二十二話 日本滞在のユニオン人&大和国際パーティ3
日本国 首都東京 『スター○ックスコーヒー』
「この国に外交官として派遣されて随分とたつけど、こんなに沢山の男性がいる環境にいると本国に帰りたくなくなるわね」
「それに関しては同意するわ」
『ユニオン王国』より派遣された二十代後半のユニオン人女性二人は『日本』の有名な喫茶店であるス○バでコーヒーを飲みながら店内で休憩していた。彼女達はス○バの店内を見渡すと『ユニオン王国』では考えられない恋人と一緒に楽しく話すカップルや、男性同士で他愛ない話をするものなど、最初に外交官として『日本』の常識に触れた時に本国とのあまりの違いにカルチャーショックを受けて倒れそうになったからだ。
「確かヤマトの方だとヤマト主催の国際パーティが開かれて、本国の貴族様達は気合が入ってる様ね」
「そうそう。私の従姉妹もパーティ参加が決まって普段以上に気合を入れていたわ。まあ、気持ちは分からなくもないけど」
「国際パーティにはニホン男性が参加するんですもの、それは気合の入り方は違うわよね」
「まあ、私達は別にパーティに参加しなくても悔しくはないけど」
「誰もが羨むニホンに来ているからね」
そう言って笑いコーヒーを飲む外交官女性二人。何しろ『ユニオン王国』の政治家の中でも男性国『日本』での仕事を希望する人は大勢いる。本国では滅多に触れ合う機会がない男性が大勢おり、性格も基本的に本国の男性と比べて優しく教養がしっかりしている男性が多い『日本』で仕事が出来る何て、彼女達からすれば正に選ばれた女性という認識であるからだ。
そのため日本行きが決まった時は同僚から殺されるじゃないかと思うくらいの殺気を二人は当てられたが、それでも未だに各国との調整が済んでいない為に政府の信頼がある企業と政府の人間以外は『日本』の入国ができない為に、二人は日本行きが決まった時は凄まじいまでに喜んでいた。
「それより話は変わるけど、本国の方で軍がまた派手に揉めたらしいわ……特に海軍が」
「また?もう……未だに納得がいってないの?」
「無理もないわよ。長年君臨していた大艦巨砲主義者が、新鋭の航空主兵論者達に予算が取られる事に我慢が出来ないのよ」
「下らないわね……まあ、ある意味で各国の軍が航空機に注目が集まったのもニホンの影響が強いものね。私もニホンの資料を見るまで航空機があそこまで化けるとは思ってなかったわ」
「航空機だけじゃなくて戦車、潜水艦を含めて軍は新時代の兵器に対する戦術や運用法確立に向けてパンク寸前よ」
現在各国の軍は『ユニオン王国』を含めて大規模な変革に迫られていた。惑星『アース』で行われた初となる世界大戦で潜水艦・航空機・戦車といった新兵器が登場した。その新兵器が登場しても各国は戦艦を戦略兵器の認識であり、それ以外の兵器は全て補助兵器というのが各国の共通認識であった。しかし、かつて惑星『アース』に転移する前に『日本』がいた惑星『地球』で行われた二度目の世界大戦に、その後に起こった二大勢力による冷戦と呼ばれる大国の代理戦争で行われた戦争資料を見た各国の軍上層部は衝撃を受けた。
特に衝撃を受けたのは列強国の戦艦を絶対視する海軍関係者の大艦巨砲主義者達であった。戦艦が航空機に敗北するという事実に各国の戦艦を絶対視する大艦巨砲主義者達には受け入れがたい事実であり、航空機が新たな戦略兵器となると信じていた惑星『アース』の航空主兵論者達にとっては、自分達の考えは間違っていなかったと喜んでいた。
「軍が石頭なのは昔からよ。それより今日の夜……ホストにいく?」
「勿論。今日は夜に緊急の仕事がないから絶対にいくわ!」
「ふふふ……待っていてカズマ様……!」
二人の不気味な笑みを浮かべた呟きに、周りにいた客達は恐怖を感じていた。
「なあ、彼処の外国人のお姉さん達ヤバくね?」
「そうよね。警察に連絡した方がよくない」
「モデル並みの美人なだけに余計に怖いな」
そんな風に噂されて露知らず、今日の仕事終わりにホストクラブに通い、お目当ての男性の相手をしてもらう事に興奮している二人は激しい妄想をしながら「ふふふ…ふふふ…」と、呟いて周りからドン引きされていた。
ーーー。
大和帝国 帝都秋桜 大和国際ホテル
「貴女達……ヤマザキ様達に何の用ですか?」
「あ〜らキャロル水臭いじゃない。私達の仲なんだからスマイル!スマイル!」
「ニホンの男性に害をなすつもりはない。安心してくれ」
警戒して引きつった表示で呟くキャロルに、小柄な女性は活発な声で笑顔で答え、もう一人の女性は淡々とした表示で呟く。
「キャロル。何か知り合いぽいけど、この二人はユニオンの人?」
山崎の言葉に反応して二人の女性は流暢な日本語で自己紹介して握手する様に手を出した。
「ふふふ、私はアメリア合衆国連邦出身のアンネッタ・ラドリッジ!ラドリッジ財閥の長女だけと、そんな事を気にしないで仲良くしましょう!」
「自分はソフィア・クラスノフ。出身はコザック共和国だ。母はコザック陸軍の将校で、自分も母の名に恥じない軍人を目指している」
山崎と白浜も自己紹介を返す様に二人に握手して自己紹介をする。
「俺は山崎健二。日本の留学生として大和に来ている。よろしく!」
「僕は白浜優。僕も山崎君と同じ日本の留学生です。よろしくお願いします」
二人の何ともない自己紹介に穂乃果達の表示が固まる。二人の女性達の経歴を知らない為の山崎と白浜の他愛もない挨拶ではあるが、そんな山崎と白浜の他愛もない挨拶にアンネッタとソフィアは気を良くして笑顔になる。
「はあ〜ぁん、本国で何回かニホン人と交流しましたが、やっぱりニホン人は本国の男性達とは比べ物にならない位に優しい方ですね!」
「全くだ。自分は今日初めてニホン人と交流したが優しい事はわかる。家族や軍の関係者達が深く関わりたい気持ちがよくわかる」
うんうんと頷く二人に、惑星『アース』の男性事情を聞く事に対して慣れて苦笑いする山崎と白浜。今でも普通に挨拶をしただけで大袈裟な反応する惑星『アース』の女性達に、どれだけ男性に免疫がなく、そして男性達は最悪なんだよと心の中で呟く。
「何かアレだな。穂乃果やキャロルに、アンネッタさんやソフィアさんの反応を見ると、男性と交流するのって凄く難しいんだな」
だが山崎は、こんなモデル系や可愛い系の美人達相手に不満タラタラで文句ばっかり言う最低野郎しかいないのかと心の中で呟く山崎。流石の彼もそんな事は言わずに心の中で呟くだけに留めていた。
「そうなの!私も一人の女性だから男性と理想的な恋がしたいの!でも、その男性達が女性に対して厳しくて、臆病で!」
「士官学校だから男性と触れ合う機会が少ない事は分かっている。でも、自分も一人の女だからな。人並みに男性と恋がしたい……だから!」
「確かニホンが前にいた世界では男女が抱きしめ合う挨拶があるって聞いたの!」
何処か肉食獣の様に鼻息を荒くする二人に山崎と白浜はロックオンされていた。
「私を抱きしめて!」
「自分を抱きしめてくれ!」
「ちょっと待ちなさい!それ、完全にセクハラですよ!アメリアきっての財閥令嬢と、古い伝統を誇るコザックの軍人一族が、そんな事をして良いんですか!」
分かりやすく言えば山崎と白浜にハグしてくれと言っているのだが惑星『アース』では、公共の場で男女のハグは非常識もいい事なので、キャロルは思わず二人にツッコミを入れた。
「大丈夫よキャロル!いざと言う時はラドリッジ財閥が責任を持って面倒を見ますから。私としては活発そうなヤマザキさんを恋人にしたいから!」
「そうだ、責任を取るから問題ない。私は知的で物腰が優しいシラハマさんを婿に迎えて入れたい。国際結婚だが母上もニホンとの結婚なら喜んでくれる!」
「いい加減にしないとハッ倒しますよ性欲魔神共!」
二人の開き直った態度にいつもの余裕がある態度から人を殺してもおかしくないオーラを身に纏いドスの効いた声で言った。
「聞き捨てならないかな。僕の前で山崎君と結婚する……死にたいの」
「……調子に乗るなよビッチ」
そんな中で穂乃果と志野も反応して、普段では想像がつかないドス黒いオーラーを纏い、そして言葉使いも明らかにドスが効いて普段より怖さが倍増しで山崎と白浜も恐怖していた。
「は、はわわ!ど、どうしましょう!」
「ど、どうしましょうって言ってもな……」
「と、止められないよね」
桜、山崎、白浜を除いて凄まじい暗黒オーラーを纏った女性達の争いに周りはタジタジで、パーティに参加している他の客達もキャロル達に恐怖を感じて近く者はいなかった。なお、アンネッタとソフィアは『天馬高等学園』に転校してくる事になるのだが、山崎や白浜の『大和帝国』での女性難は更に激し差を増すのであった。




