第35魔 『大天使と大悪魔』
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魔人が消えると同時に、ジッと動かない虎の姿が薄くなり、やがて消えていった。
そして【怠惰】のダームスタと【嫉妬】のシーボーギが、ほぼ同時に消えた。
【色欲】マイトネと【傲慢】ラボホージは、【強欲】のハッシへコクンと頷くと、目を閉じ、天を仰いで、やがて消えていった。
そのハッシも、すぐに後を追うように消え去った。
「これから、どうなると思う?」
従魔で1人残った【憤怒】ドブニが、悪魔ブラセオに問うた。
「さぁ? 我が輩には、皆目見当もつきません」
「そうか」
ドブニの身体が、次第に透明になっていく。
ドブニはここに来てようやく構えを解いて、立ち上がる。
悪魔ブラセオがドブニを見つめて、いつになく真面目な顔で言った。
「オックス君を頼みましたよ」
ドブニは少し迷い、
「……それは、わたしが決めることだ」
憮然と言い残して、そして消えた。
ヤレヤレといった顔で立ち尽くす悪魔ブラセオに、近づく影が、いや、光があった。
鎧装備を解除した、大天使バークリウムだ。
傷は癒え、羽も本来の色を取り戻している。
前置き無しに、バークリウムが問う。
「どうして、わたしを止めなかったのですか?」
「どうして、最初から現れなかったのですか?」
ブラセオが質問を返した。
しばし見つめ合う、大天使と大悪魔。
そして、どちらからともなく、両名がフッと笑う。
「お互いに」
大天使が言った。
「ええ、お互いに、わがままな上司を持つと苦労しますな」
大悪魔が困り顔で笑った。
「さて、久しぶりに会えたのでお茶でも……とはいきませんわね」
「ですな。なんといっても我が輩達は〝敵同士〟ですから」
「フフフ、そうでしたわね」
「ところで、魔人を封印した〝札〟はもしや?」
「ええ、全能神謹製【忘徳の聖封】です」
「やはり、ですか。――それで、封印を解く〝鍵〟は?」
「あら? わたし達は〝敵同士〟ですのよ?」
「ふむ、なるほど……。では、古い友人としてなら?」
「フフフ、相変わらずズルい人ですわね。うーん……。では、今から、わたしは独り言を言いますから、絶対に聞かないでくださいまし。ーーコホン」
大天使は顎に手を置いて、小首を傾げると、わざとらしく眉根を寄せた。
「やれやれ、魔人君の力は予定通り封じることができましたわ。ですが、もし彼が【混翼の七魂】を入手してしまったら、どうしましょう? あの魔人が復活するかと思うと、身震いしてしまいますわ。本当に困りましたですわぁ。あっと、そろそろ、お暇しなくては。――では、ごきげんよう、さようなら」
自称〝独り言〟を言い終えると、大天使がフワリと飛び上がる。
後ろの空間へ、吸い込まれるように消えていった。
「【魔人誕生】に【亡徳の聖封】それに【混翼の七魂】ですか。……まったく、どこまでが〝予定通り〟なのでしょうね?」
1人残った大悪魔は、まるで誰かに聞かせるように、盛大な溜息をついた。
~第一翼・完~
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これにて第1章終了です。




