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第六話 ユニオン・ガリアンの事情


ユニオン王国 王都アルビオン アークライト家


歴史を感じさせる広大な土地に立つ大きな屋敷。ユニオン王国の中でも影響力が強く王族とも繋がりが深い、代々と『ユニオン王国』を支えて来たアークライト本家が所有する屋敷の一室にアークライト家のご令嬢と、それに付き従う従者3人が一歩下がって立っていた。


「キャロル。貴女を一週間後にヤマトの名門高に留学生として入学させます」


キャロルと呼ばれるユニオンの白人種特有の金髪が特徴の貴族令嬢は、自分の母親に言われた事に驚く。


「お母様。なぜ私がヤマトに?」


「察しが悪いですねキャロル。それでもアークライト家の令嬢ですか?ヤマトは世界中で注目を集めて貴族・平民問わずに話題となっている国です。貴女がそのヤマトに留学生として出向く……この意味がわかりますね」


「いえ、お母様。ヤマトに行く意味はわかります。ですがヤマトは現在、男性国ニホンの留学生を受け入れて国全体で良いにしろ悪いにしろ過敏になっています。男性留学生がいる時期にヤマトは問題を起こしたくありませんからニホンの男性留学生がいる学校に受け入れを拒否して、今でも受け入れてないと聞いてますが?」


古い歴史があり、名門アークライト家の一員として恥じない貴族令嬢として厳しい教育を受けてきたキャロルも情勢には過敏であり、現状の『ユニオン王国』に対する問題や、世界のあらゆる重要な情報については記憶している。そんなキャロルの問いに16歳という子を持つ親とは思えない美貌がある美魔女のキャロルの母はニヤリと笑う。


「ええキャロル。貴女の言う通りです……ですが情報が少し古いですね。女王陛下の粘りある交渉により、我がユニオンもニホンの留学生がいる学校に留学生を入学させる事ができました」


「それは本当ですかお母様」


「ええ、本当です。ですから貴女はヤマトの名門校であるテンマに行くのです……それと、平静を保っている様ですが貴女も一人の女ですから顔に感情が出ていますよ。貴女もニホンの男性には興味がおありでしょう」


「そ、それは……お母様からニホンの男性の話を聞けば」


顔を赤くして呟くキャロル。


アークライト家は王族の中の信頼の厚い名門貴族。王族の付き添い又は代表として外交官として出向く事もあり、キャロルの母親も外交官として『日本』に行った事もあれば『ユニオン王国』に置かれている日本大使館の役員と会談した事もある。『ユニオン王国』の『一般的』な男性を知っている貴族達からすれば『日本』の男性は優しく紳士的という印象があり、好評価を得ていた。


『日本』の政治家達からすれば『ユニオン王国』はまさに繁栄して世界を支配していた『イギリス』を思わせる為に下手な対応ができない……というより国交を樹立させるのに高圧的な態度を取る事は資源が少ない『日本』からすれば自殺行為であるために冷静に対応しただけなのだが、それを含めても高圧的にならないで対応した事は『日本』や大使館で対応した貴族達からは高く評価され、優しく紳士的なエピソードが貴族・平民問わずに流れて『日本』の男性に対する注目を集めるきっかけともなった。


「何としてもニホンの男性を魅了して我がアークライト家に迎え入れるのです。キャロル……わかりましたね」


「が、頑張ります!」


大国としてのトップの座は失いながらも一度は事実上世界を支配した『ユニオン王国』の影響力は現在も残っており『大和帝国』に先を越されてもタダでは起きない『ユニオン王国』。世界を支配した実績のある国の諜報力は伊達ではなかった。


ーーー。


神聖ガリアン帝国 首都ベルカ ベルカ総統官邸


『神聖ガリアン帝国』は『神聖ガリアン帝国』の前身となっていた旧ゲルガン民主共和国を解体して圧倒的カリスマを発揮して国を掌握し、経済・軍備をガドラム・ヒドラ総統を中心とした政権により復活を遂げた現在最も勢いのある列強国である。かつては列強としての地位を失い、国としては餓死寸前まで追い込まれて風前の灯となっていた国になった原因は一言で表せば惑星『アース』の列強国全てを巻き込んだ初の世界大戦の敗北。しかしこの敗北が『神聖ガリアン帝国』という新たな列強国の誕生を意味していた。『旧ゲルガン民主共和国』は世界大戦に敗北した。しかし事実上世界を支配した『ユニオン王国』と、世界大戦前に行われた『大和帝国』との戦争で敗北して列強としの地位は下がったが、それでも陸軍最強と称された『コザック共和国』と工業力世界一の工業国家『アメリア合衆国連邦』と、先ほど挙げた四ヵ国と比べて劣るが隣国であり列強国である『フランソル王国』を相手に苦戦させ、世界大戦で誕生した新兵器や、その新兵器の戦術を効果的に使って戦果をあげたのも『ゲルガン民主共和国』である。


だが、新兵器や他国を上回る兵器や新戦術を駆使して戦うも『アメリア合衆国連邦』の本格参戦により多勢に無勢となって半年後に敗北が決定した。多くの列強を相手に6年近くも戦い『アメリア合衆国連邦』の参戦がなければ世界大戦は10年は続いたと称された『ゲルガン民主共和国』の力を恐れ、最も被害を受けた『フランソル王国』は『ゲルガン民主共和国』の復活を恐れて国家復活がない様な列強国ですら破綻してもおかしくない多額の賠償や、全ての植民地の放棄、国内防衛すら怪しい軍備制限を行おうとした。


これには味方として参戦して賠償金や軍備制限には賛成はした四ヵ国も流石に「こんな馬鹿げた条件をゲルガンが飲むはずはない」として『フランソル王国』に講和条約の修正を求めたが『フランソル王国』は断固として拒否して絶対に無理難題とも言える講和条約を、国際信用を無くす暴挙に出てまでも無理矢理飲ませようと必死になった。最終的に講和条約は『フランソル王国』が納得がいくものになった。しかし、『フランソル王国』の無理難題な講話条約により、味方であった四ヵ国からは「栄光ある古き良き王国は亡くなった」として国際信用はガタ落ちした。それだけでなく『ゲルガン民主共和国』からは絶対に滅ぼすべき怨敵として民衆・政治家問わずに怨まれるきっかけとなった。


実際に敗戦して5年から6年の『ゲルガン民主共和国』は悲惨であり、多額の賠償金や国の財産をほぼ根こそぎ奪った『フランソル王国』の暴挙によって国民の生活は貧窮しており男性総人口の割合も7%から4%にまで下がり社会問題になるまで発展した。復興をしようにも国は借金まみれで返すあてもなく、いつ滅びてもおかしくないまでに国は疲弊したが、こんな状況に国民全体で民主共和政に疑問と不満が爆発して、自分達を救ってくれる圧倒的な絶対的指導者を国民は熱望した。そしてその人物こそガドラム・ヒドラ首相であり、彼女は多くの国民に支持されて合法的に国を動かす国家権力を手にした。


それから彼女が政権を握って事実的な独裁者となった事で『フランソル王国』を中心とした列強の条約をほぼ無視して彼女は経済・軍事回復政策を実施した。当然の様に隣国『フランソル王国』は抗議したが、政権を握る前に列強国に対して周到な根回しをしたガドラム・ヒドラによって列強国はガドラム・ヒドラの政策を黙認した。それから政権を手にして5年あまりで、元々周到な準備を進めていた彼女は列強国として名を馳せた『ゲルガン民主共和国』を世界大戦前以上に復活させた。それから復讐戦と言わんばかりに新世界歴656年に『ゲルガン民主共和国』は自国を窮地に追い詰めた元凶隣国『フランソル王国』に宣戦布告。圧倒的軍事力を手にして油断していた『フランソル王国』は瞬く間に蹂躙されて敗戦を繰り返した。この事態に『フランソル王国』は『ゲルガン民主共和国』相手に連合として参加したかつての同盟国を頼り巻き返しを図ろうとしたがガドラム・ヒドラは抜かりなく、多くの列強国に支持されるように根回しをしていたし、表向きとはいえ『フランソル王国』の国際信用は世界大戦終結後には地に落ちていた事もあり『フランソル王国』傘下の中小国しか味方がおらず『フランソル王国』は孤立無縁となり『ゲルガン民主共和国』に僅か一年あまりで敗北して『フランソル王国』本土は占領され『フランソル王国』傘下の国々も全てを掌握し『フランソル王国』の全ての植民地を吸収して『ゲルガン民主共和国』に取り入れた。


コレにより『フランソル王国』を含めた多くの国を掌握して植民地を得たが『ゲルガン民主共和国』の影響力に入るならば独立も許すとされた植民地の国々にもガドラム・ヒドラのお陰で独立が許され、支配した国からも支持されたガドラム・ヒドラは『ゲルガン民主共和国』を解体して『神聖ガリアン帝国』の建国を新世界歴658年4月22日に世界に通達しガドラム・ヒドラ初代総統として『神聖ガリアン帝国』の政治・軍事のTOPに君臨する事になったのだ。


「どうなさいました総統閣下?」


「ああ、ヘルマン・ゲルハルト君」


黒い軍服を見に纏う白人青年の名はヘルマン・ゲルハルト。我儘な男性が多い惑星『アース』では珍しい清廉潔白と品行方正と職務に忠実である事からヒドラ総統の信頼が最も厚い側近である。


「男性国ニホン……その事で悩んでおいででしょう総統閣下」


「鋭い。その通りだよヘルマン君」


側近に言われた事に機嫌を良くした彼女、ガドラム・ヒドラはニヤリと笑いながら側近に話をする。


「多くの国では理想の男性が大勢いる事ばかりに注目を集めている。だがニホンを味方につければ男性問題解決と同時に莫大な利益を我が帝国にもたらす」


「左様です総統閣下。我が国よりも100年は先を行く技術力に、地球と呼ばれたニホンと同等の技術力を持つ国家相手に小さな島国と微小な資源しかないハンデを負いながらも経済大国として君臨したノウハウを持った経済人や、それを動かす斬新な経済システム。どれも帝国が喉から手が出るほどに欲する宝ばかりです」


「フフフ、やはり君は優秀だよヘルマン君」


「いえ、総統閣下。ニホンに行ったからこそ思い至った理論です」


「そう言えば君は以前に自分の母親と一緒に仕事でニホンに行ったのだな」


「はい、総統閣下」


「それで同じ男性としてどう思ったかね?」


「世界では理想の男性が大勢いるニホンに憧れています。ですがそれ故にニホンは男性に優しくない、男性の人権を守れと非難してニホンの男性待遇の改善を世界は求めていますが、ニホンの男性達の現状こそ帝国に必要と判断します」


「ほお」


この世界の男性の優遇政策に真っ向から反対したヘルマン・ゲルハルトの発言にヒドラは興味がある様に呟いた。


「彼らの社会は男性女性と関係なく実力社会です。多少の身分制度もありますが、ユニオンや、かつての怨敵フランソルの王族や貴族達と比べれば微々たるものです。実力もなく男性優遇という政策に自分達が特別と本気で信じて国に貢献しない家畜以下の存在と、ニホンの男性を価値を比べるまでもないでしょう閣下」


「君も中々に辛辣だな。ニホンと同じ男性政策をするのは無理ではあるが、実力社会に関しては私も同意見だよヘルマン君。だからこそニホンを味方につける。我が帝国の繁栄を永遠とするためにもヤマトと同じ様に我が国の心情をニホン人達に好印象を与えるのだ」


「ハイル・ヒドラ!」


ナチ〇ドイ〇を連想させる敬礼するヘルマン。自国の繁栄を永遠とする為にガドラム・ヒドラ率いる『神聖ガリアン帝国』も本格的に動き出す。



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