表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/109

第76魔 『ファルネラとマヌエラ』

次の更新は9月1日(水)だにゃ

「さぁ、どんどん食べてちょうだい! おかわりは、まだまだ沢山あるわよ!」


 現れたのは、宿屋『馬のたてがみ亭』の女将ファルネラだ。

 歳の頃は30代中頃。

 立派な体躯の肝っ玉母さんである。

 両手いっぱいの肉料理を、広いテーブルにどんどん並べていく。


「ファルネラさん、そんなこと言っちゃったら、オックスったら信じられない程たくさん食べちゃうわよ?」


 ルビーが女将に耳打ちをする。


「いいの、いいの! なんたってあんたらのおかげで、当分肉には困らないんだからね! でも本当によかったの? あんなに大量の肉をもらえるなんて、なんだか申し訳なくてねぇ」


「いいんですよ。素材を取った余りのお肉なんだもん。ねぇオックス」


「そうだな。どうせ売り物にならなかったんだ。それに女将さんに美味しく料理してもらえれば、獲物達の供養にもなる」


「そう。じゃあありがたく頂戴するわ。その代わり腕によりをかけて料理を振る舞うからね。おかわりがいる時はベルを鳴らしてちょうだい」


 そう言ってファルネラは部屋を出て行った。


「何回か泊まったけど、この部屋に入るのは初めてね」


 ルビーが大皿の料理を少しずつ取り分けて、自分の前に並べていく。


 広い部屋だった。

 真ん中に8人がけの大きなテーブルがある。

 ルビーとオックスは、入り口近くに向かい合って座っている。


「特別な部屋なんだろうな。お偉いさんがお忍びで泊まった時に使ったり」


 オックスは、ルビーの前に並んだ皿をじっと見つめている。


「え? それって、()()()()特別扱いってことじゃない! なんだか偉くなった気分だわ! ……それじゃ、全能神様、いただきまぁす! もぐもぐ」


 ()()()()()……あたし()じゃないんだな。

 別にいいけど。

 それに、お祈りの言葉は超適当で、まるで顔見知りなご近所さんへの挨拶だ。

 シスター・リーチに見られたら、腫れ上がるまで尻を叩かれるだろうな。

 帰って、シスター・リーチが元気になったらチクってやろう。


 その罰当たりルビーは、皿の料理を端から平らげていく。


「あれだけ肉を提供すれば、扱いが丁寧にもなるさ」


 毒味が終わった料理を、オックスが自分の皿に山盛り取っていく。


「全能神ローレンシアに感謝を。――いただきます」


 そしてオックスの長い長い食事が始まった。



 ∮



「もう無理! これ以上一口だって入らないわ! マヌエラちゃん、あとは任せた! うっぷ」


 そう言ってルビーは口を抑えた。

 食事を初めて3時間。

 とうとうルビーが降参となったのだ。


「驚いた……ものすごく沢山食べるのね。見ていて気持ちがいいわ。っていうか、その体のどこに食べたものが入ってるの? まるで魔法みたいだわ」


 ルビーの隣に腰掛けた少女――マヌエラが、大きな目をまん丸にしている。


 マヌエラはこの宿屋の娘で、女将であるファルネラの娘だ。

 年齢は14才。

 ルビーより一つ上だ。

 母と違いほっそりとした身体。

 キリッとした意志の強そうな眉が特徴の、気立のいい娘だ。


 以降は、彼女がオックスの毒見役(内緒かつ承諾なし)となる。


「さすがにこんなに食べたら、お店としちゃ大赤字になっちゃわない?」と、ルビー。


「大丈夫よ。それどころか感謝してるわ。あなた達のおかげでお肉に不自由することがなくなったんだから。最近、物価がものすごく上がっちゃって困ってたの」と、マヌエラ。


「そういえば、今って帝国からのキャラバンが来てないんでしょ? そりゃ物価も上がるわよねぇ」


「へ? 帝国からの? 今もずっと来てるわよ?」


「そうなの? だってタンタル森林は……」


「ルビー!」


 オックスはルビーの言わんとする言葉を止めた。


「あ……な、なんでもないわ」


 危なかった。


 タンタル森林が魔獣で封鎖されている話は、禁句なのだ。

 討伐依頼の契約書の契約内容でも、そのことは口外禁止となっている。

 理由はわかる。

 噂が広まると、高名心に駆られた血気盛んで無謀な若者が、死に急いでしまうからだ。


 だからこそ、Bランク以上の魔獣討伐は、掲示板で依頼できないようになっている。

(そう言った理由で、嫌な受付嬢に依頼しなければならなかった)


 己の力を見誤ると、死ぬことになる。

 そして己の力を見極めるには、それなりの経験が必要なのだ。

 前途有望な冒険者保護の観点から、口外禁止について、致し方ない処置と言える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品を読んで頂きありがとうございます!

少しでも気になった方は、ブクマと作品の評価をしてくれるようれしいです!(☆☆☆☆☆をタップするだけです)

★★★★★で、応援していただけるとすごく励みになります!

ブクマも超うれしいです!>

script?guid=on
 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ