第三話 日本政府の対応に留学生
コレは日本政府が第一陣の留学生達を『大和帝国』に送ることが可決したばかりの話。
平成が終わり年号が令和となって数十年が経過してから世界は戦争・内乱・テロリズムが激化の一途を辿っていた。中東に増加傾向にあった反アメリカ・ヨーロッパの過激派テロリストの莫大な増加。それによって国が崩壊してテロリストによって占拠され過激派の独裁政権による横暴。
コレは中東の状態であるが、アジア・南米・アフリカといった地域の半数も平成時代と違い反政府と政府軍による局地的な紛争ではなく新型戦闘機や戦車を使った一国と一国による戦争に匹敵する規模の内乱が増加し、ヨーロッパの一部も近隣諸国とのパワーバランスが崩れて戦争に突入した国も存在した。
あるメディアでは、先進国でしか大量運用が運用が不可能であり購入すら不可能であった高性能兵器が新型オートメーションシステムを導入した工場で大量生産がされて兵器の価格が下がり、大量購入した事により軍事バランスが崩れて戦火が拡大したとも言われている。
そんな『日本』もいつ戦争に巻き込まれるかと不安視されて国防に関しては平成以上に力を入れていた。そんな時に不思議なワームホールに巻き込まれて『日本』は異世界へと転移してきた。だが転移したばかりの『日本』は大混乱であった。前話でも話したが、世界各国との通信が不可となり、日本国内にいた日本人・法律上日本人として認定、または日本人と結婚した以外の在日外国人の突然の消失。コレにより駐屯していた在日米軍が兵器だけが残り全てが消失し、各国に設けられた大使館からも人が一切いなくなりもぬけのからとなっていたのだ。
故に新世界に位置する惑星『アース』では今まで『日本』が培ってきた地球の戦略はなくなり、あらゆる最悪な想定を根本から見つめ直さなければならず、日本政府は超法規的措置として異世界の各国に対して対応する為に『異世界情報戦略研究部』を新たに発足させ、政府関係者だけではなく、少数ではあるが民間の歴史研究家やファンタジー小説や架空戦記を扱う小説家といったあらゆる分野の『日本』が誇るエキスパートが集まり、日々新世界に対する対策を研究していた。
「たく、なんとも言えない世界に転移してしまったな日本は……」
「気持ちはわからなくありませんよ。何しろラノベやネット小説のネタにありそうな男女逆転世界ですからね」
新しく設立された課に抜擢された職員達は愚痴りながらパソコンのキーボードを操作する。何しろこの課は異世界のことに関しての対策やら戦略やらの報告や対策書を作成しなければならない。その数は膨大であり些細なことですら……それこそこの位は自分で対策出来るだろうと思うよな職員が呆れた内容ですら対策書を書いて報告をしなければならないのだ。
まあ、異世界転移して一年が過ぎたが惑星『アース』に関してはわからないことだらけであり、この課に集まった職員もあらゆる分野のスペシャリストだ。それを理解している政治家達も優秀な人材であるからこそ転移したばかりの異世界での失敗は『日本』に大打撃を与えると認識しているため、些細な違いですら見過ごして失敗はしたくないから新しく出来た『異世界情報戦略研究部』に対策を依頼しているのだ。そのため設立して間もないにも関わらず政府の中でも『異世界情報戦略研究部』は常に忙しく、二徹三徹して働いている職員もいるくらいだからだ。
「何しろ男が国の宝と言わんばかりの男性優遇の法案が可決されているからな」
「国全体の男性の比率が平均で7%ですからね」
「国によってはもっと少ないんだろう」
「ええ、国によっては非常事態宣言が発令されて政府に男性全員が政府の命令で隔離されている国もあるくらいです。その中で大和帝国は男性保護の観点から見ればマシな方ですよ」
「そんな国からすれば日本は宝の山というわけか」
「宝の山ですね。惑星アースの国家からすれば男女比がほぼ均一という日本を自分達の陣営に入れたいとどの国も思っているでしょうね」
地球の常識とまるで違う事に男性職員の一人はデスクに置いてあるコーヒーの残りを飲み干してため息を吐く。
「男性国家という点もそうですが、技術観点から見ても日本は自分の陣営に入れたい国家である事は間違いないですよ。何しろ異世界の国家の技術力や軍事力は列強といえる国ですら昭和初期時代のレベルですからね。味方につければ圧倒的なアドバンテージを有する事ができます」
「味方にすれば高い軍事力を手にするだけじゃなく男性問題も解決出来て一石二鳥ってか?」
「平たく言えばそうですね」
架空戦記やラノベの様な世界に転移したから、そんなファンタジー小説の設定を信じてまで対策書を書いて徹夜までするのだから男性職員達は疲れていた。今日も徹夜してワンコそばの様に外務省から対策書が来ると思いながらパソコンのキーボードを操作して仕事を再開した。
ーーー。
『大和帝国』にある『日本』で言えば高校に属する天馬高等学園のクラスの一つである一年三組に重要な情報が通達された。今日の全ての授業が終わった時に担任の先生からある重要な事が通達されたのだ。男性国家『日本』から男子留学生が明日から二名ほど来るという内容である。この事実を知った女子生徒達は興奮していて、そして殺気に満ちていた。
なぜ日本人留学生か来ることが前日に通達されたのかは、この情報が事前に漏れて他校の生徒が転入しようとしてきたりと問題が起きかねないからだ。生徒の中には男性に一生会うことなく生涯を終える女性が珍しくなくなった昨今、この日本人男性留学生は自分達が男性と触れ合える最後のチャンスと思っている女子生徒もいるくらいだ。
故に、このチャンスをモノにしようと高い倍率を誇り、名門の中の名門と言われる天馬高等学園に入学したエリート女子生徒達はテンションをあげて明日の朝には来る日本人男性に会うことを楽しみにしていた。
ーーー。
大和帝国 帝都秋桜ホテル
「ふぁ〜学校に行くのは明日か……」
設備がしっかりとした洋風のホテルに天馬高等学園に留学生として来る山崎健二が高級ベットにダイブして仰向けになる。その様子にもう一人の留学生であり、眼鏡をかけた優しい表情が特徴な男子生徒は苦笑いしていた。
「もう寝るの山崎君」
彼の名は白浜 優。山崎健二同様に日本人留学生第一陣として『大和帝国』に来た日本人留学生の一人である。身長は山崎より長く180センチはありスラッとして長く、先ほど話したが優しい笑顔が特徴の眼鏡をかけた美形男子。楽観的な山崎と違って今も真面目に勉強していた。
「真面目だな白浜。今日くらいはのんびり過ごしたらどうだ」
「はは、コレが僕の性分なんだ。勉強してないとなんか落ち着かなくて」
「本当に真面目……内外共にイケメンかよ」
「そんな……僕は至って普通だよ」
性格は真逆だが二人はホテルの宿泊先が一緒で簡単に話をしたらウマがあったようで今では親しく話す様に間柄になった。
「まあいいや。俺は持ってきたラノベでも見てるから勉強が終わったら声をかけてくれや。そしたら電気消すから」
「ありがとう山崎君」
明日から日本人留学生の第一陣の生徒の一人として天馬高等学園に行って恥ずかしくない様に真面目に少しでも勉強しようとする白浜と、楽観的に可愛い女子生徒と交流できたらいいなと思っている山崎。
互いに考えが真逆な二人であった。