第21魔 『奥義、無限剣舞』
オックスを中心とした青い魔方陣が、半径2メルで展開される。
陣のそこかしこから金属製の剣が、幾多も現れる。
「所詮人間とあなどる者の技が……その努力の積み重ねがどれほどのものか、とくと味わうがいいッ! ーーハッ!」
オックスが剣の1つを掴むと、天使に向け、放った。
「ふっ、こんなおもちゃで……」
天使が余裕の薄笑いを浮かべる。
バフッ!
その眼前で、剣が爆ぜた。
「なッ!?」
濃い煙幕が天使を覆い、オックスが疾走する。
「喰らえッ!」
「くッ!」
視界ゼロの中、声の方向へ、天使が防御障壁を展開。
ガインッ!
だが、天使への衝撃は背後だった。
「後ろだとッ? いつの間……」
天使が振り返る。
そこで見るのは、障壁に弾かれた無人の剣だ。
「どこを見ている?」
「しまっ……」
背後の攻撃はオックスの囮だった。
急ぎ前方に向き直る天使。だが遅い。
本命の攻撃。オックスが天使の足へ剣を突き立てる。
ギィンッ!
今度も障壁に阻まれた。
切っ先は天使に届かない。
足にも障壁か! くそっ! 障壁の隙間は、どこなんだ!
オックスは再び距離を取る。
「……無駄ですよ。どんな攻撃も、わたしの身体に届くことはありません」
煙幕が晴れるころ、落ち着き取り戻して、天使は言った。
オックスは、冷静に状況を分析する。
(この自信はなんだ? 障壁の隙間など、存在しないというのか?)
「そうか。ならば、これはどうだ?――《アニリン・リノール・ピロガロール》」
詠唱とともに背後へ飛ぶと、右手の指二本を額に当てた。
気を集中して、詠唱を継続する。
「我、蒼天に活殺の万剣を配すッ、其は我が敵を穿つものなりッ――活殺自在ッ!《蒼天万剣》ッ!」
雹ッ! 雹ッ! 雹ッ! 雹ッ!
錬成していた幾多の剣が、一斉に飛び立つ。
剣は空中に散開すると、天使へと向きを変えて、制止した。
「攻撃を受けた防御障壁は、刹那の間その場に固定されて、修復はされぬ。――さて、あなたの障壁は、この連続攻撃をいつまで耐えきれるかな?」
バッ!
オックスが額の指を、天使へと向ける。
「これはッ」
天使が声を上げた。
足下に魔方陣が浮かび、天使は足先からズブズブと沈み込む。
「くッ」
飛び立とうとした時には、太ももの半分まで埋まっていた。
硬度を取り戻した床は、天使を捉えて離さない。
オックスは、それを見て取ると再び詠唱を開始した。
「《キシレン・グリシン・ジクロベンゼン》」
両手を高く上げ、さらに詠唱する。
「子曰く、忠の剣は無尽なりッ、義の舞は無限なりッ。ゆけッ!―― 剣戟無尽ッ! 奥義ッ《無限剣舞》ッ!」
両手を振り下ろした瞬間、空中の剣が一斉に発射された。
ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
オックスが吼える。
魔方陣から、剣が次々に錬成されて飛び立つ。
数え切れないほどの剣が、動けない天使に襲いかかる。
ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!
絶え間ない爆音が、1本の旋律となって鳴り響く。
尽きることのない剣は、延々と天使に降り注いだ。




