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第27魔 『誤算』




「オックス君ッ、我が輩の加護を与えますッ! 従魔への命令を取り消しなさいッ!」

 

 オックスの耳に、悪魔ブラセオの声が届く。


「おっと、そうはさせません」


 天使フェルミンが、オックスの喉を強打した。


「かはッ」


「くふふふ、これで〝命令の解除〟はできませんね」


 口を歪めて笑うと、天使はオックスを投げ飛ばす。


「クッ……」


 オックスはなんとか立ち上がり、天使を睨み据える。


 薄ら笑いを浮かべた天使は、平然とそれを見返した。


「大天使バークリウム様より賜りし、この神器を、まさか使うことになるとはな」

 

 天使の左手に、小さな機械が現れる。


「さぁ、神器《悠久の檻》よ。――今こそ、その力を示せッ!」


 カチリと、機械のボタンを押す。


 瞬間、こちらに突進する【暴食のボーリ】の動きがピタリと止まる。

 いや……止まったのは、ボーリだけではない。

 悪魔ブラセオも、その周りの悪魔達も――天使フェルミンとオックス以外の時間が、全て止まっている。


「これで邪魔は入りません」


 パキ、パキ、パキ、パキ……。


 天使が右手を高く掲げると、空中に氷の槍が4本現れる。


「よくも――」


 天使の整った顔が、みるみる醜く歪んでいく。


「よくも、よくも、よくも、よくもぉぉぉぉッ! よくも、大天使バークリウム様をッ! あの可憐で偉大な、慈愛に満ちた、大天使バークリウム様を侮辱してくれたなぁぁぁぁッ! ゲスで、粗野で、野蛮で、不潔で、無知なゴミクズの分際でぇぇぇぇッ! お前らゴミ虫は、黙って、地べたに這いつくばって、糞でも喰ってればいいんだよぉぉぉッ!」


 目を見開き、口角に泡を立てながら叫ぶ姿は、まさに狂人そのものだった。

 そもそもオックスは、大天使バークリウムについて、ひと言も発していない。


 これが〝天使〟なのか、とオックスは深く息を落とす。


 ――こんなに醜い女が天使とはな。


 人間の方が、よほど美しい、とオックス思う。

 オックスの脳裏に、ある女性の怒っている姿が浮かんできた。


『もう! オックス様ったら! また朝食を抜いたんですか!』

 

 それは、腰に手を当てプンプンと腹を立てる一番弟子のリウムであった。


 人間オックスが天使を嘲るように笑う。


「わ、笑ったな……またわたしを、バークリウム様を、笑ったなッ! この下等な人間がぁッ! 喰らえぇぇぇッ!」


 ザシュッ!


 氷の槍が、オックスの左足を貫く。


「よくもッ」


 ザシュッ!

 右足を貫く。


「バークリウム様をッ」


 ザシュッ!

 左肩を貫く 。


「侮辱したなッ」


 ザシュッ!

 右肩を貫く。


 4本の槍を受けて、なおも立つオックスを、天使は見やる。

 落ち着きを取り戻したのか、歪んだ顔が、再び均整を取り戻した。


 今更ながら威厳に満ちたふうに、天使は言う。


「オックスよ。最後に言い残すことはありますか?」


 オックスは、震える顔を上げた。

 激痛に耐えかねたように、うめき声を何度か上げる。

 やがて、辛うじて聞き取れる言葉を、潰れた喉で小さく発した。


「くたばれ……〝淫乱天使〟」


 オックスの掠れ声に、天使の顔が、またも盛大に歪む。


「最後まで減らず口をッ!」


 宙に浮くと、両手を頭上へ掲げた。


「《ナフトゥール、ナフトゥール、トロフェノール、パノール》――聖なる炎よ。清浄なる力を持て、神の怨敵を滅ぼせッ」


 天使の頭上に、直径2メルもの、青い炎の珠が現れた。


「魂の欠片まで滅せよッ! ――神の裁き《聖炎審判》ッ!」


 両腕を振り下ろす。

 炎の蒼球が、オックスの身体を直撃した。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」


 消えることのない炎が、オックスを包む。

 焼きごてを押し当てたような激痛が、オックスの全身を襲う。




 ――くそッ、これでおしまいか……



 オックスは己の最後を悟った。

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