第八話 腹ぐ……ユニオン貴族遂に動く!
大和帝国 帝都航空 国際ターミナル
ユニオン王国より来た名門貴族アークライト家の貴族令嬢キャロル・アークライトは『大和帝国』に到着していた。黒髪と和服と洋服がミックスした服装が特徴な大和人が主な割合を占めるなか、中世ヨーロッパの貴族令嬢が着る様な白いドレスを身に纏い金髪なキャロル・アークライトは良くも悪くも帝都航空では目立っていた。
「ここがインペリアルヤマトですか……東方の国家はユニオンを含めたヨーロピアンとは違う独自の文化形態と聞いていましたが、空港内を見る限りはユニオンと変わりはない様に思いますね」
「お嬢様はヤマトは初めてなのですか?」
「そうですね。ヨーロピアンの国々はお母様と国際交流として訪れましたがヤマトは初めてですね」
アークライト家お抱えのメイドの質問にキャロルは答える。ヨーロピアンとは、白人種が多数を占める西側大陸の名称であり、惑星『アース』列強上位の『ユニオン王国』や新鋭列強の『神聖ガリアン帝国』は、この西側大陸のヨーロピアンに属している。
なお『大和帝国』は、黄色人種が多数を占める東大陸国家より少し離れた島国を領土とする海洋国家である。
「アークライト家のご令嬢のキャロル様でございますか?」
黒スーツを着こなした数名の女性達がキャロルに挨拶をする。
「ええ、そうですが、そう言う貴女達は?」
「失礼いたしますお嬢様。私はアークライト家より先遣として派遣された者達です。迎えの車はすでに用意していますので、どうぞ此方へ」
「感謝します」
空港の外に待機している三台ある中の一台の日本製の車に乗り込むキャロル。日本製の車は自動車先進国である『アメリア合衆国連邦』や『神聖ガリアン帝国』を遥かに凌駕する性能と乗り心地の良さもあり世界中で人気がある。しかし、あまりに自国との性能差に開きがあり過ぎる為に、列強国は自国の自動車産業が潰れる事を恐れて本来ならば有り得ない程に高い関税をかけており、日本製の車は列強国では一部の富裕層にしか浸透していないのが現状であるが、今では日本製の車を所有することが王族や貴族のステータスとまでなっており、庶民の間でも憧れとなっている。
「話は党首様より聞いていると思いますが、キャロル様の『婿殿』に、ニホンの男性を迎え入れる事を考えています」
「ええ、ヤマトに行く前にお母様から聞いています」
隣の席に座る黒スーツを来た女性より『天馬高等学園』の日本人男性二人の資料をキャロルは渡された。
「8日間の滞在で判断しかねますが、二人のニホン人男性は女性に対して嫌悪感を感じていないそうです。更にヤマト政府より渡された支給金の浪費も最低限度であり、自制心も強い様ですね」
「それは本当に素晴らしい理想の『男性』ですね。『我が国』の男性達とは大違いです。早く会うのが楽しみです」
キャロルは微笑みながら『天馬高等学園』に留学生として滞在する二人の男性の資料を読みながら答える。アークライト家としても下手に高い出費や扱いが難しい自国の男性よりも、惑星『アース』の女性が理想に近い日本人男性を婿として迎え入れる方が良いと判断していた。実際にキャロル自身も貴族であるため政略結婚も止む無しと思う事もあるが、彼女も一人の女性としては理想の男性と結婚をしたいと思っている。彼女にとっても今回の『大和帝国』の留学は願ってもないチャンスでもあった。
ーーー。
『大和帝国』 帝都秋桜 総合デパート『大福』
「お、コイツは美味いな!」
「でしょ山崎君!このデパートの中にある喫茶店『イナリ』の自慢のあんみつだからね」
『ユニオン王国』の名門貴族のターゲットにされてるとは知らずに現在山崎は学園の授業が終わった放課後に僕っ子の築島穂乃果とデパートの中の喫茶店で二人であんみつを食べていた。側から見れば二人きりのデートの様に見える為に店内にいる女性客と女性店員は悔し涙を流しており、中にはあまりの悔しさのあまりに血涙を流す勢いのある女性までいた。
だが二人はそんな嫉妬を気にしないであんみつを堪能していた。
「まった二人とも」
「よお、お目当ての本は買えたか?」
「うん、お目当ての大和の歴史本に推理小説が買えたよ」
そこに白浜と、白浜の付き添いで天宮桜と春日部志野の3人が2人に合流した。
「とりあえず目当てなもの皆んな買えたみたいだな」
「そうだね。僕達も二人に混ざってデザートを食べようか」
「……賛成」
「はい!」
3人も2人の席に混ざりデザートを注文する。山崎と穂乃果が注文したあんみつを志野が同じまあんみつを注文して、白浜と桜はハニーシロップ入りのホットケーキを注文した。それから5人は喋りながらデザートを食べており、山崎に続いて白浜という破格の美形少年も混じる事になり、楽しそうに青春を謳歌している三人の天魔高等学園の女子生徒達に対する嫉妬は更に増した。
「男性二人と……クソ!」
「青春謳歌しやがって……」
「け!」
と、こんな感じに羨ましい&自分達が男性と青春を謳歌出来なかったのに……あんな学園小説の様な展開!羨ましい!と。そのため桜、穂乃果、志野の三人に嫉妬せずにいられない女性達であった。
「このあとどうする?」
「お互いに目当ての品は手に入れたしな」
「なら山崎君。この近くにボーリングとビリヤードのアミューズメント施設があるからそこにいかない」
「お、いいな。ボーリングなんて日本でラウ○ドワンで地元の友達と行ったきりやってないからな」
「僕はボーリングもビリヤードもやった事ないけど大丈夫かな?」
「……志野が教える問題ない」
「わ、私も少しは分かりますよ白浜君!」
「よし、次はボーリングとビリヤードに決定!」
穂乃果の提案に賛成と呟く山崎。五人は喫茶店を後にしてアミューズメント施設に向かう事を決定した。なお、お会計で全て自分が払おうとした山崎と白浜であったが、男性に全てを払わせるのはダメと拒否した三人組で、ならワリカンにしようと山崎が提案したが、それでもと遠慮ガチになったが、山崎も白浜も気にしないでと言って、喫茶店の支払いはワリカンとなった。
なお、喫茶店の客と店員達は、あんな内外全てが完璧な理想な男性二人と楽しく過ごす穂乃果、桜、志野の三人組に更なる嫉妬を覚えて、デパートで藁と釘を大量購入したとか何とか……。