第十九話 パーティの準備と封じ込める大和
女性に対する過激な暴力表現があります。苦手な方は気をつけて下さい。
大和帝国 帝都秋桜 洋服・和服店『弁天』
「ようこそ、いらっしゃいませ!」
タキシードを着て男装が似合う女性店員と、高級なドレスを着た女性店員達が山崎達に挨拶をして頭を下げる。
学園の授業が終わった放課後。山崎達は国際パーティに参加する為に清水に洋服店『弁天』に案内された。武家育ちの桜と貴族生まれのキャロルを除いて自分達が想像していた洋服店と違っており店内を見て唖然としていた。素人目でも分かりやすい高級な洋服や和服がズラリと並んでおり、宝石店顔負けの装飾品やバックも揃えているからだ。
「俺、こんなセレブ向けの高級洋服店に入ったの初めてだ。服なんてだいたいユニ○ロやしま○らの大安売りのばっかりだし、礼服も全部揃えても2万いくかいかないかの一番安い量販店のスーツしか買って貰った事ないし」
「僕も同じだよ。僕は基本的に参考書や小説ばかりだから服はからっきしだから」
「……私も服を買う機会があまりない」
「そもそも僕みたいな百姓だと、こんな高級洋服店に入ることじたいないからね」
「あら、ホノカさん。テンマでは男性交流会があると聞きましたから格式ある礼服をご用意するのではありませんか?」
「天魔の男性交流会は基本的に学園のイベントの一つだから学生は基本的に学園の制服が義務なの。と言うか僕みたいな田舎生まれの百姓が気軽に高い礼服を購入できないよ」
二人を除いたこの四人は基本的に、この様な高級店に入る機会がないためどうしていいか分からず困惑していた。
「ご予約頂いた清水様ですね」
洋服店の店長と思われる品のある中年女性が現れた。
「そうです店長。今回お願いしたい事は、こちらにいる男性二人に見合った礼服をお願いしたいのです」
「かしこまりました。男性が我々を信用して仕事を任せてもらえる事は当店にとっても職人にとってもたいへん嬉しい事ですから」
清水と洋服店の店長の話し合いが始まる。山崎と白浜を他所に二人が着る礼服に対する方針について話し合われていた。山崎も白浜も惑星『アース』の国際パーティの礼服の基準やマナーがわかってないため、そのノウハウを知る清水に一任するしかないため二人は清水に任せるしかないのだが……。
「ひ、久しぶりの男……!」
「しかも身体のバランスが良い……エロい!」
「フー!フー!……!」
その店員達が興奮して鼻息が荒くて、しかも店員達の和服とタキシードの格好が似合う女性達だから山崎と白浜は余計に恐怖心が増していた。果たしてこの店員達に任せて大丈夫なのかと……。
「あ、安心して山崎君、白浜君。こういうお店は武家や公家の人を相手にする事が多いから問題を起こさない様に徹底しているから」
「天宮さんがそう言うなら信用できるけど……」
「なーんか妙に鼻息荒いんだよな……」
この国に来てから何度目かと思うくらいに肉食獣の様な目をして自分達を見ている女性達に、どれだけ男性に対して免疫がないんだよと、心の中で呆れてツッコミを入れる二人であった。
因みにオーダーメイドで揃えた礼服と装飾品で全て込みで、日本円で30万近くかかった時は山崎も白浜も度肝を抜かれた事も記録しておく。
ーーー。
大和帝国 千大県 東の山奥
帝都秋桜から汽車で6時間はかかる西に位置する千大県。千大県の都心部より離れた東に位置する山奥にある山小屋で『大和帝国』の陸軍を証明する茶色の軍服を纏った中年女性数名が、椅子に縄で縛り付けている十代後半の少女陸軍士官に対して尋問していた。
「貴女……自分達が行おうとした蛮行を理解しているの!」
「我々は正義の為に立ち上がった!けして蛮行ではない!」
一人の中年女性陸軍士官は、椅子で縛り付けた少女士官の殴る。中年女性士官は何度も殴り、少女士官の顔は腫れあがり、口を切って口から血が出る。それでも少女士官は中年女性士官を睨みつけており、自分は屈服していないと言う意思表示であり、その表情を気に入らないようで中年女性士官は少女士官に対して怒鳴りつける。
「大和にとって今がどれだけ大事な時期か分かっているの!貴女達の様な現実を見ないガキ共の後始末に追われて、大和は世界での地位は下落し、男性国日本は我々に対して不信感が増した!」
中年女性士官が怒気が籠もった言葉が山小屋全体に響き渡る。前話(第十五話を参照)で話した様に『大和帝国』は世界男性保護委員会の件で世界から非難され『日本』からも不信感を持たれて政府や軍上層部は頭を痛めていた。そのため、その元凶である解放派の属する士官の一人に対して抗議派に属する中年女性士官は怒りに満ちていた。
「国の宝を酷使する日本に対して我々は立ち上がった……なぜ大和が正義から離れた諸外国共に行動する必要がある!なぜ男性解放を理念に行動した我々の行動を邪魔する!」
「黙りなさい!国際情勢や常識を理解しないクソガキが!」
再び少女士官を殴りつける中年女性士官。しばらく殴り続けて側近から渡された太い木の棒をパシパシと手で叩き尋問を再開した。
「いっておくけど軍上層部や島田首相は解放派を全員を逮捕したと思っていない。残りの解放派の連中はだれ!貴女達解放派は天皇陛下に逆らった逆賊になっているのよ!逆賊の汚名を失くしたければ残りの解放派の連中の名を言いなさい!」
「我々は正義の名で立ち上がった……けして陛下に逆らっていない!何より私は仲間を売るつもりはない!」
「本当に貴女は自分の立場がわかっていない様ね」
そして木の棒で殴り続ける。途中で気絶すればバケツの水をぶっかけたり、水の入ったバケツに頭から押しつけて無理矢理叩き起こしたりして再び木の棒で殴り尋問したが少女士官は一切喋らなかった。
「大尉殿。それ以上は命が危険です!おやめください!」
側近の言葉を聞いて殴り続けるのを辞めた。
「ち!まあ、このガキが口を割るのも時間の問題よ。今日はこれまで。コイツが逃げない様に地下の檻にぶち込んでおきなさい!」
「は!」
そう言って中年女性士官は山小屋から出て行く。外で待機していた士官用の車に乗り込み士官用の車は発進した。
「思った以上に口が固かったわね。尋問方法を変えないといけないなわ」
「しかし大尉殿。なぜ躍起になって尋問するのですか?解放派の連中は大体は逮捕しました。現在はそこまで強い勢力ではないはずですが?」
「そんな呑気に言っている場合?解放派の馬鹿達のせいで日本や世界各国だけでなく、軍や政府は陛下から不信感が持たれたのは貴女も知っているでしょ」
「それは自分も存じています。しかし、そこまで深刻なのですか?」
呑気に呟く側近に中年女性士官はため息を吐く。頭を抱えて話を再開する。
「そうよ。陛下は男性国日本との関係を強める事を何よりも重じている。そのため日本関係を破綻寸前まで追い込んだ解放派の殲滅を陛下は望んでいるのよ。陛下の命に等しい任務で何かしら成果を上げなければ我々も解放派の連中同様に逆賊になる事もあり得る。ことの重大性は分かった?」
「わ、わかりました」
「逆賊になりたくなければ連中の殲滅は第一に考えなければいけないわ。何しろ正義に狂った馬鹿は何をしでかすかわかったものじゃないからね」
『大和帝国』は世界男性保護委員会問題で後手に回った汚名を無くす為に、元凶となった大元を殲滅する為に躍起になっていた。




