第52魔 『オックスの秘密』
「これって、魔石だよね? それもこんなに沢山!?」
魔石とは、魔獣から取れる魔力の籠もった石で、主に魔道具の原料となる。
多くの商人が、喜んで高価で買い取りをしてくれる、貴重な代物だ。
それが袋一杯に入っている。
「あぁ、魔石は安く見積もって金貨20枚程だな。
現金と合わせると全部で金貨50枚相当だ」
「き、き、き、き、き、きん、きん、きん、きん、きん、キンキンキンキンキン……」
「落ち着け、小市民! 深呼吸だ!
ゆっくり深呼吸をするんだ! スーハー、スーハー」
「スーハー、スーハー、スーハー、スーハー……」
「どうだ? 落ち着いたか?」
「落ち着くわけないでしょ! バカオックス!
な、なんで、なんで、なんでよ!?
グスタンさんの手伝いって、どうしてそんなに給金がもらえるわけ!?」
「そのことなんだが……」
「なによ!? 嘘なの!? グスタンさんのところで働いてるって、嘘だったの!?」
「嘘じゃないさ。だが、手伝いをしてたわけじゃないんだ」
「ど、どういうこと?」
「俺はな。魔獣を狩ってたんだよ。一人でな
その金は……グスタンさんに、魔獣の素材を買い取って貰った代金だ」
「へ? 魔獣を?」
「魔獣を、だ」
「ひとりで?」
「ひとりで、だ」
「はぁっ!? いいいい、いつから……いつからよ!?」
「三年前だ」
「え? 三年前ってことは……」
「俺は9歳だな。ちなみにペンタンの所有者は俺だ。
おととし、グスタンさんから譲り受けたんだ」
「きゅ、9歳から? それにペンちゃんを!?
ペンちゃんはグスタンさんに貸して貰ってるって……。
騎竜ってめちゃくちゃ高いのよ!? いったい、いくらで買ったのよ!?」
「大負けに負けて、金貨20枚まで値を下げてくれたよ。
実に良い買い物だった。ハハハ」
「金貨20枚……あのさ、オックス……」
「ん? 怖い顔してどうした?」
「半年くらい前に、アーヴィング商会の行商キャラバンが村に来たじゃない? そのとき髪飾りが売ってたの覚えてる?」
「ん? あぁ、そういえば売ってたな」
アーヴィング商会とは、昔から馴染みのある商業ギルドである。
主に、西の大陸にあるグラプディミス帝国と、オックスらのいるアボガドロ王国との交易で成り立っている商業ギルドだ。
オックスの住むジルコ村は、アボガドロ王国にあり、陸路の交易宿場町として利用されていた。
その際に、商会の好意で、商品の一部を販売する市が立つ場合がある。
ちょっとしたお祭りみたいなものだ。
ルビーが言っているのは、そのことだ。
タンタル森林が閉鎖されている今では、キャラバン等の交易は止まっているが……。
「じゃあ、あたしが貯金全部をはたいても、あと銅貨2枚足りなくて、
泣く泣く諦めたのも知ってるわよね?」
「泣く泣くっていうか、お前あのとき、実際にワンワン泣いてたじゃねぇか。
泣きながら、シスター・リーチに、土下座までしたのは驚いたよ。
しかし、最後まで銅貨2枚を出さなかったシスターも筋金入りだよな。ハハハ」
「ハハハ、じゃないでしょ、このドケチックス!
こんなにお金を持ってるなら、銅貨2枚くらい出しなさいよ!」
「ド、ドケチックス? 仕方ないだろ。
事情を話せないんだから、当然金のことも秘密だったし」
「はぁ……もういいわ。今責めたところで、手遅れなの。
あの素敵な髪飾りが、誰かの別の人の手に渡ってしまった事実は変わらないわ。
――それで、どうやって魔獣を狩ってたのよ? まだ隠してる秘密があるんでしょ?」
「驚くなよ……。《オウル、ヘムアイア、プロパディス》――《武具錬成陣》」
オックスが不思議な呪文を唱える。
すると、オックスの足下に、直径1メルほどの青い魔方陣が浮かび上がった。
かと思ったら、魔方陣から4本の金色の剣がヌッと現れて、プカプカと宙に浮いている。
「へ? な、なにこれ!?」
あんぐりと口を開けるルビー。
オックスは、なぜか辛そうな表情を浮かべ、重い口調で答えた。
「……これが、『ずっと隠したかった俺の秘密』だ」
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