第五話 転移国家は国防に必ず頭を悩める&歓迎会
日本国 異世界情報戦略研究部
異世界情報戦略研究部には異世界の情報を集めては日本が異世界でどの様な戦略を提案は主な仕事であると同時に、日本の国防に関しての情報も当然の様に扱っている。そのため陸海空の自衛隊の幹部も異世界情報戦略研究部に出頭して国防に関する会議も当然の様にある。
「地球の頃と違って今は現状の戦力のままで問題はない気がするな……相手は昭和初期の戦力でジェット機を実用化しておらずプロペラ機。更に軍艦もミサイルも実用化していない旧式の戦艦や巡洋艦といった船だぞ」
「そんな呑気な考えでどうする!確かに技術面で勝ってはいる。しかし、もう我が国にはアメリカという頼れる国はない!国防に関しては地球の時以上に戦力を整えるべきだ!」
「だが、これ以上戦力を拡大して下手に現在の近隣諸国に刺激を与えるのも拙いのでは?それに戦力増強と言うが、消滅した在日アメリカ軍の兵器の解析は終了して、陸海空の自衛隊の装備に組み込んでフィードバックは完了している。戦力という点では現状問題ない様な気がするが?」
在日アメリカ軍は消滅したが、兵器類は現有しており、元々アメリカ第7艦隊というアメリカ最強の海軍の駐屯地の一つとして利用もされていた日本では、陸海空とアメリカ軍の最新兵器とコンピュータが運用されていた。その最新兵器の解析は一年弱でおおよそ終わっており、解析が終了した兵器は自衛隊の実戦部隊に配備されている。
「確かに他国の兵器に対抗は可能だ。更に付け加えるなら圧倒する事もできる」
「ならば……」
「しかし、日本単独で対処するならば現時点において兵器の数が圧倒的に足りない!現状の戦力だけでは在日アメリカ軍が抜けた穴を埋めているとは言い難い!自衛隊の隊員の数は増加傾向にあるが、肝心の国防に関する陸海空の機動兵器の数は少なすぎる!」
異世界情報戦略研究部に所属する自衛隊の幹部達は頭を悩める。国防に関しては戦車、戦闘機、駆逐艦といった兵器の数が少ない事は理解している。しかし、まだ異世界転移して一年弱で日本経済の立て直しは進んでいるが、まだ『地球』にいた時のレベルまで回復していないのが現状。そのため自衛隊の予算も地球にいた時と比べて少なく、これ以上の兵器の増産は予算がオーバーしてしまう。
故にどうするべきか頭を悩めていたが、一人の若い自衛隊幹部がある提案をした。
「すいません。現状でこれ以上の増産は不可なんですよね」
「そうだ……予算に限りがあるからな」
「ならばいっその事こと、最新のハイテク兵器ではなく、退役間近の旧式兵器を復活させて数を補うのはどうでしょうか?」
若い自衛隊幹部の言葉に、他の幹部も興味を示す様に反応した。
「理由は?」
「はい。最新兵器の数をこれ以上揃えるのが不可能ならば旧式兵器で数を揃えて補うんです。昔アメリカ軍がF15戦闘機やステルス戦闘機F22の大量配備が不可能であった為に低コストの多目的戦闘機のF16やF35を採用して数を補うハイ・ロー・ミックス構想の様にやればと……」
「面白い発想だ。君の言うことも理解できる。しかし……」
「退役間近の兵器は予備パーツも少なく、既に生産ラインも止めている。いまさら旧式兵器の生産ラインを作って稼働させるメリットかあるかどうか……」
「しかし、少ない予算で直ぐに数を補うならば旧式兵器を復活させるしかないと断言します。それに、旧式兵器ならハイテク兵器よりはノウハウも熟知していますし、部品類も目新しい物がなく揃えるのも簡単ですから即戦力化にマッチしています」
「わかった。上に即時戦力化という項目で一応提出しておこう」
「ありがとうございます」
『異世界情報戦略研究部』で国防を担当する陸海空の自衛隊達は若い幹部自衛官の案を防衛省に提出した。この案は少ない予算で即戦力化を望んでいた防衛省に取っては魅力的であり、何より全てを『地球』の旧式兵器で補うのではなく、既に在日アメリカ軍が残した最新兵器類の中で自衛隊が注目を集めた無人機の技術転用に対する詳細な内容も書かれていた為に防衛省の目に留まり、若い自衛官が出した企画で進む方針となった。
ーーー。
大和帝国 天馬高等学園 第一学生寮第一食堂
「それではコレより、一年三組主催。天魔高等学園に留学生として来ました山崎君、白浜君の歓迎会を始めます!!」
『いぇぇえええいいい!!』
第一学生寮の食堂の一角を一年三組は借りて、山崎と白浜の歓迎会が始まった。中央の席には歓迎会の主役である山崎と白浜が座っており、普段から学校の授業が終わっても家に帰って真面目に勉強して、休みの日は家で静かに読書という生活をしていた白浜は、この様なパーティには無縁であった為に、どうしていいかわからず戸惑い、苦笑いするしかなかった。逆に元々パーティを含めて楽しいイベントが好きな山崎はノリノリで騒ぎまくり「いぇぇいい!!」と周りに合わせて声を出して盛り上がっていた。
なお、他のクラスの女子生徒や学年が上の先輩達も参加したかったが、全ての生徒を第一学生食堂に受けいる人数がいない為に一年三組の生徒達が一丸となって参加を拒否させた。しかし、出会いが少なく、絶滅種とまで言われている女性に優しい男性二人の歓迎会という、この世界の女性達にとって最大のイベントに参加したい女子生徒達は意地でも参加しようとしたが一年三組の女子が撃退した。そのため参加出来なかった他クラスの生徒や先輩達……挙げ句は教員までもが血涙目を流したとか何とか……。
「本当に今年は本当についてる!!」
「男性と殆ど無縁の私達のクラスに男性が二人も……しかもイケメン!!」
「活発で明るい山崎君に!」
「知的で優しい白浜君!」
「何ていう幸運!」
と、テンションMAXで中には嬉しさのあまりに号泣してしまう女子生徒までいるくらである。そんな風に盛り上がって祭り好きな山崎も一緒にテンション上げて盛り上がって踊り、それに釣られて女子生徒達も一緒に踊って更にテンションが天元突破する勢いまで上がり、少しは歓迎会のノリに慣れた白浜だが、元々が物静かな生活であるために席に座って騒いで踊ってを繰り返している山崎達を笑顔で見て、観客として楽しんでいた。
「今回の歓迎会は穂乃果が企画してくれたのか?サンキュー穂乃果!やっぱりパーティーはこうでなくっちゃ!」
「こんなに喜んで貰えて僕も嬉しいよ!」
「あったり前だ!パーティーは皆で騒いで盛り上がらなきゃ面白くないからな!」
ヤッホォォウ!と、叫ぶ山崎。それに釣られて山崎のダンスは激しさを増した。周りも山崎の楽しく陽気な踊りに釣られて笑顔でダンスを始める。普段は真面目で知られてエリートの肩書に自負を持つ高潔なイメージのある彼女達も、山崎のペースに乗せらて騒いでおり、今だけは年相応にパーティーを楽しむ女子高生の笑顔であった。
「どうせならパーティーに参加したい人達も呼んで騒ごうぜ!」
「え、でも食堂に寮の生徒全員は無理だよ山崎君!」
「……無理」
コレに桜が戸惑いながら呟き、ちゃっかり白浜の隣で座っている志野が小さい声で呟いた。
「この寮に広い広場があったろ。そこなら問題ないねえ!」
「で、でも……」
それでも桜は即決できない。厳格をモットとし、エリート集団を自負している天馬高等学園は、本来なら羽目を外し過ぎた馬鹿騒ぎを学生寮で許すほど甘くはない。今回の男性留学生の歓迎会も学園側の特例で許して貰えたのだ。現状の騒ぎでさえ色々とまずいのに、流石にこれ以上規模がデカくなったら学園側も黙ってないんじゃと、天宮は懸念していた。
「良いよ山崎君!」
「ちょっと穂乃果!?」
親友の穂乃果の決定に異議を唱える。
「硬いこと言わない桜。せっかく山崎君と白浜君の歓迎会なんだから楽しく行こうよ!」
わあああああぁぁああ!!!!!
歓迎会を計画したリーダー格の穂乃果は了承して外で見守ることしか出来なかった同じ一年生や先輩たちの感激した声が寮全体に響き渡り、歓迎会は一年三組を含めた寮全体の生徒を巻き込んだ壮大なパーティに様変わりした。
「よっしゃあ!行こうぜ皆んな!」
『おぉぉおおお!!』
山崎のノリに皆が乗せられて笑いながら第一学生寮の広場に移動を開始した。その光景を遠目で見ていた白浜と、白浜同様に基本的に物静かな志野と、真面目な桜は唖然と広場に移動して騒ぐ山崎達を見ていた。
「本当に凄いな山崎君。もう皆とあんなに打ち解けてる」
「……凄い」
「凄いじゃないよ白浜君、志野!あんなに騒いだら学校から重い処分が皆んなに下されちゃうよ!!」
二人の呟きに桜はあわあわと戸惑いながら言った。
それから寮の生徒だけでなく、寮で働く清掃員や警備員、挙句には食堂で働くオバちゃん達までもが加わり寮全体でお祭り騒ぎとなって広場の中央では山崎を中心に踊り、もはや手がつけられない程に騒ぎまくった。
後に天馬高等学園の一クラスの男性留学生歓迎会から学校全体を巻き込んたパーティーに規模が発展して、この騒動はマスコミからも注目を集めて、翌日の朝刊に一面にデカデカと記載されて天馬高等学園の珍事件の一つとして後々に学園に残る事になる。




