみたいだ。
ただし、鎖の許す範囲のみ、だが。
痛みどころか、女に撫でられた箇所が気持ちよくてたまらない。
我知らず、喉がゴロゴロと鳴ってしまう。
「アルベルド! またこんな腐った肉を食べさせようとしたの!?」
「クックック、それの何が悪いんだ、レオノール。自分のペットをどう扱おうが、俺の勝手だろ?」
「もうお前のものじゃない。ほら」
黒髪で背の高い人族が、金髪デブに何かを投げ渡した。
こいつからは〝元気の出る匂い〟がする。
「ミゲル、この金は……どうしたんだ?」と金髪デブ。
「あたしが稼いだんだよ! 〝聖弓あんなまりーちゃん12号〟でな!」
赤い髪の人族の女が、手に持った弓を掲げて言った。
こいつからは〝ワクワクする匂い〟がした。
こいつは、以前の夢では会っていないやつだった。
なのに、こいつの声や姿は、無性に懐かしい感じがする。
まるでずっと一緒に育ってきたような……。
「今日までアンナマリーと狩りをしてたのよ。おかげであなたの提示したお金を用意できたわ。さぁ、約束通り、虎さんを解放してもらうわよ。まさか、そんな約束知らないなんて言わないわよね?」
青い髪の女が、威圧するようにそう言った。
(後書き)
次の更新は9月7日(火)です。




