第四話 あべこべ世界で異性は注目を集める
新世界歴659年 11月22日 天馬高等学園
天馬高等学園は『大和帝国』が誇る名門中の名門であり、全国から私立や公立中学問わず、成績優秀な評価を受けた生徒が厳しい受験戦争を勝ち抜き狭き門を合格してきた生え抜きのエリートが集まる全寮制の高等学校である。『大和帝国』が誇る一番狭き門と言われる国立大学である秋桜大学……『日本』や『アメリカ』で言えば東大やハーバード大に当たる大学に進学する生徒は多く、卒業した生徒の多くは大企業、医師に就職、または政治家を目指して官僚に進む生徒も多い。そのため天馬高等学園に所属している生徒達は次代の『大和帝国』を担うリーダーとなる若者とまで言われている。
そんな常に努力という努力で得たエリートの肩書の地位を手入れた女性達は同年代の流行に乗らず、遊びに誘われても遊ばず、その時間すらも努力して来た真面目な才女が多い為に、高校に入るまでは一度も男性と関わって来た事がない女性も多い。故に、男性国家『日本』から男性留学生が来ることは彼女達にとっては予想外。今まで男性とは無縁な厳しい生活を続けて娯楽というものを全く知らずに育った事が多い彼女達にとって男性留学生というものは正に麻薬と同様の快楽。
「オス。俺は山崎健二!よろしく!」
「僕は白浜 優です。初めての海外留学でわからない事が多いですが皆様に迷惑をかけない様に頑張ります」
活発で明るい笑顔が特徴な男子に、スラっとした高身長で知的で優しい雰囲気な男子。全くタイプの違う男性二人だが天馬高等学園の一年三組の女子生徒達はトキめく。何しろ男性が女性と合えば罵詈雑言の罵倒は当たり前にあり、女性を同じ人間と扱わず自分が神だと認識して暴君の様な理不尽な命令をする男性もいる。なのに……『日本』から来た男性留学生は自分達に優しい笑顔を向けてくれる。
この教室にいる女子生徒と教師は思った。ああ……本当に死に物狂いで努力してよかった。こんな恋愛小説に出てくる理想の男性に出会わせてくれてありがとうと、神に感謝をした。
ーーー。
「大丈夫?山崎君?」
「ぐへ〜何とかな……」
1時間目の授業が終わり山崎はグッタリとしていたが、白浜は平然としていた。
「流石は名門校の授業……ついて行くのが精一杯だったわ」
「でも大和帝国の言語は日本語……コッチでは大和語って言うけど、僕達の国の言葉と変わらないから直ぐに慣れるよ山崎君」
「どうだろう。俺、体育以外は母校だとギリギリオール3を取れるのがやっとな成績なんだけどな」
「あ、あの山崎君、白浜君……」
そんな風に二人で小休みの時間で喋っていると彼ら二人に一年三組の女子生徒の三人組グループの一人が緊張した様子で話をかけてきた。その光景を見た他の女子生徒や男子留学生を一目見ようと集まった他のクラスの生徒は、先を越された!!と悔しい思いをした。他の生徒達も三人グループの様に直ぐに山崎と白浜に話をかけてお近づきになりたかった。だがそこは『大和帝国』の次代を担うエリートの集まり。欲望まじりで近づいて男性二人に勘付かれては初手で台無しになり、不信感を持たれでもしたらまずいと思い互いに牽制し合いながら話すタイミングを伺っていた。
三人グループを見ても、緊張し興奮しても丁寧に対応する所に品があり、エリートの肩書に偽りなしという天馬高等学園の女子生徒達である。
「君達は?」
コレに白浜が対応する。白浜に声をかけられて二人に声をかけられたセミロング少女は内心興奮するが、バレない様に必死に表情を隠す。
「わ、私は天宮桜です。よ、よろしくお願いします!」
緊張して九十度体を曲げて挨拶するセミロングが特徴な何処か保護欲を誘う可愛らしい見た目な少女。
「僕は築島穂乃果!穂乃果って呼んでね!」
元気よく挨拶するショートヘアのボクっ娘の活発な少女。身長は170と『大和帝国』の女性から見れば長身でバストはEとかなりの巨乳少女。
「……春日部志野。よろしく」
何処か表情が暗い身長150行くか行かないかの小柄なショートヘアの少女。三人とも性格は全く違うが、それでも仲は良さそうであると山崎と白浜は思った。
「ああ、よろしく」
そう言って山崎は挨拶を返した。その様子に築島は微笑んだ。
「やっぱり日本の男性って優しいよね!桜、志野!」
「う、うん」
「……そう思う」
三人組の言葉に山崎と白浜は首を傾げる。
「優しい?」
「そうだよ。僕達って自分で言うのも何だけど名門校の出身だから将来性があるって事で花嫁候補に選ばれる事もあるんだ。それで男性と会う機会は少ないけどあるにはあるんだけどね……」
話の途中で苦笑いする三人。花嫁候補と二人にとってツッコミ要素はあったが、話の途中でもあるため下手にツッコミを入れると面倒と思ってやめた。
「男の二人には言うのも何だけど、とにかくこの世界の男はプライドが高い人が多いんだ。男性である事に対して凄い自負を持っているんだ。前に婚約会場で今と同じように僕が喋ったら凄く罵倒された事もあったし」
「わ、私も挨拶しようとしたら無視されまして、だから今日山崎君が挨拶を返してくれて嬉しかったの」
「……二人は優しい男性。貴重」
三人の話の内容に二人は何とも言えない表情になる。二人はとにかくこの世界の男性の女性に対する扱いに絶句する。いや、そんな奴らと一緒にされて欲しくないんだけど、というのが二人の正直な感想である。
そんな事を思っていたら小休み終了のチャイムが鳴る。
「あ、そうだ!今日は寮で二人の歓迎会があるから楽しみにしてね!」
笑顔で築島は二人にそう言って席に戻り、他の二人も頭を下げて席に戻った。
「流石は異世界って感じだな……三人の話を聞いてこの国の女性達って大変だな」
「そ、そうだね……」
この世界の男性事情を聞いて二人は戸惑いを隠せなかったが、二時限目の授業がもうすぐ始まるので授業の準備を始めた。




